中古住宅を購入するタイミングでホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人が多くなりましたが、依頼する人から「どのような指摘があるのか?」「どのような指摘が多いのか?」と質問を受けることが多いです。

初めて依頼するホームインスペクション(住宅診断)ですから、その依頼前に指摘事項のイメージをもっておきたいと考えるのは自然なことだと言えるでしょう。

そこで、その参考として頂くため、長年、中古住宅のホームインスペクションをしてきたアネストの実績から、よくある指摘事例をランキング形式で公表します。「中古住宅のホームインスペクションの指摘事例ランキングTOP5」です。

なお、このランキングには、機能・性能面で問題がない事象(傷や汚れの類)は含まれておりません。機能・性能・安全面で問題があると判断された事象が対象です。

第1位:外壁シーリングの割れ・隙間(バルコニー周り・サッシ周りを含む)

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例の第1位は、外壁シーリングの割れ・隙間です。

外壁シーリングの劣化

シーリングと雨漏りの関係

シーリングとは、外壁材の継ぎ目などに施工されるもので、防水性能上、重要なものです。シーリングの劣化(著しいひび割れや痩せなど)が進むと、外壁内へ雨水が浸水してしまい、最終的には室内側へ雨漏りしてしまうこともあります。

この雨漏りリスクのことを考えれば、ひび割れ等の劣化が確認された場合は、補修すべき事象だと言えます。

ちなみに、劣化してひび割れたわけではなく、新築当時の施工が甘くて配管等の外壁貫通部のシーリングに隙間が生じていることもあります。これもひび割れ同様に雨漏りリスクがあります。

シーリングと雨漏りの関係は「外壁シーリングのひび割れと雨漏りと第三者検査」も参考になります。

シーリングは多用されている

シーリングは、外壁のいろいろな箇所で多用されていることが多いため、この指摘が上がる住宅では、補修すべきが範囲が広範囲に及ぶことも多いです。外壁材の継ぎ目(目地)、サッシや配管などの外壁貫通部分の周囲、バルコニーと外壁の取合い部分などに使用されています。

外壁貫通部の隙間

10年周期でシーリングのやり替え

そして、新築後10年程度でシーリングをやり替える時期を迎える住宅が多いことも知っておきましょう。もちろん、個々の住宅によって建物の劣化状態は異なるので、住宅診断等で判断するとよいでしょう。築5~6年にも関わらず、思いのほか劣化が進んでいる住宅が見つかることもあります。

シーリングは概ね同じ時期に全体的に劣化が進んでいくことが多いため、一部のみを補修するよりも全体をまとめて補修することが多いです。購入時のホームインスペクション(住宅診断)で指摘されたなら、全体の補修をするといくらくらいかかるのか、リフォーム業者から見積りをとるとよいでしょう。

シーリングの補修には足場が必要なことが多い

シーリングを補修するときには、足場を組んで施工することが多いですから、そのときに足場の有効利用を考慮して外壁材の割れ(シーリングではなく外壁材そのものの割れ)や屋根の劣化があれば、一緒に補修すると効率的です。

第2位:室内の壁・天井の割れ

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例の第2位は、室内の壁・天井の割れです。

壁のひび割れ

壁と天井のひび割れは多い

壁・天井のひび割れは、建物内部の調査を進めていくと、多くの建物で確認される事象です。ただし、多くの場合、直ちに構造的な影響が心配されるものではないことも多いです。第1位にあがった「外壁シーリングの割れ」ほどの心配はないものが多いということです。

建物の揺れがひび割れ発生のきっかけに

特によく発見されるひび割れは、壁や天井の下地材の継ぎ目に沿った直線的なひび割れです。これは、地震や強風などで建物が揺れることをきっかけとして生じるケースが多く、それほど心配することはありません。しかし、築浅の住宅でこの直線的なひび割れがあまりに多い場合は、新築当時の下地材の施工に問題があった可能性も考えるべきです。

壁のひび割れ

床と壁の傾斜測定結果も要確認

また、ホームインスペクション(住宅診断)で調査する項目には、床や壁の傾斜測定がありますが、傾きが大きい住宅であれば、建物の傾きがひび割れと関係していることもあるので要注意です。

多くの場合において、天井と壁の直線的なひび割れは大きな問題ではないものの、できれば専門家の意見を聞いて参考することをお勧めします。

第3位:基礎のひび割れ(クラック)

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例の第3位は、基礎のひび割れ(クラック)です。ただし、ここでいうひび割れは表面のモルタルだけのひび割れを除き、構造的に心配すべきひび割れを指しています。

基礎立上りのひび割れ

床下側のひび割れも要確認

基礎は建物外部からでも目視確認できますが、その部分にはコンクリートの上からモルタルが施工されている住宅が非常に多く、一見しただけではモルタルだけのひび割れなのか、その内部のコンクリートまでひび割れが入っているのか判断が難しいことが多いです。

モルタルだけのひび割れであれば、心配することはないのですが、コンクリートのひび割れとなれば早めに補修すべき事象と言えます。

床下へ潜れる住宅であれば、床下側から基礎にひび割れがないか確認することを強くお勧めします。外部から目視した箇所の裏側(床下側)にもひび割れがあるようであれば、ひび割れが基礎を貫通している可能性も考えられ、重要な事象だと言えるでしょう。

基礎の底盤のひび割れも要確認

床下へ潜れた場合、基礎の底盤(底の部分)についてもひび割れがないかよく確認しなければなりません。基礎の立上り部分にはひび割れがないものの、底盤部分にはひび割れが見つかる住宅もあるからです。

基礎底盤のひび割れ

基礎ひび割れの発生原因

基礎のひび割れ(クラック)の発生原因には、施工時のコンクリート打設に問題があるケースや配筋工事に問題があるケースなどがあります。構造的に影響のないレベルのものは、乾燥収縮により起こっていることも多いです。

基礎で見つかる不具合について詳しく知りたいなら「中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)で見つかる基礎の不具合」を参照してください。

第4位:断熱材の劣化

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例の第4位は、断熱材の劣化です。

断熱材の垂れ下がり

断熱材は床下・屋根裏・外壁にある

断熱材は全ての住宅にあるわけではありません。古い住宅では、全く断熱材がないものも多いです。1980年以降に建築された住宅の多くでは、断熱材が施工されていますが、それでも時期によっては、廊下やトイレ等の床下部分には施工されていないケースもよくあります。

断熱材が施工される個所は、床下・屋根裏・外壁です。

床下は、床下点検口から覗くことで確認できますが、床下全面に施工されているか確認するためには、床下へ潜っていく必要があります。屋根裏も点検口から目視することができますが、内部へ進入しないと一部は目視できないこともあります。

そして、外壁の断熱材は目視確認できないことが多いです。浴室の天井点検口などから一部のみを確認できることもありますが、確認できる範囲はごく一部に限られています。

断熱材の施工ミス

断熱材は有無と劣化を要確認

断熱材があっても劣化状態を確認しなければなりません。床下へ潜っていくと断熱材があちこちで地面に落ちてしまっていることがよくあります。これでは、断熱性能が全く活きていません。屋根裏で隙間だらけになっていることがあります。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

第5位:構造金物の緩み・錆

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例の第5位は、構造金物の緩み・錆です。

構造金物の緩み

構造金物は耐震性に関わる大事なもの

構造金物は、床組みや小屋組みなどに使用されるもので、建物の主要な構造部分の一部となる非常に大事な役割を果たす材料です。建物の耐震性を心配する人は多いですが、この耐震性と深く関係するものですから、ここにいくつも指摘があがるようであれば、心配になるところです。

緩みは新築工事の問題かも

構造金物は、新築当時から締めが甘くて緩んでしまっている場合もありますし、木部が痩せたことで緩んでしまうこともあります。いずれにしても、緩みが多いと耐震性の問題が出てきますから、可能な範囲でチェックしておきたいものです。

湿気は要注意

構造金物の錆は雨漏りがきっかけで起こることもありますが、床下や屋根裏(小屋裏)の湿気の高さが要因で起こることもあります。異常に高い湿気には注意したいものです。床下や屋根裏の換気が悪い状態であれば、リスクが高まると考えてください。湿気はシロアリ被害をもたらしやすいというリスクもあります。

金物の指摘

金物の緩みが多いと要注意

床下や屋根裏のホームインスペクション(住宅診断)で金物の緩みが何箇所も見つかった場合、目視できない(調査できない)範囲の金物の状態も心配されます。同じ職人が施工している可能性が高いですから、目視できない範囲でも金物の緩みは考えられます。

それを確認するには壁等を解体しなければならず、確認が現実的に難しいです。そのような中古住宅を購入するかどうかは慎重に検討する方がよいでしょう。

まとめ

中古住宅のホームインスペクションでよく指摘事例のTOP5を紹介しましたが、いかがでしょうか?

【TOP5】

  • 外壁シーリングの割れ・隙間
  • 室内の壁・天井の割れ
  • 基礎のひび割れ(クラック)
  • 断熱材の劣化
  • 構造金物の緩み・錆

外壁シーリングや室内壁・天井の割れは専門家でなくてもある程度は見つけられるかもしれませんね。内見の際は間取りや広さの確認だけではなく、こういった指摘の多い点についても意識を配っておくことをお勧めします。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。