ホームインスペクションの費用

新築住宅でも中古住宅でも非常に多くの人がホームインスペクション(住宅診断)を依頼するようになりましたが、一方でホームインスペクション業者も増え続け、その業者の質は玉石混交です。依頼しても意味がないようなレベルのもの、依頼することでかえって損失を被るケースまで出てきました。

ホームインスペクション業者が増えれば、依頼者としては比較検討したいのですが、これが意外と簡単ではありません。比較するうえで多くの人が注目するのは、かかる費用、つまりホームインスペクションの料金ですが、単純に価格を比較するだけでは、かえって損してしまうことも多いです。

ここでは、ホームインスペクションについて費用も含めて比較検討したい人に役立つように、費用の相場と同サービスの料金を構成する要素、そして費用を負担する人について解説しています。

家を買うタイミングなどで利用を検討している人は、費用面についてよく確認しておきましょう。

※ホームインスペクションについてよく知らない方は、「ホームインスペクションとは?」をご覧ください。

アネストの住宅インスペクション

ホームインスペクションについて

ホームインスペクションの費用の相場感について解説する前に、ホームインスペクションとはどういうものなのかについて簡単に解説しておきます。

ホームインスペクションとは、住宅を対象とした建物調査のことで、住宅診断とも呼ばれているものです。

一級建築士などの建物の専門家が、新築住宅の施工不良や中古住宅の劣化状態を調査し、その結果を依頼者へ報告します。その依頼者は、インスペクション結果(報告書)を住宅購入の判断材料や建物のメンテナンスの参考などに活用することができます。

建物(建築物)の状態を把握するには、専門知識や経験が必要なだけに多くの人がホームインスペクションを利用するようになりました。

一戸建てやマンション、アパートも対象としていることが一般的ですが、インスペクション業者によっては、一戸建てのみとかマンション専門をうたって営業していることもあります。

ホームインスペクションに関してイメージを掴めたら、次に気になるのはその費用ですね。次は、費用(料金)の相場について解説します。

ホームインスペクションの費用の相場

ホームインスペクションを専門家に依頼するときにかかる費用(調査料金)の相場を紹介します。依頼する業者によっていくらかの差異があることは理解しておいてください。

ホームインスペクションの基本料金

ここで紹介する基本料金とは、新築完成物件や中古住宅のホームインスペクションを依頼すると必ず必要となる料金で、一般的には、建物外部(基礎・外壁・軒・屋根)と建物内部(居室等の床・壁・天井・建具・その他の設備)が対象となっています。

ホームインスペクション業者によっては、報告書が基本料金に含まれていることもあれば、外構の調査が含まれていることもあります。含まれる報告書も質・内容によってグレードを分けていることも少なくありません。

基本料金の相場は以下のとおりです。

物件種別費用の相場
一戸建て5~7万円
マンション4~6万円
完成物件および既存(中古)住宅の相場

前述したように内容に違いがあることを忘れないでおきましょう。

中古住宅のホームインスペクションなら、既存住宅状況調査方法基準にある調査のみ(=宅建業法でいう建物状況調査のみ)、つまり最低ラインのみの調査なら5万円程度が相場です。ただし、この調査のみでは買主にとっては必要な情報が不足することが多いです(詳しくは後述します)。中古住宅を購入するなら「建物状況調査の基礎知識と中古住宅購入時の注意点」も参考にしてください。

また、所在地等の条件によって、出張料や建物の大きさ(面積)による追加料金が生じることも多く、これらの追加でかかる費用が業者によって大きな差異となっていることもあります。

ホームインスペクションのオプション料金

多くの業者において、オプション制が採用されています。主なオプションとその相場は以下のとおりです。

物件種別費用の相場
床下の調査1.5~3.5万円
屋根裏(小屋裏)の調査1.5~3.5万円
完成物件および既存(中古)住宅のオプション調査の相場

床下や屋根裏の調査をオプションとせず、基本料金に含めている業者もありますが、その場合は基本料金が高く設定されています。しかし、床下も屋根裏も住宅によっては進入できないことも少なくありませんので、別料金で設定されている方が理に適うと言えます。

また、点検口がある住宅であっても床下や屋根裏へ物理的な理由(配管等が邪魔になるなど)で進入できないこともあるため、調査当日に中止になったときに、その費用(オプション料金)が請求されないかどうか確認しておくとよいでしょう。

床下や屋根裏以外に専門的な機材を用いた調査をする場合、これをオプションとすることもあります。このなかには、ほとんど意味がなく必要ないものや、適切な調査遂行が困難なものもありますが、そのような実態が知識と経験のない依頼者にはわかりづらいため、依頼して損しているケースもあります。

たとえば、基礎鉄筋探査を無償か格安で対応する業者のなかには、簡易な調査機材(オモチャのようなレベルのものもある)で誤魔化していることもあります(誤魔化すつもりはないかもしれませんが)。

本当に必要なものか見極めが大事です。

調査範囲の違いを理解しておく

単純な費用の比較だけでは、業者選びが難しいのですが、数値だけではなく調査範囲の違いも理解しておく必要があります。

最低ラインの調査だけでいいのか

たとえば、中古住宅のホームインスペクションでは、国交省の告示にある最低ラインの調査だけをする業者とプラスアルファの調査をする業者にわかれます。最低ラインでも告示どおりですから悪くないのですが、買主が購入判断や補修判断をするためには、調査結果の情報が不足するため、プラスアルファの調査は必須だと考えておきましょう。

この告示の調査は、建物状況調査ともいわれますが、ほとんどの業者が提出する報告書は、調査結果の詳細がわかりづらいものです。調査範囲が限定的なうえにわかりづらいものでよいかどうか、よく考えましょう。

外構まで調査してもらうべき

新築住宅でも中古住宅でも、建物本体のみしか調査してもらえず、外構を全く見てくれないことが多いです。プラスアルファの調査をする業者でも外構まで見てもらえるケースは稀です。しかし、この外構は意外と大事なものです。

たとえば、境界にあるフェンスががたついていて体重をかけると危ないということがあります。しかも、隣地や道路との高低差がある敷地なら、子供が落下して大けがをするリスクも考えなければなりません。

また、塀が倒れて建物や外部設備などを傷める可能性もありますし、偶然に前の道をとおりがかった人に損害を与えてしまう可能性もあります。

そして、塀などの外構で確認される症状が建物本体のホームインスペクションの重要な参考になることもあるのです。基礎だけではなく外構の塀にもひび割れがあり、床が傾いているために地盤沈下が疑われるといったことです。

ホームインスペクションの総額の相場

特別なオプションを除いて、床下・屋根裏の調査を含めたホームインスペクションの総額の相場は、以下のとおりです。

物件種別費用の相場
一戸建て8~14万円
マンション4~9万円
完成物件および既存(中古)住宅の費用の総額

マンションでは、建物の条件によってはコンクリート強度試験(シュミットハンマー試験)をする場合があるため、これを含めた場合、相場範囲のなかでも高めの方になりがちです。

但し、物件所在地によっては出張料が必要になることがありますし、建物面積が大きければ加算が生じることもあります。この出張料や建物面積による加算も業者によって差異が小さくないので、注意してください。

業界の草分け的な存在であるアネストのホームインスペクションのエリア別の料金も参考にしてください。

新築の建築中の住宅検査費用

新築の完成物件や中古住宅のインスペクション費用と建築中に行う検査費用は異なります。建築中の場合、1回のみ単発で依頼するか、何回も依頼するかによっても総額は大きく異なります。

物件種別費用の相場
1回のみ4~7万円
複数回検査回数による
新築住宅の建築中の検査費用

基礎工事から完成までの間、5~12回くらいの間で検査依頼をするケースがあるため、検査費用の幅も大きくなります。凡そ22~80万円くらいが目安です。ただし、建築中の検査も所在地・規模・構造等によって異なるため、各社に問い合わせて見積りをとるとよいでしょう。

雨漏りや欠陥の原因調査の費用は全く異なる

ここでは、ホームインスペクションの費用として紹介していますが、目的のことなる調査の場合は、料金体系が全然違ったものになるので誤解しないでください。

雨漏りや設備漏水、欠陥工事などの原因を追究する調査は、ここで紹介したホームインスペクションの費用は参考になりません。

低価格な費用のインスペクションに要注意

低価格インスペクションに要注意

ここまで見てきたなかで、単純にホームインスペクションの費用を比較するだけではいけないことは理解できたことでしょう。それでも、安い方がよいと考えて低価格なサービスが気になるのは誰にでもありうることではないでしょうか。

そこで、低価格インスペクションでよく見られる問題点、デメリットを紹介しますので、これを読んでから判断してはいかがでしょうか。

不動産会社や工務店との癒着

代表的なデメリットとしては、癒着です。

実際にそのようなことが本当にあるのかと思われる人もいるかもしれませんが、少ないとは言えません。不動産会社から斡旋・紹介される業者に見られることです(全てではなく、そういう業者もいるということです)。

癒着とまではいかないものの、仕事を紹介してくれる不動産会社へ遠慮があり、本当の第三者としての調査結果やアドバイスをしてもらえないケースは多いです。調査後に購入を中止されたり、多くの補修箇所を指摘されたりすると、不動産会社や工務店から仕事を紹介してもらえなくなるため、買主目線で調査してもらえないというわけです。

人材の質・経験・ノウハウに問題がある

ホームインスペクションの質は、担当の質や経験、業者の持つノウハウに大きな影響を受けます。この質を保つにはコストがかかるため、低価格で良質なサービスを提供することは困難です。コストについての説明は後述していますので、そちらをお読みください。

安心を得るためのホームインスペクション(住宅診断)なのに、低質なサービスや買主向きのサービスでなければ意味がなく、かえって投資した費用を無駄にしてしまいかねません。安ければよいのではなく、適切な料金であることが重要なのです。

建築士の資格なし業者もある

いろいろなホームインスペクション業者が参入して、それぞれが価格設定しているのはよいのですが、一部では建築士の資格ももたずに検査業務をしている業者まであります。そして、そういった業者は安い料金で提供していることが多いです。

そういった業者に依頼してから後悔しても遅いので、よく確認して業者選びをしてください。

一級建築士

資格なし業者に依頼後、検査ミスが発覚して、アネストへ再依頼される事例もたまに発生しています。資格が全てではないですが、最低ラインと考えておきましょう。

ホームインスペクションにかかるコスト

ホームインスペクションのコスト

ホームインスペクション(住宅診断)の適切な料金がいくらであるか理解するためには、このサービス提供にかかるコスト(費用)を知っておかなければなりません。真面目に、そして良いサービスを提供しようとすると意外とコストがかかる実態を解説します。

ホームインスペクターの人件費・報酬

ホームインスペクション費用のなかでも最も高い割合を占めるのは、担当するホームインスペクターの人件費(報酬)です。逆に言えば、人の質(経験・知識・資格)を落としてしまえば、価格を安くしやすいわけですが、これでは依頼者のデメリットも大きくなります。

良質な人材に投資することで高い質を確保できるのですが、これによりコストが上がります。その見返りとして、技術力が得られることが多く、依頼者にとっても調査結果などに信頼を得やすくなります。

バックオフィス業務費

バックオフィス業務にかかる費用は、ホームインスペクションに関する様々な問合せや依頼などの質疑応答、報告書のチェックなどに携わるスタッフの人件費などです。これも大事な業務ですので、費用をかけていないと報告書チェックなどが疎かになっていることや質問にきちんと回答してもらえないといったことも起こりえます。

システム開発

システム開発人は、主に調査データの蓄積と有効活用のための費用です。他にも業務の効率化を図るためにも必要です。

ホームインスペクション業者のなかで、システム開発費にきちんと投資している会社は稀です。各社が小規模であるため、まとまった投資はハードルが高いのです。

しかし、せっかく実績・経験を積み重ねていても、これを有効活用するための仕組みがないと意味がないため、そのためのシステム開発は重要です。これは、多くの実績がある会社で無ければ実行できないでしょう。

調査機材

ホームインスペクションを行うには調査機材が必要です。実は1つ1つの機材はそれほど高額なものではなく、10数万円程度で基本的な調査に必要な機材一式をそろえることもできます。

ただし、機材は損耗していくため、定期的な買い替えが必要になります。

基本的な調査以外に必要な専門機材は全てのホームインスペクターが保有する必要はありませんが、インスペクターの人数が少ない会社では、何かあったときに稀に使用するための機材を用意しておくことが難しいことはあります(高額なのにほとんど使わないものを用意しづらいわけです)。

インスペクターの人数が多ければ、基本的な調査以外の調査が発生することも少なくないので、様々な機材を保有していることがあります。

広告費・販売促進費

集客・営業活動にかかる費用です。今は、インターネット広告が主流ですが、この広告費も安くはありません。また、一部の業者では不動産会社からの紹介を集客ルートにしており、その不動産会社へ紹介料(謝礼)を支払うこともあります。第三者制の点で問題がありそうですね。

会社の利益

業者が得る利益です。ここにあげたもの以外にも交通費やオフィス費用(家賃・光熱費)、通信費などもありますが、そういった費用を売上から差し引いて残る利益です。

以上のように、ホームインスペクションには多くのコストがかかることがわかりますね。相場のなかでも安い業者では、これらのうち必要な費用を削っている可能性があるわけです。

特にホームインスペクターの人件費・報酬を削ることが多いですが、これは技術力に直結する大事な部分ですから要注意です。また、システム開発費にしっかり投資できている会社は非常に少ないです。

ちなみに、アネストではこういった費用項目にしっかり投資しています。それが非常に重要なことだと知っているからです。

料金を支払う時期

ホームインスペクション(住宅診断)の料金を支払う時期は、各業者が決めていることですので、依頼する前に確認しておいてください。

一般的には後払いが多く、調査完了後、指定の支払期日までに決済しなければなりません。

しかし、依頼内容等の条件によっては前払いや分割払いとなることもあります。後払いと決めつけず、ホームページ等で確認しておいてください。できれば、安心の後払い業者に依頼したいですね。

アネストの住宅インスペクション

ホームインスペクション(住宅診断)の費用負担は誰がするか

ホームインスペクションに必要な費用については理解できたと思いますが、その費用をだれが負担するのか質問を受けることがあるので、解説しておきます。

依頼者が費用負担するのが原則

まず、前提として費用を負担するのは依頼者です。依頼者とは、ホームインスペクションを利用したいと思い、業者へ依頼する本人ですね。

依頼者には、住宅の売主も買主もなりえます。売主なら販促効果を考えて依頼しますし、買主なら購入後に後悔しないために依頼します。

新築住宅は買主が依頼する

新築住宅でホームインスペクションを依頼するのは、基本的には買主ですから、費用負担も買主です。

新築では、売主が不動産会社になります。建築に際してかし保険の検査などを利用することはありますが、これは簡易的な検査であり、一般的に買主が利用するホームインスペクションとは異なるものです。注文建築で工務店やハウスメーカーが利用しているものも、不動産会社(売主)の場合と同様です。

中古住宅は買主も売主も依頼する

中古住宅では、売主が販促目的で利用することがあります。販促以外にも、売却後に発覚する不具合等の対応に役立つかし保険に加入する目的でインスペクションを利用することがありますが、これは、最低ラインの調査のみであることが大半です。

買主が購入判断のために依頼するときは、買主が費用負担しています。アネストのホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人はほとんどが買主です。

物件によっては、売主と買主の双方がホームインスペクションを入れているときがあり、その場合はそれぞれが費用負担しています。

欠陥・不具合の原因調査は売主・建築会社の負担?

購入した住宅に何らかの不具合や欠陥があった場合の調査費用は誰が負担するのでしょうか。たとえば、雨漏りや床下漏水、建物の大きな傾きなどの問題が生じたケースでの調査です。

購入したばかりの住宅であれば、売主やハウスメーカー・工務店に費用負担を求めたいところですね。但し、不動産会社等が主導して調査を入れる場合、第三者性に問題が生じる可能性があることから、実は調査会社探しは所有者がした方がよいです。

自分で探して調査依頼し、費用負担を不動産会社等へ求めるよう交渉することが望ましいです。

一級建築士

稀にインスペクションを依頼後、不動産会社や建築業者とどちらが支払うか揉めているケースがありますが、本来は依頼する前に調整し、確定しておくべきことです。注意しましょう。

ホームインスペクションの費用を無駄にしないために

決して安くはない費用(料金)が必要なホームインスペクションです。依頼者なら、できる限り有効活用し、かけた費用を無駄にしたくないですよね。

そのために、注意すべき点をお伝えします。

インスペクション業者を価格で選ばない

初めて利用するサービスで判断基準が難しいだけに、わかりやすい価格で選んでしまいがちですが、専門技術・経験がモノをいう業務ですから、低価格はむしろマイナス要素にもなりえますので、価格を重視しない判断も必要です。

仲介業者の紹介より自分で探す

ホームインスペクションを実施する業者について、不動産仲介業者から紹介してらもう人も少なくありません。住宅の売買の前後は多忙なことが多いのでその方が楽でよいとは思いますが、それによって仲介業者の息がかかった業者を紹介されていたとなれば問題です。

できる限り、自分自身でホームインスペクション業者を探すように心がけましょう。

一人か二人の個人事務所を選ばない

知識や経験は多くの専門家同士で共有することで、さらに磨きがかかり、1つ1つの診断業務に活かされます。

担当者の経験が多くても、一人だけでは他の人の意見を聞く機会も少なく、知識・情報がなかなか更新されません。なかには、誤った判断を気付かずにずっと続けてしまう人もいます。

一人か二人といった少人数の組織ではよくあることですので。多くの専門家が集まっているホームインスペクション業者がお勧めです。

10年以上の実績と経験の質

経験値は年数だけで決まるものではありませんが、会社組織としての経験年数としては、最低ラインが10年といったところです。もちろん、異業種の経験が長くても意味がないため、ホームインスペクション業の経験年数が大事です。

ただし、年数が長くても経験の質が低いとそれほど期待できません。質にもいろいろありますが、いろいろな施工不具合、雨漏り、漏水事故などの原因・被害調査までしている業者なら、ただのインスペクションだけではない経験をして、深いノウハウを積むこともできます。

その他にも一級建築士であることや、調査報告書が充実していることも大事な要素です。「ホームインスペクション業者の選び方」も参考にしてください。


少し長くなりましたが、ホームインスペクションの費用や低価格なインスペクションの注意点、費用負担について解説しました。実際に依頼する際には、価格だけで判断しないことが大切だと考えておきましょう。

アネストの住宅インスペクション

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