住宅ローン控除の耐震基準適合証明書は必要なくなった?

住宅ローン控除(住宅ローン減税)を受けるために、耐震基準適合証明書が必要だと聞いた人は多いでしょう。この制度において、2022年度の税制改正により要件の変更があったことはご存じでしょうか?

建物の登記簿(登記事項証明書など)で昭和57年1月以降に建てられたものであることを確認できれば、耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン控除等の減税の対象となることになりました。

多くの物件において耐震診断で不適合となり、減税の対象外となっていたことを思えば、中古住宅の購入者によっては嬉しい要件変更だと言えます。

また、住宅ローン控除だけではなく、登録免許税および不動産取得税の軽減についても同様です。

この改正により、耐震基準適合証明は必要なくなったと説明されることもあるようですが、正確にはそうではなく、築年によっては必要なくなったものの、古い築年の中古住宅においては必要なのです。

建物の登記簿で昭和56年以前に建てられたことが確認された場合、住宅ローン控除を受けるのは大変難しい状況です。今回は、この点について解説します。

耐震基準適合証明書で得られるメリット

中古住宅を購入するときの耐震基準適合証明書で得られるメリットを改めておさらいしておきましょう。

  • 住宅ローン控除(住宅ローン減税)の対象となる
  • 登録免許税が軽減される
  • 不動産取得税が軽減される
  • 固定資産税が軽減される
  • 地震保険の保険料が割引される

以上のとおり、魅力的な金銭に関わるメリットがあります(要件もあるので注意が必要です)。

住宅ローンを利用しない人、田舎の物件で固定資産評価額が非常に低い物件などでは、減税メリットは小さいこともあるので、自分がどれだけ減税されるかは、不動産会社や税理士などへ相談してみるとよいでしょう。

建築年の確認が大事

本記事の最初にも記載しましたが、税制改正により、建物の登記簿(登記事項証明書など)で昭和57年1月以降に建てられたものであることを確認できれば、耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン控除等の減税等の対象となることになりました。

登記は法務局で確認することができますが、不動産会社が入手済みであることが多いので、まずは不動産会社に登記簿の写し(登記事項証明書など)の提出をお願いしましょう。

登記事項証明書で新築がいつになっているか見てください。昭和57年1月以降であれば、新耐震基準に適合しているとみなされ、耐震基準適合証明書は取得する必要がありません。

それ以前の建物であれば、後述する耐震基準適合証明書の取得を検討してください。

昭和56年以前に建てられた建物の場合

古い中古住宅

昭和56年以前に建てられた場合、耐震基準適合証明書を取得することで住宅ローン控除等の減税のメリットを得ることができます。

しかし、それは簡単なことではありません。

古い建物の耐震性は低い

耐震基準適合証明書は、一定の耐震基準に適合していることを証明する書面ですが、昭和56年以前の住宅のうち圧倒的多数がその基準に適合していません。つまり、費用をかけて耐震診断を実施しても不適合となってしまう可能性が非常に高いのです。

適切な耐震補強工事をしているなら少し期待できる

古いからと言って全ての建物がダメとは限りません。たとえば、これまでの所有者が耐震補強工事を行うことで、新耐震基準に適合している可能性もありうるのです。ただ、可能性はあるものの、可能性が高いわけではありません。この時点では「少し期待できるかも」くらいのイメージです。

不動産会社より、「耐震補強していると聞いているので、大丈夫だと思う」と依頼者から伺うことがあります。しかし、その場合でも不適合になる物件の方が多いのが現実です。

その理由は、耐震補強と言っても、適切な耐震診断の結果に基づく、適切な耐震補強工事をしているとは限らないからです。

たとえば、リフォーム業者がだいたいの感覚で必要そうな補強をしたという場合、耐震診断をしてみると全然、基準に足りないということは多いです。また、耐震補強はしているものの、基準に適合させるほどの工事はしていない(元よりは耐震性が上がっているが基準には不足する)ということもあります。

耐震診断の報告書と耐震補強計画書を売主へ要求する

不動産会社より、耐震補強をしたと説明を受けた場合、買主としては耐震診断の報告書と耐震補強計画書の提出を求めてください。適切な耐震診断と補強工事をしたなら、その根拠となるこれらの資料があるはずです。

これらがないという返答であれば、耐震基準に適合している可能性はぐっと低くなるでしょう(適当に実施した工事で適合する可能性がないわけではないですが)。

そして、これらの資料がないと、今から耐震診断を実施するのも困難です。耐震上有効な耐力壁の位置や仕様がはっきりしないからです。

耐震基準に不適合の場合の対応方法

耐震改修工事

耐震診断を行った結果、不適合となった住宅でも耐震補強と再診断によって、減税メリットを目指す方法はあります。とはいえ、その障壁は少々高いと考えてください。

進め方を簡単に説明すると以下のとおりです。

  1. 耐震診断を実施→不適合となる
  2. 耐震基準適合証明の仮申請を実施
  3. 住宅の引渡しを行う
  4. 耐震補強工事を実施
  5. 再度、耐震診断を実施
  6. 適合証明書を発行(適合した場合)
  7. 入居

引渡しの前に、必ず、最初の耐震診断(現地調査)を行っておく必要がある点が重要です。売買契約の前でも後でも構いませんが、引渡しの前であることは必須です。

耐震補強工事は引渡し後、つまり買主に所有権が移ってからでも構いません。

この流れならできると安易に考えるのは危険です。

耐震補強工事は、基準に適合できる適切な内容でなければなりません。そのためには、耐震補強工事の実績・経験が豊富であることが重要です。ホームページなどで耐震補強工事に対応と謳っていても適切に対応していない業者もあるので注意してください。

お勧めの進め方としては、物件を購入する前に耐震補強工事を行う業者(工務店)に相談し、耐震診断(現地調査)をしてもらい、その業者に引渡し後の補強工事の計画・設計・施工をしてもらうことです。これはワンストップで対応してもらわないと、買主が主導して進めるのは手間・知識の両面において大変だからです。

古い建物ほど、耐震性が低く、補強工事にかかる費用も高くなりがちです。進め方が難しいこと、適切に対応してくれる工務店を見つけるのが難しいこと、費用が高くなることが多いことから、現実的には難しいと判断し諦める人も多いです。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。