住宅購入・建築の基礎知識
Last Updated on 2022-3-7
新築の注文建築を建てると取引の最終段階において、施主検査というものがあります。これから家を新築する人も、これからまさに施主検査を迎えようとしている人も、完成後や引渡し後、そして入居後に後悔することのないように施主検査のことを正しく理解して、必要な対応をとることで乗り切りましょう。
アネストでは、多くの新築住宅の施主検査(完成検査)に同行してきた経験があるため、この経験を活かして施主検査の基礎知識を紹介しますので、それからチェックリストを参考にして当日の現場対応をしてください。
確実に理解しておくために、本当に基本的なことから説明しておきます。皆さんは、「施主」の正しい意味を理解していますか?間違になくわかっているという人はここを読み飛ばしてもよいですが、そうでない人はここから読み進めてください。
施主とは、建築工事においては建物の工事を発注する人、つまる発注者のことを言います。建築工事請負工事では、発注者や注文者と表示していることが多いです。建築請負工事の発注者であって、出来上がった建物を購入する買主とは異なります。
建売住宅は、売主が決めた企画・設計で建築された完成物を売買するので、その代金を支払って取得する人は施主ではなく買主です。
注文住宅は、注文者(施主)が決めたプランで工務店に建たてるように建築工事という業務を依頼するので、建売住宅とはこの点で大きな違いがあります。
但し、建売住宅でも施主がいないわけではありません。それは、買主からみたときの相手方(つまり売主)です。売主は下請けの工務店に建築工事を発注しているので、施主でもあるのです。
ちなみに、新築に限らず、リフォームでも発注者のことを施主と呼びます。
次に施主検査の説明ですが、これはわかりやすいですね。施主が行う検査だから施主検査です。この施主検査は、建築工事の途中で検査するものも、完成後にするものも含めてそう呼ばれています。
住宅の新築に限らず、リフォームでも同じように施主検査があります。
施主検査のところで、建築工事中にも完成後にも実施することを説明しましたが、そのうち完成後に行う者が完成検査です。これもわかりやすいですね。
但し、完成検査という言葉は注文住宅のときにのみ用いられるとは限りません。未完成の建売住宅を購入した人が、完成後に行う検査のことを完成検査ということもあるからです。建売か注文かに関係なく、完成後に行うものを完成検査と呼ぶと理解しておけば大丈夫です。
ちなみに、似た言葉で竣工検査というものがあります。竣工とは建物が出来上がることを言いますから、竣工検査と完成検査は同じ意味です。
次に施主検査のことをもう少し掘り下げて理解しておきましょう。あなたが実際に施主検査に立会いする前に知っておくべき基礎知識を紹介します。
施主検査では、建築工事の施工品質のチェック(施工ミスがないか確認)や契約通りのプランで建てられているか確認することが主な目的です。建築途中にも、その時点で確認できることをチェックし、完成時点ではその時点で確認できる範囲は全てチェックするつもりで立ち会ってください。
最初は、工務店から建物や設備のことなどで説明があることが多く、その説明を聞き終えたら自らチェックを進める番です。工務店に気を遣いすぎないように、時間をかけて丁寧に見ていくとよいでしょう。
施主検査は、施主にとって施工不良などを指摘して補修対応してもらうために非常に重要な機会ですから、慎重に準備して対応したいものですが、実は工務店(建築工事の受注者)にとっても良い品質の住宅を提供し、それを施主に理解してもらい、さらには後々のクレームを抑制するためにも重要な機会です。
しかし、これをそれほど重要にとらえていない工務店が多く、全国各地で適当な施主検査が横行し、せっかくの機会を施主も工務店も無駄にしていることが少なくありません。
はじめての施主検査ともなれば、どれくらいの時間がかかるのか想像するのは難しいでしょう。所要時間は、建物の規模(大きさ)やプラン、施工品質(施工ミスが多いか少ないか)によって違いがありますが、建物面積が30坪程度だとして、建築中で1~1.5時間、完成後で2時間くらいはかかると思っておいた方がよいです。
前後のスケジュールにはゆとりをもって臨むようにしてください。特に、何らかの大きな施工ミス等が見つかった場合、その場で工務店とある程度の協議をする流れとなることもありますから、検査後のスケジュールがタイトなときは対応が遅れをとることもあります。
ちなみに、専門家に施主検査立会いを依頼した場合には、調査機材を使用したり、施主へ状況説明したりすることもあって、建築途中で1.5~2時間、完成後で2~2.5時間ほどかかることが多いです。また、床下や屋根裏内部のオプション調査も依頼すれば、もっと時間がかかります。
施主検査には、完成時だけではなく建築途中で実施するものもありますが、建築途中はいつ、どのタイミングで実施するのでしょうか。完成後なら引渡し前だろうと、まだわかりやすいですが、建築途中はどのタイミングで実施するのかわかりづらいですね。
実は、建築途中の施主検査は施主から申し出ないと工務店の方からその機会を設けてくれないことも多いです。そういうものがあると知らずに完成を迎える施主は多いでしょう。施主としては、建築工事請負契約を締結する段階で建築途中や完成後の施主検査があるのか、また、いつ頃に実施するのか工務店へ確認しておく必要があります。
工務店によっては(特に大手ハウスメーカーでは)、建築途中に確認会や説明会などの名称で現地確認の機会を案内していることがあります。検査という言葉を使わずに、「ただの確認」「説明を受けるだけ」という印象を持つ言葉ですが、本来は施主が施工品質や契約通りの施工か確認する良い機会ですから施主検査と同じだととらえて時間をかけて確認した方がよいでしょう。
ところで、建築途中の施主検査は、主に以下のタイミングで実施しておくことが理想です。
これらはいずれも非常に重要なタイミングです。基礎や構造躯体は建物の基本構造ですから、何かミスがあれば大変です(もちろん施工ミスの内容による)。また、防水や断熱は施工ミスが起こる頻度が高いので注意したい工程です。
工務店から、これらすべての施主検査を提案されることはほとんどありませんから、施主から積極的に働きかけるとよいでしょう。
建築途中の施主検査については、「建築中の住宅検査(ホームインスペクション)で隠れる前に見るべき4つのポイント」も参考になります。実際に建築途中で第三者の検査を検討するなら「住宅あんしん工程検査(建築中の住宅検査)」をご確認ください。「施工中の中間立会いで行うホームインスペクション(住宅検査)と依頼時の注意点」も参考にしてください。
完成後の施主検査の時期も説明しておきます。建物が完成してから引渡しを受けるまでの間に実施すべきです。
このとき、基本的には建物本体工事のみではなく、外構工事も完了してから行うべきですが、外構工事を建物本体の建築業者とは別の業者へ発注している場合は、外構工事の前に施主検査をすることになります。
注意すべきなのは、引渡しの直前よりも早めに実施すべきという点です。
引渡し日の前日や前々日に施主検査をする人もいますが、それでは引渡し前に補修工事が間に合わない可能性があります。できれば、施主検査と引渡しの間には少なくとも1週間以上の期間をあけることをおすすめします。
初めてでわからないことが多い施主検査です。だからこそ、インターネットで役立つ情報を探してここに行きついた人も多いでしょう。検査の際にチェックすべきことは次の「引渡し前の施主検査(完成検査)のチェックリスト」にも挙げていますが、自分たちだけでこれだけのことをする自信がないという人も多いです。
施主検査を無駄にしないために有効な方法が、第三者の専門家に依頼して立ち会ってもらうということです。施工不具合の有無をきちんと建築の専門家に診てもらうわけです。
自分たちだけでチェックして建築会社やハウスメーカーに指摘を伝えても、「そういうものですよ」と言われてしまって何も反論できなかったという声も少なくありません。
家を買う機会はそう多くありませんし、大きな投資をして取得するものですから、専門家に立会いを依頼することも考えましょう。専門家の立会いサービスは、内覧会同行などと呼ばれていますが、「建築士の内覧会同行・立会いサービス(新築一戸建て・マンション)」で詳しく説明しています。
施主検査のうち、最後の検査となるのは建物完成後に行う完成検査です。引渡し前に行う最後の機会ですから、丁寧に確認して問題箇所があれば指摘して補修を求めましょう。ここでは、完成時の施主検査、つまり完成検査で施主がチェックすべき項目をリスト形式で紹介します。この後には、チェックリストのPDFファイルの案内もあります。
屋外部分とは、建物の外側で確認できる部分です。
建物内部の床下部分です。
以上が完成検査で施主が確認しておくべきチェックリストで、できる限りシンプルにまとめてみました。
傾きの確認や床下・屋根裏内部の確認は専門性がより高いため、自力でチェックするのは難しいところです。また、工務店が言う「そういうものですよ」という説明・言い訳が本当のことかわからないという声も多いので、専門家に施主検査への立会いを依頼するのも効果的な方法です。
それでも自力で施主検査(完成検査)を乗り切りたいという方には、便利なチェックリストのPDFファイルを無償で提供していますので、お使いください。これは、アネストの報告書サンプルですが、調査項目の詳細が記載されているので、現場で使うチェックリストとしても重宝します。
ここまでに施主検査について抑えておくべき基礎的な知識を解説してきましたが、最後によくある疑問についても解説しておきます。
住宅の新築やリフォームをした人から、施主検査をしないまま引渡しを受けて住んでいると聞くことがあります。施主検査なしで引渡しを受けたというわけですが、これは心配ですね。
施主検査は施主にとって大変重要な機会で、本来ならば引渡し前に施工不具合の有無をチェックして、建築業者へ補修してもらわなければなりませんが、この機会がなかったら施主にとって不利な状況です。
実際に、建築業者から引渡し前に建物が出来上がった状態の検査をするよう提案してこないケースがありうるため、完成が近づいた時点で施主の方から積極的に施主検査の時期について質問してください。
万一、施主検査なしで引渡しを終えてしまった場合は、できるだけ早いタイミングで施工不具合の有無をチェックすべきです。このような場合、第三者の専門家に依頼することも検討しましょう。
引渡し後のサービスは、「住宅の点検・建物調査(居住中の一戸建て)」で対応しています。
施主にとっては慣れない機会ですから、施主検査に必要な持ち物が何か見当つかないおいうこともあるでしょう。建築業者から案内される物だけでは不十分なこともあるため注意したいところです。
具体的には以下の持ち物を用意してください。
これらの道具類は、建築業者が用意してくれている場合も少なくありません。特にスリッパや間取り図は用意している業者が多いです。事前に用意されている者について確認しておくとよいでしょう。
マスキングテープのように、現場で指摘箇所をマーキングするものを建築業者が用意しているはずですが、これを用意していないこともありうるので、念のために用意しておくことも考えましょう。
施主検査を一度終えた後に、もう一度やってほしい、やり直したいとの声を聞くことがあります。
最初の検査で指摘した事項について、補修後の確認をしたいということであれば、本来なら当然にやるべきことですから、遠慮せずに建築業者へ「手直し工事後の再確認の日を調整したい」と申し出てください。
最初の検査できちんとチェックできたか不安なので、やり直したいということであれば、建築業者へお願いしてみましょう。このやり直しは、基本的にはお願いベースですが、了解してもらえる可能性は十分あります。指摘事項が多い時には不安になるものですし、自分たちだけでは見落としたのではないかと不安になるのも理解できることです。
しかし、「引渡し後にご自身だけで診てください」と言われることもあります。ここは交渉のしどころですね。
施主検査をしたときによくあるクレームについて紹介します。
これらは、本当によくあるクレームであり、かつ皆さんにとって大変重要なことばかりです。こういったことをできる限りなくすためにも、工事に着手する前や工事途中の打合せで互いによく確認しながら進めたいものです。
工事が完了していない場合、引渡しや引越し時期までずれ込む可能性が高いですから、早めに進捗について確認すべきです。着工してから、ただ完成を待つのではなく、途中で工事の進捗が順調なのか、遅れがないのか確認することも忘れないでください。
工事が雑な住宅では、傷だらけで酷すぎたので、最後までチェックする気になれなかったという方もいました。本当に残念な思いになりますね。
よく相談があることの1つに、「一人だけで施主検査をしなければならないので不安だ」という声です。家族の都合が合わない等の理由により、一人で対応しなければいけなくなる人もいるのですが、その場合、不安になるのもあたりまえかもしれません。
その場の雰囲気にのまれて何もチェックできず、言いたいことも言えず、聞きたいことも聞けずに終わったという後悔の声も珍しくありません。
やはり、こういう時の対策の1つが既にあげている専門家による施主検査への立会いの依頼です。
施主検査についてお伝えすべきことは多いですね。マイホームのハード面に関する安全性を少しでも確保するため、また、住み始めてからの後悔を少しでも抑制するため、施主検査についてはしっかりと対応できるように準備しておきましょう。
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Tags:新築 住宅診断 一戸建て