築30年の中古住宅のメリット・デメリットと購入時の注意点

中古住宅を購入する人は増えました。以前の日本では新築志向が極端に強くて、新築を買えないから中古を仕方なく買うという人がほとんどでしたが、今はあえて中古住宅を購入する人もたくさんいます。ただ、中古住宅を検討するなかで、築年数が何年くらいの物件がよいか迷う人は多いです。

築5~10年の築浅の中古住宅と築30年以上の中古住宅では、購入後にかかる費用も建物の耐久性も異なるわけですから、このあたりのことは慎重に考えなければならないですね。

以前に、「築20年の中古住宅のメリット・デメリットと購入時の注意点」という記事を書いていますので、築20年くらいの物件を検討しているなら、そちらも参考にしてください。今回は築30年程度の中古住宅を買うメリット・デメリットと注意点を紹介します。

築30年の中古住宅を買うメリット

築30年の中古住宅のメリット

築30年経過している住宅でも、必ず良いところはあります。また、築30年も経過しているからこそのメリットもあります。古いからというだけで敬遠する必要はないのです。この年代の中古住宅を購入するメリットを紹介します。

  • 新築より安い
  • 築浅の中古住宅より安い
  • 価格の下落リスクが低い
  • 価格が上昇する可能性が新築や築浅より高い
  • 間取りや広さを確認してから購入できる
  • 自分好みにリフォーム・リノベーションしやすい

新築・築浅より安い

新築住宅や築浅の中古住宅と価格について比較するときは、同じエリアの同程度の条件の物件と比較しなければなりません。最寄り駅や駅からの所要時間、土地・建物の大きさなどの条件が近い物件と比較すれば、古い住宅の方が安いことが多いでしょう。

その理由は単純に建物価格が古いものほど下がるからです。

もちろん、きちんとメンテナンスに手間とコストをかけている物件とそうではない物件を比較した場合、建物価格として査定されている金額に相違が出ていることもあります。売買する時期から近いときにリフォームしたものとそうでないものにも金額に相違があるものです。

価格の下落リスクが低く上昇する可能性が高い

築30年の中古住宅は、建物価格が新築時よりも大きく下がっており、それ以上は下がりづらいところまで来ていることが多いです。つまり、購入後、建物価格が下がるリスクは低いわけです。

一方で土地価格は建物の築年数とは関係がないため、市場の相場動向に左右されます。景気が良くなったときやその街の価値があがれば、土地価格も上がることが多いです。逆に街の価値が下がれば土地価格も下がることになります。

市場相場の動向や街の価値次第では土地価格があがるので、建物価格がほとんど下がらなければ、購入後の資産価値は上昇する可能性があるというわけです。

実物を見て購入でき、リフォームしやすい

間取りや実際の広さ、形状、建物の状態を見てから購入判断できるのは、中古住宅に共通するメリットです。築年数が浅いか古いかは関係ないですね。

ただ、リフォームやリノベーションをしやすいというメリットは築浅の中古住宅ではあまり感じられません。なぜならば、まだ内装・外装・設備が新しいので、購入してからリフォームしようと考える人は少ないからです。やるとしてもクロスの張替えくらいではないでしょうか。

築30年も経過している住宅で、まだ大規模リフォームをしていない住宅ならば、思い切ってリノベーションに投資するのもよいでしょう。もちろん、予算と相談しなければなりませんが、間取りの変更も考慮したリノベーションで家族構成やライフスタイルに合わせた住宅にしやすいといえます。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
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築30年の中古住宅を買うデメリット

築30年の中古住宅のデメリット

次に築30年の中古住宅を購入するときのデメリットについて考えてみましょう。なかには重要なこともありますから、慎重に考えて判断したいものです。

  • 建物の劣化リスクが高い(耐久性の問題)
  • 耐震性が低い可能性が高い
  • 購入後に想定外の補修・補強コストがかかることがある
  • リフォーム済み物件なら隠ぺい箇所が心配
  • 水周り設備の交換費用が高い
  • 売主の契約不適合責任が付いていないことが多い

主だったデメリットは上のとおりです。いずれも簡単には許容できることではありませんね。

建物の劣化リスク・耐震性の問題

建物は古いものほど劣化が進行していくので、築30年の物件を購入するのであれば、それなりに劣化リスクがあることは考えておかなければなりません。劣化進行具合によっては、住宅の耐久性が著しく下がっていることもあるからです。

但し、築30年の住宅であるにも関わらず、建物状態がよくて築15年くらいのものとそれほど変わらないものもあります。買主としては、そういう家を買いたいものですね。

たとえば、外壁やバルコニーなどの雨漏りの発生原因となることが多い箇所の劣化(防水大事なシーリングの著しい劣化など)があれば、購入するか慎重に検討すべきですし、購入するとしても早期の補修を前提とすべきです。

こういったことは、ホームインスペクション(住宅診断)で専門家に診てもらうと良い参考になります。

また、築30年経過しているということは、建物の耐震性について心配しなければならないときもあります。耐震性、つまり地震に耐える力です。

築30年程度ということは、1990年代の建物ということになります(※2023年4月に修正)。既に耐震基準が変わった後の時代の家ですから、旧耐震基準の住宅を購入するよりは耐震性リスクは低いと言えますが、基礎などの構造耐力に影響がある部分の劣化がひどい場合には耐震性が下がっていることがあります。また、耐力壁(=耐震性を考える上で重要な壁)のバランスが悪くて耐震性が低いということもあります。

ですから、可能であれば耐震診断を受けておくのが好ましいです。

耐震性は大事なことですので、詳しくは後述していますので、ご覧ください。

購入後の補修・補強リスク

中古住宅を購入して入居してから建物の様々な問題に気づいた場合、それを補修・補強するためにコストがかかります。基本的にはその負担は買主ですから、デメリットとなります。購入前からリフォームしようと思っていたところならばよいですが、想定外の箇所ならば厄介ですね。

想定外のことは、築年数が古い住宅ほど起こりやすいですから注意したいものです。

リフォーム済み物件なら隠ぺい箇所が心配

また、古い住宅を不動産業者が買い取って、リフォームしてから再販している物件も少なくありません。こういった物件は、内装や設備を綺麗にしていたとしても、隠れて見られないところまではリフォームしていないため、隠ぺい部分にこそ問題が隠れていることがあります。

ひどいときには、もともと存在していた点検口を無くしてしまい、屋根裏や床下にある不具合をすぐには発見できないようにしていたケースもありました。リフォーム済み物件を購入した人の多くは、自分でリフォームしないので隠ぺい部分を解体することもなく、発見が遅れがちなのです。

水周り設備の交換費用が高い

築30年くらいの中古住宅で、これまでにキッチンやトイレ、お風呂などの水周り設備を交換していない場合、設備が大変古い状況であるため、交換の時期がきている可能性が十分に考えられます。

住宅のリフォームの工事項目のなかでも、水周り設備の交換は最もコストが高くなるものですから、購入前に慎重に予算の検討が必要です。

また、キッチンやトイレなどと一緒に配管も交換することになれば、その費用はさらに高くなります。

売主の契約不適合責任がない

売主の契約不適合責任とは、売買した中古住宅に隠れた瑕疵が見つかったとき、売主が補修費用などを負担する責任のことです。築浅の中古住宅ならば、売主が引渡し日から3ヵ月程度の期間は契約不適合責任を負うとする条件で契約することが多いです(不動産業者が売主なら2年間とすることが一般的)。

しかし、築30年の住宅の場合、この契約不適合責任を免責にすることが多く、購入後に何かあっても買主が売主に補修等を要求することができないので、それだけ買主がリスクを負うことになるわけです。但し、売主が不動産業者である場合は築年数に関わらず契約不適合責任を免責とすることはできないので、2年間の責任を負うとすることが一般的です。

築30年の中古住宅を買うときの注意点

築30年の中古住宅を買うときの注意点

築30年の中古住宅を購入するメリットとデメリットがわかったところで、購入するときの注意点について紹介します。

建物価値がなくても(売買価格への転嫁がなくても)安心して暮らせるか要チェック

築年数が古い住宅である場合、売買価格の査定の際に建物価格をほとんど見ていないことが多いですが、そのためか不動産業者から「この物件は、建物価格が0円なので建物のことをいろいろ気にしても意味がない」などと言われることがあります。

たとえば、売買するときの金額に建物価格が全く含まれていないとしても購入する人が、その後も使い続けるのであれば建物のこともきちんと考えて購入判断しなければなりません。安全性もそうですが、維持管理コストもかかるわけですから、当然のことです。

購入してすぐに多大なコストがかかる補修工事が必要になるようでは、建物価値が0円とというよりもマイナス評価すべきだったのではないかと思えます。実際にそのような酷い状態の建物もあるからです。

売買価格がどうかではなく、その建物を使うかどうかですね。

ちなみに、まだ普通に生活できるような状態の建物であれば、売買価格に1円も含まれないということはほとんどないでしょう。その状態にもよりますが、100万円単位で価格を上乗せしていることが多いです。

ホームインスペクション(住宅診断)は必須

築30年の物件と聞くと古い住宅を想像する人も多いでしょう。はじめて家を買う人のなかには、20歳代の人もいますから、世に出て自分よりも長い住宅ということになりますね。見た目が古くても建物の状態がよいものはいくらでもありますから、その見極めこそが築古物件の購入の成否を決めるといっても過言ではないでしょう。

そのために役立つのが第三者によるホームインスペクション(住宅診断)です。

建物を診るには、どうしても建築に関わる専門知識や経験が必須です。少し勉強したくらいで、いろいろな建物の部位に出ている症状を適切に判断していくことはできません。専門家に代わりに診てもらうことで、その診断結果を購入判断の1つの材料とするとよいでしょう。

ここで注意すべきは、利用すべきホームインスペクション(住宅診断)は売主や不動産業者側のものではなく、買主側のものであることです。不動産業者が斡旋するインスペクションの多くには、買主にとって必要な調査項目が含まれていませんし、調査結果の表現もわかりづらく誤解しやすいものになっています。

買主にとって有益な調査結果を得るためには、買主向けに行っているサービスを自ら探して依頼することが重要なので、自分で探すようにしましょう。

構造部の補修・補強も含めたリノベーションや将来の建替えも検討

ホームインスペクション(住宅診断)で建物の状態を確認するとはいえ、見られない部分もありますし、劣化していることは確かですから、やはり将来の補修・補強工事のコストもイメージしておく必要があります。なかには、ぼろぼろになるまでそのまま住み続けるという人もいますので、考え方はそれぞれですが、基本的には補修・補強のことを考えて、購入後も早めに資金を積み立てていく前提で購入することをオススメします。

バブル経済時代の欠陥物件は多い

30年前といえば、バブル経済の頃でもあります。その頃は、手抜き工事も多かったのでひどい住宅も少なくありません。見た目の仕様は当時においては豪華なものものありますが、大事な部分(床下や屋根裏)で手抜きされていては大変ですね。

見た目の豪華さや仕様で判断せず、当時の時代背景も考慮してよく確認してから購入判断するようにしてください。

既存不適格建築物に要注意

築30年くらいの中古住宅を購入する人のなかには、何年か後には建て替えることを視野に入れている人も少なくありません。しばらくは、大規模なリフォームをせず、将来の建て替えを考えるというのは、1つの有効な選択肢です。

その時に注意すべきことが、既存不適格建築物です。

既存不適格とは、新築当時の法令を順守していたものの、その後の法改正によって、現行法規には適合していないことを意味しています。古い中古住宅を買おうとすると、そういう物件は多いですから、このことは知っておく必要があります。

たとえば、将来、建て替えするときには、既存の住宅と同じ大きさの建物を建築できないということはよくあることです。建て替えて今より小さな家になるのでは困るということなら、他の物件を購入検討する必要もあるでしょう。

耐震性の確認の必要性とその実現の困難さ

築30年の中古住宅は、新築時よりそれなりに長い期間を経過していることより、建物の耐震性を心配する声をよく聞きます。購入を検討する人によって、建物の構造耐力や耐震性には強い関心がるのも当然のことですね。そこで、最後に築30年の住宅に関する耐震性について解説します。

耐用年数と耐震性は別物

古い中古住宅の購入を検討中の人から、耐用年数が心配だと聞くことがあります。耐用年数とは、減価償却費の計算などに用いることがあるものですが、相談者の話をよく聞くと、建物の耐震性や構造耐力の心配のことを言っているケースが多いです。

検査済証の有無の確認

30年前、つまり1990年代の前半の住宅では、建築する際に必要な建築基準法に基づく建築確認申請をしていない住宅はほとんどありません。しかし、その申請後、完成したときに受けなければならない完了検査を受けていない住宅はまだまだ多い時期でした。

完了検査を受けていない場合、建築確認申請した建物プランからプラン変更している可能性が考えられます。実際に、当時はそういう住宅が少なくなかったのですが、プラン変更により、耐震性に関してマイナス影響を受けている住宅もあるので、注意が必要です。

そこで、完了検査を受けた住宅かどうか確認することをおすすめしますが、その確認が困難なことが少なくありません。その理由は確認するための書類の入手・閲覧ができないためです。

確認したい書類は、新築時の完了検査済証(単に検査済書ともいう)または建築確認台帳記載事項証明などですが、これらを確認できない住宅が多いのです。

完了検査済証

完了検査済証は、その住宅が完成した直後に、建築基準法に基づく完了検査を受けてからすぐに発行されるもので、本来ならば、その住宅の所有者が持っていなければなりません。

しかし、長い年月が経過するうちに紛失する人は非常に多いですし、そもそも新築時に建築業者などから受け取っていない人もいます。そのため、中古住宅として売買するときに、買主から売主に完了検査済証の提示をお願いしても、「持っていません」と回答されることが多いのです。

建築確認台帳記載事項証明など

完了検査済証を売主(所有者)が持っていない場合に、次に確認したいものが、建築確認台帳記載事項証明です。この書類は、自治体で発行してもらうものですが、自治体によって名称が微妙に異なります。「確認台帳記載事項証明書」のように似た名称の場合も多いです。役所の建築指導課などで確認してみるとよいでしょう。

ただし、こちらも築30年ほどの住宅となると、自治体に記録が残っていないこともあるため、入手できないことも少なくありません。

建築確認台帳記載事項証明とは違いますが、建築計画概要書という書類で確認できることもありますので、役所で聞いてみてください。これらの書類の記載内容次第では、過去に検査済証が発行されたかどうか確認できることがあります(書類があっても検査済証の発行有無を確認できないこともあります)。

参考に、東京都と大阪府における築確認台帳記載事項証明の該当ページを紹介しておきます。

耐震診断を検討すべき

築30年くらいの中古住宅であれば、耐震性に関わる大きな建築基準法の改正があった1981年6月1日以降の住宅ですから、この時期以降の基準、いわゆる新耐震基準で建築された住宅であるはずです。よって、それ以前の基準のものよりも耐震性について安心感があると言えます。

しかし、前述したように建築基準法に基づく完了検査を受けていない住宅も少なくない時代であったことや、建物の著しい劣化によって、耐震性が下がることがあることを考えれば、できる限り耐震診断を実施しておきたいところです。

耐震診断できない住宅が多い

耐震診断は、現地調査で得た情報と現地で確認できないことを設計図から確認した情報を基にして行うものです。これらを適切に行わないと、耐震診断の結果の精度が大きく下がってしまい、実施する意味がないことも多いです。

現地調査では、床下や屋根裏(小屋裏)を確認できるかが大事なポイントになりますし、設計図の確認では、耐力壁の位置・仕様を確認できるかが大事なポイントになります。

耐震診断を実施する上で高い確率で障壁になるのが、設計図です。耐力壁の位置・仕様を確認できるものを所有者が持っていないことがあまりに多く、この確認作業をできず、耐震診断の実行をあきらめる人が続出しています。

築30年だけに、耐震診断をしたいけどできないという悩みを抱えたまま、この問題を解決できず、購入判断をしなければならないケースが多いです。その場合は、住宅診断(ホームインスペクション)だけでも実施して、著しい劣化の有無を確認しておきましょう。

購入後、設計図で確認できないことを工務店と協力しながら、耐震性を確認していく方法もあるので、購入後の対応も検討するようにしてください。

なお、鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC造)では、設計図の有無にかかわらず、耐震診断をすることが難しいです。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。