ホームインスペクションの費用

新築住宅でも中古住宅でも非常に多くの人がホームインスペクション(住宅診断)を依頼するようになりましたが、一方でホームインスペクション業者も増え続け、その業者の質は玉石混交です。依頼しても意味がないようなレベルのもの、依頼することでかえって損失を被るケースまで出てきました。

ホームインスペクション業者が増えれば、依頼者としては比較検討したいのですが、これが意外と簡単ではありません。比較するうえで多くの人が注目するのは、かかる費用、つまりホームインスペクションの料金ですが、単純に価格を比較するだけでは、かえって損してしまうことも多いです。

ここでは、ホームインスペクションについて費用も含めて比較検討したい人に役立つように、費用の相場と同サービスの料金を構成する要素、そして費用を負担する人について解説しています。

家を買うタイミングなどで利用を検討している人は、費用面についてよく確認しておきましょう。

※ホームインスペクションについてよく知らない方は、「ホームインスペクションとは?」をご覧ください。

アネストの住宅インスペクション

ホームインスペクションについて

ホームインスペクションの費用の相場感について解説する前に、ホームインスペクションとはどういうものなのかについて簡単に解説しておきます。

ホームインスペクションとは、住宅を対象とした建物調査のことで、住宅診断とも呼ばれているものです。

一級建築士などの建物の専門家が、新築住宅の施工不良や中古住宅の劣化状態を調査し、その結果を依頼者へ報告します。その依頼者は、インスペクション結果(報告書)を住宅購入の判断材料や建物のメンテナンスの参考などに活用することができます。

建物(建築物)の状態を把握するには、専門知識や経験が必要なだけに多くの人がホームインスペクションを利用するようになりました。

一戸建てやマンション、アパートも対象としていることが一般的ですが、インスペクション業者によっては、一戸建てのみとかマンション専門をうたって営業していることもあります。

ホームインスペクションに関してイメージを掴めたら、次に気になるのはその費用ですね。次は、費用(料金)の相場について解説します。

ホームインスペクションの費用の相場

インスペクションの費用の相場

ホームインスペクションを専門家に依頼するときにかかる費用(調査料金)の相場を紹介します。依頼する業者によっていくらかの差異があることは理解しておいてください。

調査の基本料金

ここで紹介する基本料金とは、新築完成物件や中古住宅のホームインスペクションを依頼すると必ず必要となる料金で、一般的には、建物外部(基礎・外壁・軒・屋根)と建物内部(居室等の床・壁・天井・建具・その他の設備)が対象となっています。

ホームインスペクション業者によっては、報告書が基本料金に含まれていることもあれば、外構の調査が含まれていることもあります。含まれる報告書も質・内容によってグレードを分けていることも少なくありません。

基本料金の相場は以下のとおりです。ただし、前述したように内容に違いがあることを忘れないでおきましょう。

新築一戸建て・完成物件

物件種別費用の相場
基本料金5~7万円
新築一戸建て・完成物件の相場

新築一戸建て住宅の完成物件のインスペクションにおいて、詳細な報告書や床下、屋根裏(小屋裏)を除いた基本的な調査の費用相場です。完成物件であれば、契約前でも後でも相場金額は同じです。

完成後、引渡し前に行う内覧会立会い・同行サービスはこれに該当するものです。

中古一戸建て

物件種別費用の相場
最低ラインのみ4~6万円
詳細な調査5.5~8万円
中古(既存)一戸建ての相場

中古一戸建て住宅のホームインスペクションでは、最低ラインの調査だけをする業者とプラスアルファの詳細な調査をする業者にわかれています。

既存住宅状況調査方法基準にある調査のみ(=宅建業法でいう建物状況調査のみ)、つまり最低ラインのみの調査なら4~6万円(5万円程度が多い)が相場です。ただし、この調査のみでは買主にとっては必要な情報が不足することが多いです。詳しくは後述の「調査範囲の違いを理解しておく」の「最低ラインの調査だけでいいのか」をご覧ください。

中古住宅を購入するなら「建物状況調査の基礎知識と中古住宅購入時の注意点」も参考にしてください。

マンション

物件種別費用の相場
新築マンション4~5万円
中古マンション4~6万円
マンションの相場

マンションにおけるインスペクションは、建物全体の調査ではなく、1住戸の専有部分を対象としたものを前提として費用相場を記載しています。ただし、中古マンションでは外壁・エントランス等の共用部分の一部を含めたものです。

新築マンションの完成後、引渡し前に行う内覧会立会い・同行サービスは上の新築マンションに該当するものです。

オプション料金

多くの業者において、オプション制が採用されています。主なオプションとその相場は以下のとおりです。

よく利用されるオプション

物件種別費用の相場
床下の調査1.5~3.5万円
屋根裏(小屋裏)の調査1.5~3.5万円
詳細な報告書0~1万円
一戸建てのオプション調査の相場

床下や屋根裏の調査をオプションとせず、基本料金に含めている業者もありますが、その場合は基本料金が高く設定されています。しかし、床下も屋根裏も住宅によっては進入できないことも少なくありませんので、別料金で設定されている方が理に適うと言えます。

また、点検口がある住宅であっても床下や屋根裏へ物理的な理由(配管等が邪魔になるなど)で進入できないこともあるため、調査当日に中止になったときに、その費用(オプション料金)が請求されないかどうか確認しておくとよいでしょう。

詳細な報告書は、基本料金に含めていると謳う業者がありますが、実際にはそれほど詳細な報告書でないことがあります。また、詳細報告書と言いつつ、複数業者で比較すると全然、詳細な印象を受けないこともあります。よって、報告書は各社のサンプルを見て比較してください。

特別な理由等で付けることがあるオプション

物件種別費用の相場
基礎鉄筋探査1~3万円
コンクリート圧縮強度試験1.5~3万円
設備配管の調査1.5~3万円
高所調査(屋根・屋上を含む)1~5万円
専門調査等の相場

床下や屋根裏以外に専門的な機材を用いた調査をする場合、これをオプションとすることもあります。このなかには、ほとんど意味がなく必要ないものや、適切な調査遂行が困難なものもありますが、そのような実態が知識と経験のない依頼者にはわかりづらいため、依頼して損しているケースもあります。

基礎鉄筋探査

基礎鉄筋探査を無償か格安で対応する業者のなかには、国交省の既存住宅状況調査方法基準で規定するものではない、簡易な調査機材(オモチャのようなレベルのものもある)で誤魔化していることもあります(誤魔化すつもりはないかもしれませんが)。

また、格安の場合、測定箇所が1箇所のみということもありますので、安すぎるサービスには注意が必要です。

コンクリート圧縮強度試験

コンクリート圧縮強度試験とは、一戸建てなら基礎コンクリート、マンションなどの鉄筋コンクリート造なら躯体の強度を簡易的に確認する調査です。コンクリートが余程ひどい状態でない限り、悪い調査結果が出ることが少なく、その必要性には賛否があります。

ただし、一定の築年・規模等によっては、国交省の既存住宅状況調査方法基準で実施するように規定されていますので、必要となることもあります。

設備配管の調査

設備配管の調査とは、排水管や上水管の調査のことです。多くの業者が基本料気に含めているものの、別途オプションとする業者もあります。詳しくは後述(設備の調査)も参照してください。

高所調査(屋根・屋上を含む)

高所、つまり住宅建物の高い箇所の調査です。屋根については、地上およびベランダから目視できる範囲は、基本調査に含まれることが一般的です。それ以外の場合、別途オプションで対応となります(対応しない業者も多い)。

たとえば、屋根を高所カメラ(長いポールの上にカメラを取り付けたもの)やドローンで確認する場合や、広めの屋上へあがって調査する場合などです。一部では、建物周囲に足場を設置するなどして調査する場合もあります。

これらは、調査の目的や必要性と料金を考慮して利用有無を検討しましょう。強風や雨天の際には実施できないことや、追加のオプション費用をかけた割にほとんど意味がないということもあるので、慎重に検討しましょう。

ここで挙げた専門的な調査、特別な理由で実施する調査については、本当に必要なものか見極めが大事です。

保険料

中古住宅の売買に際してホームインスペクションを利用する場合、既存住宅売買瑕疵保険に加入できることがあります。「できることがある」とは、審査基準に適合するなどの要件に該当する必要があり、加入できない物件の方が多いための表現です。

保証期間1年1年5年
保証金額500万円1,000万円1,000万円
一戸建て5.5~8万円6~9万円8~17万円
マンション5~8万円5.5~8万円7~13万円
給排水管路担保特約1~2万円1~2万円1~2万円
瑕疵保険料の相場

瑕疵保険に加入できる場合で、且つ希望して加入する場合、上の表であげた保険料が必要です。建物の面積や保証期間、保証金額によって幅があります。

なお、新築住宅の場合は、売主または建築会社(ハウスメーカー等)が加入しますので、保険料の負担は売主または建築会社です(瑕疵保険に加入しない場合もあります)。

調査範囲の違いを理解しておく

単純な費用の比較だけでは、業者選びが難しいのですが、数値だけではなく調査範囲の違いも理解しておく必要があります。

最低ラインの調査だけでいいのか

中古住宅のホームインスペクションでは、前述(中古一戸建ての費用相場のところ)のとおり、国交省の告示にある最低ラインの調査だけをする業者とプラスアルファの調査をする業者にわかれています。最低ラインでも告示どおりですから悪くないのですが、買主が購入判断や補修判断をするためには、調査結果の情報が不足するため、プラスアルファの詳細な調査は必須だと考えておきましょう。

この告示の調査は、建物状況調査ともいわれますが、ほとんどの業者が提出する報告書は、調査結果の詳細がわかりづらいものです。調査範囲が限定的なうえにわかりづらいものでよいかどうか、よく考えましょう。

外構まで調査してもらうべき

新築住宅でも中古住宅でも、建物本体のみしか調査してもらえず、外構を全く見てくれないことが多いです。プラスアルファの調査をする業者でも外構まで見てもらえるケースは稀です。しかし、この外構は意外と大事なものです。

たとえば、境界にあるフェンスががたついていて体重をかけると危ないということがあります。しかも、隣地や道路との高低差がある敷地なら、子供が落下して大けがをするリスクも考えなければなりません。

また、塀が倒れて建物や外部設備などを傷める可能性もありますし、偶然に前の道をとおりがかった人に損害を与えてしまう可能性もあります。

そして、塀などの外構で確認される症状が建物本体のホームインスペクションの重要な参考になることもあるのです。基礎だけではなく外構の塀にもひび割れがあり、床が傾いているために地盤沈下が疑われるといったことです。

設備の調査

住宅には、配管(排水管など)などの設備がありますが、この設備、とくに配管の調査を基本調査に含めておらず、別途オプションとしているケースも多いです。

配管経路の多くは、隠蔽部分で確認できないものの、目視および排水テスト等で確認できる範囲だけでも調査することが推奨されますので、基本料金に含まれているのか、別途オプションとして費用がかかるのか確認しましょう。

ホームインスペクションの総額の相場

特別なオプションを除いて、床下・屋根裏の調査を含めたホームインスペクションの総額の相場は、以下のとおりです。

物件種別費用の相場
一戸建て8~14万円
マンション4~9万円
完成物件および既存(中古)住宅の費用の総額

中古マンションでは、建物の条件によってはコンクリート強度試験(シュミットハンマー試験)をする場合があるため、これを含めた場合、相場範囲のなかでも高めの方になりがちです。

所在地と建物面積で費用が変わるか?(出張料・面積加算)

但し、物件所在地によっては出張料が必要になることがありますし、建物面積・規模が大きければ加算が生じることもあります。この出張料や建物面積による加算も業者によって差異が小さくないので、注意してください。

たとえば、ホームインスペクションのアネストの面積加算は以下のとおりですが、他社は一戸建てで100㎡や120㎡、マンションで80㎡を上限としていることなどがあります。

物件種別面積
一戸建て150㎡以下は加算なし
マンション100㎡以下は加算なし
アネストの面積加算なしの上限面積

所要時間で費用が変わるか?

調査の所要時間によってインスペクション費用を変えている業者は少ないです。代わりに、前述のとおり建物の面積・規模で料金設定をしていることが多いです。

業界の草分け的な存在であるアネストのホームインスペクションのエリア別の料金も参考にしてください。

新築の建築中の住宅検査費用

新築の完成物件や中古住宅のインスペクション費用と建築中に行う検査費用は異なります。建築中の場合、1回のみ単発で依頼するか、何回も依頼するかによっても総額は大きく異なります。

物件種別費用の相場
1回のみ4~7万円
複数回検査回数による
新築住宅の建築中の検査費用

基礎工事から完成までの間、5~12回くらいの間で検査依頼をするケースがあるため、検査費用の幅も大きくなります。凡そ22~80万円くらいが目安です。ただし、建築中の検査も所在地・規模・構造等によって異なるため、各社に問い合わせて見積りをとるとよいでしょう。

雨漏りや欠陥の原因調査の費用は全く異なる

ここでは、ホームインスペクションの費用として紹介していますが、目的のことなる調査の場合は、料金体系が全然違ったものになるので誤解しないでください。

雨漏りや設備漏水、欠陥工事などの原因を追究する調査は、ここで紹介したホームインスペクションの費用は参考になりません。

低価格な費用のインスペクションに要注意

低価格インスペクションに要注意

ここまで見てきたなかで、単純にホームインスペクションの費用を比較するだけではいけないことは理解できたことでしょう。それでも、安い方がよいと考えて低価格なサービスが気になるのは誰にでもありうることではないでしょうか。

そこで、低価格インスペクションでよく見られる問題点、デメリットを紹介しますので、これを読んでから判断してはいかがでしょうか。

不動産会社や工務店との癒着

代表的なデメリットとしては、癒着です。

実際にそのようなことが本当にあるのかと思われる人もいるかもしれませんが、少ないとは言えません。不動産会社から斡旋・紹介される業者に見られることです(全てではなく、そういう業者もいるということです)。

癒着とまではいかないものの、仕事を紹介してくれる不動産会社へ遠慮があり、本当の第三者としての調査結果やアドバイスをしてもらえないケースは多いです。調査後に購入を中止されたり、多くの補修箇所を指摘されたりすると、不動産会社や工務店から仕事を紹介してもらえなくなるため、買主目線で調査してもらえないというわけです。

人材の質・経験・ノウハウに問題がある

ホームインスペクションの質は、担当の質や経験、業者の持つノウハウに大きな影響を受けます。この質を保つにはコストがかかるため、低価格で良質なサービスを提供することは困難です。コストについての説明は後述していますので、そちらをお読みください。

安心を得るためのホームインスペクション(住宅診断)なのに、低質なサービスや買主向きのサービスでなければ意味がなく、かえって投資した費用を無駄にしてしまいかねません。安ければよいのではなく、適切な料金であることが重要なのです。

建築士の資格なし業者もある

いろいろなホームインスペクション業者が参入して、それぞれが価格設定しているのはよいのですが、一部では建築士の資格ももたずに検査業務をしている業者まであります。そして、そういった業者は安い料金で提供していることが多いです。

そういった業者に依頼してから後悔しても遅いので、よく確認して業者選びをしてください。

一級建築士

資格なし業者に依頼後、検査ミスが発覚して、アネストへ再依頼される事例もたまに発生しています。資格が全てではないですが、最低ラインと考えておきましょう。

ホームインスペクションにかかるコスト

ホームインスペクションのコスト

ホームインスペクション(住宅診断)の適切な料金がいくらであるか理解するためには、このサービス提供にかかるコスト(費用)を知っておかなければなりません。真面目に、そして良いサービスを提供しようとすると意外とコストがかかる実態を解説します。

ホームインスペクターの人件費・報酬

ホームインスペクション費用のなかでも最も高い割合を占めるのは、担当するホームインスペクターの人件費(報酬)です。逆に言えば、人の質(経験・知識・資格)を落としてしまえば、価格を安くしやすいわけですが、これでは依頼者のデメリットも大きくなります。

良質な人材に投資することで高い質を確保できるのですが、これによりコストが上がります。その見返りとして、技術力が得られることが多く、依頼者にとっても調査結果などに信頼を得やすくなります。

バックオフィス業務費

バックオフィス業務にかかる費用は、ホームインスペクションに関する様々な問合せや依頼などの質疑応答、報告書のチェックなどに携わるスタッフの人件費などです。これも大事な業務ですので、費用をかけていないと報告書チェックなどが疎かになっていることや質問にきちんと回答してもらえないといったことも起こりえます。

システム開発

システム開発人は、主に調査データの蓄積と有効活用のための費用です。他にも業務の効率化を図るためにも必要です。

ホームインスペクション業者のなかで、システム開発費にきちんと投資している会社は稀です。各社が小規模であるため、まとまった投資はハードルが高いのです。

しかし、せっかく実績・経験を積み重ねていても、これを有効活用するための仕組みがないと意味がないため、そのためのシステム開発は重要です。これは、多くの実績がある会社で無ければ実行できないでしょう。

調査機材

ホームインスペクションを行うには調査機材が必要です。実は1つ1つの機材はそれほど高額なものではなく、10数万円程度で基本的な調査に必要な機材一式をそろえることもできます。

ただし、機材は損耗していくため、定期的な買い替えが必要になります。

基本的な調査以外に必要な専門機材は全てのホームインスペクターが保有する必要はありませんが、インスペクターの人数が少ない会社では、何かあったときに稀に使用するための機材を用意しておくことが難しいことはあります(高額なのにほとんど使わないものを用意しづらいわけです)。

インスペクターの人数が多ければ、基本的な調査以外の調査が発生することも少なくないので、様々な機材を保有していることがあります。

広告費・販売促進費

集客・営業活動にかかる費用です。今は、インターネット広告が主流ですが、この広告費も安くはありません。また、一部の業者では不動産会社からの紹介を集客ルートにしており、その不動産会社へ紹介料(謝礼)を支払うこともあります。第三者制の点で問題がありそうですね。

会社の利益

業者が得る利益です。ここにあげたもの以外にも交通費やオフィス費用(家賃・光熱費)、通信費などもありますが、そういった費用を売上から差し引いて残る利益です。

以上のように、ホームインスペクションには多くのコストがかかることがわかりますね。相場のなかでも安い業者では、これらのうち必要な費用を削っている可能性があるわけです。

特にホームインスペクターの人件費・報酬を削ることが多いですが、これは技術力に直結する大事な部分ですから要注意です。また、システム開発費にしっかり投資できている会社は非常に少ないです。

ちなみに、アネストではこういった費用項目にしっかり投資しています。それが非常に重要なことだと知っているからです。

料金を支払う時期

ホームインスペクション(住宅診断)の料金を支払う時期は、各業者が決めていることですので、依頼する前に確認しておいてください。

一般的には後払いが多く、調査完了後、指定の支払期日までに決済しなければなりません。

しかし、依頼内容等の条件によっては前払いや分割払いとなることもあります。後払いと決めつけず、ホームページ等で確認しておいてください。できれば、安心の後払い業者に依頼したいですね。

アネストの住宅インスペクション

ホームインスペクション(住宅診断)の費用負担は誰がするか

ホームインスペクションに必要な費用については理解できたと思いますが、その費用をだれが負担するのか質問を受けることがあるので、解説しておきます。

依頼者が費用負担するのが原則

まず、前提として費用を負担するのは依頼者です。依頼者とは、ホームインスペクションを利用したいと思い、業者へ依頼する本人ですね。

依頼者には、住宅の売主も買主もなりえます。売主なら販促効果を考えて依頼しますし、買主なら購入後に後悔しないために依頼します。

新築住宅は買主が依頼する

新築住宅でホームインスペクションを依頼するのは、基本的には買主ですから、費用負担も買主です。

新築では、売主が不動産会社になります。建築に際してかし保険の検査などを利用することはありますが、これは簡易的な検査であり、一般的に買主が利用するホームインスペクションとは異なるものです。注文建築で工務店やハウスメーカーが利用しているものも、不動産会社(売主)の場合と同様です。

中古住宅は買主も売主も依頼する

中古住宅では、売主が販促目的で利用することがあります。販促以外にも、売却後に発覚する不具合等の対応に役立つかし保険に加入する目的でインスペクションを利用することがありますが、これは、最低ラインの調査のみであることが大半です。

買主が購入判断のために依頼するときは、買主が費用負担しています。アネストのホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人はほとんどが買主です。

物件によっては、売主と買主の双方がホームインスペクションを入れているときがあり、その場合はそれぞれが費用負担しています。

欠陥・不具合の原因調査は売主・建築会社の負担?

購入した住宅に何らかの不具合や欠陥があった場合の調査費用は誰が負担するのでしょうか。たとえば、雨漏りや床下漏水、建物の大きな傾きなどの問題が生じたケースでの調査です。

購入したばかりの住宅であれば、売主やハウスメーカー・工務店に費用負担を求めたいところですね。但し、不動産会社等が主導して調査を入れる場合、第三者性に問題が生じる可能性があることから、実は調査会社探しは所有者がした方がよいです。

自分で探して調査依頼し、費用負担を不動産会社等へ求めるよう交渉することが望ましいです。

一級建築士

稀にインスペクションを依頼後、不動産会社や建築業者とどちらが支払うか揉めているケースがありますが、本来は依頼する前に調整し、確定しておくべきことです。注意しましょう。

調査範囲、メリット・デメリット、依頼の流れ

調査範囲、メリット・デメリット、依頼の流れ

ホームインスペクションを依頼する前に、基礎的なこととして、その調査範囲・内容や、利用することによるメリットとデメリット、依頼するときや調査当日の流れも気になりますね。これらを解説します。

調査範囲・内容

新築住宅においては、施工不具合の有無を確認することを目的とし、中古住宅においては建物の劣化状態を確認することを目的として調査しますが、その具体的な調査範囲・内容は次のとおりです。

建物外部・屋外

基礎のひび割れ・欠損、外壁のひび割れ(防水上の懸念がある継ぎ目のひび割れを含む)、外壁の配管等の貫通部の隙間、ベランダ、屋根・屋上、外構(フェンス・塀・カーポート等)が対象となります。

ただし、外構は対象外とする業者もありますので、依頼前に確認しましょう。

建物内部・屋内

床・壁・天井、住宅設備(水周り設備・配管・建具など)が対象ですが、水周り設備は調査時に水道を使用できない場合、目視確認のみとなります。床および壁においては、傾斜測定も行います。

点検口の内部

1階の床下、屋根裏(小屋裏)、天井裏(例:1階と2階の間のスペース)などの点検口がある箇所は、その内部の調査を行います。床下と屋根裏は、オプション利用によりホームインスペクター(検査員)が内部の奥まで入って調査を行います。

基本的には、調査時点で目視できる範囲が対象範囲ですから、家財道具などで見られない箇所は調査することができません。

利用するメリット・デメリット

ホームインスペクションを利用した場合のメリットとデメリットを把握した上で利用判断したいものですので、紹介します。

メリット

住宅購入時に、建物の状態(施工不具合や著しい劣化)の有無やその該当箇所を把握することができること、それにより購入判断やメンテナンス・リフォームの参考にすることができること、専門家に相談できることが、主なメリットです。

不動産という大きな買い物、または長く住み続ける住宅であることを考えると、ホームインスペクターという専門家による調査を利用することで、安心感を得られることも大きなメリットだと言えます。

デメリット

インスペクションを行うデメリットとしては、費用がかかることです。一部で無償や格安で対応する業者がありますが、不要なリフォーム・改修などに誘導されたり、とても専門家と言えない人が検査したりすることがあるので、注意が必要です。

また、住宅購入前の利用に際しては、インスペクションをしている間に対象物件が先に売れてしまう可能性があることもデメリットです。

メリットとデメリットをよく検討した上で利用有無や利用するタイミングを検討しましょう。

依頼の流れと調査当日の流れ

ホームインスペクションを依頼するときと、調査当日の流れについて解説します。

依頼するときの流れ

ホームインスペクションを依頼するときの問合せ、依頼から調査完了へ至るまでの一般的な流れは、以下のとおりです。

  • 物件の資料を手元に準備
  • 不動産会社または建築会社にホームインスペクションを利用する旨を連絡
  • ホームインスペクション業者へ問合せ(見積り依頼など)
  • 日程調整・必要書類の手配
  • 正式に依頼(お申込み)
  • 調査を実施(調査への立会い)
  • 報告書を受領
  • 料金の支払い
  • 質疑応答

正式に依頼から調査日までにゆとりがある場合、必要書類は依頼後の準備でも間に合いますが、早めに手配しておきましょう。

調査には、依頼者もできる限り立ち会うようにしましょう。その場でホームインスペクターに質疑や相談ができて便利である上に、調査結果を理解しやすいというメリットがあるからです。

調査当日の流れ

調査の当日の一般的な流れは以下のとおりです。

  • 現地前で集合
  • 調査の流れ等の説明を受ける
  • 調査開始
  • 調査終了
  • 調査結果・重要な点の説明
  • 質疑応答

多くの場合、依頼者とホームインスペクター、不動産会社などが対象物件の現地前で集合します。それから、調査の流れや概要について説明を受け、調査が始まります。

調査は、建物外部・屋外から始めることが多く、その後に室内、そして屋根裏や床下へと進んでいきます。現地の状況によって、担当のインスペクターが判断して順序を入れ替えることもあります。

調査完了後、調査結果の概要について説明を受けてから、質問・相談があれば、聞く流れとなり、この時点で調査結果の重要な点は概ね把握することができます。もちろん、後日、調査報告書を受け取ってからも質問することはできます。

ホームインスペクションの費用を無駄にしないために

決して安くはない費用(料金)が必要なホームインスペクションです。依頼者なら、できる限り有効活用し、かけた費用を無駄にしたくないですよね。

そのために、注意すべき点をお伝えします。

インスペクション業者を価格で選ばない

初めて利用するサービスで判断基準が難しいだけに、わかりやすい価格で選んでしまいがちですが、専門技術・経験がモノをいう業務ですから、低価格はむしろマイナス要素にもなりえますので、価格を重視しない判断も必要です。

仲介業者の紹介より自分で探す

ホームインスペクションを実施する業者について、不動産仲介業者から紹介してらもう人も少なくありません。住宅の売買の前後は多忙なことが多いのでその方が楽でよいとは思いますが、それによって仲介業者の息がかかった業者を紹介されていたとなれば問題です。

できる限り、自分自身でホームインスペクション業者を探すように心がけましょう。

一人か二人の個人事務所を選ばない

知識や経験は多くの専門家同士で共有することで、さらに磨きがかかり、1つ1つの診断業務に活かされます。

担当者の経験が多くても、一人だけでは他の人の意見を聞く機会も少なく、知識・情報がなかなか更新されません。なかには、誤った判断を気付かずにずっと続けてしまう人もいます。

一人か二人といった少人数の組織ではよくあることですので。多くの専門家が集まっているホームインスペクション業者がお勧めです。

10年以上の実績と経験の質

経験値は年数だけで決まるものではありませんが、会社組織としての経験年数としては、最低ラインが10年といったところです。もちろん、異業種の経験が長くても意味がないため、ホームインスペクション業の経験年数が大事です。

ただし、年数が長くても経験の質が低いとそれほど期待できません。質にもいろいろありますが、いろいろな施工不具合、雨漏り、漏水事故などの原因・被害調査までしている業者なら、ただのインスペクションだけではない経験をして、深いノウハウを積むこともできます。

その他にも一級建築士であることや、調査報告書が充実していることも大事な要素です。「ホームインスペクション業者の選び方」も参考にしてください。


少し長くなりましたが、ホームインスペクションの費用や低価格なインスペクションの注意点、費用負担について解説しました。実際に依頼する際には、価格だけで判断しないことが大切だと考えておきましょう。

アネストの住宅インスペクション

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。