築10年の中古住宅を購入するメリット・デメリットと注意点

中古住宅を購入するときに、できるだけ築浅の物件を買いたいと考える人は多く、築10年くらいのものを購入検討することもあります。

「10年くらい経過した住宅だけど、まだそう古くはないので、リフォームしなくてよいかな」
「築年数が30年以上も経っていると自分が高齢になったときが心配だから、10年くらいがよいかな」

などと考えている人は少なくありません。

そこで、建物の築年数に関して判断に迷う人向けに、築10年程度の中古住宅の購入を検討する買主が知っておくべき基礎知識やメリット・デメリットと注意点を解説します。

Contents
  1. 築10年くらいの中古住宅の基礎知識
    1. 築10年は住宅のメンテナンスを考える時期
    2. 各建物の状態の差異が目立ち始める時期
    3. 意外と築浅物件の販売件数は多い
  2. 築10年の中古住宅を購入するメリット
    1. 築浅なので見た目が綺麗
    2. リフォーム・メンテナンス費用がかからない
    3. 設備が新しく、機能・利便性が期待できる
    4. 断熱性・省エネルギー性が古い住宅より高く快適
    5. 耐震性に関して安心できる
    6. 古い住宅より耐久性が期待できる
    7. 建物価格が新築より安くなっていて買いやすい
  3. 築10年の中古住宅を購入するデメリット
    1. 築浅とはいえ思ったより劣化状態が酷いことがある
    2. 古い中古住宅より価格が高い
    3. まだまだ建物価格が値下がりしやすい
    4. 全面改装・リノベーションしたいなら既存の内装・設備がもったいない
  4. 築10年の中古住宅を買うときの注意点
    1. 修繕(メンテナンス)と内装リフォームの必要性
    2. 販売価格の妥当性
    3. 売主の契約不適合責任が免責になっていないか要チェック
    4. 購入時の諸費用を考慮すれば新築を購入できることがある
    5. 築10年と思えない劣化状態の物件がある
    6. 新築当時の施工不良が補修されていない物件に注意
  5. ホームインスペクションの指摘事例を写真付きで紹介
    1. 床下のボルトの緩み
    2. 床下の基礎のひび割れ
    3. 外壁のシーリングの破断
    4. 外壁のシーリングの隙間
    5. 床の傾き
    6. 屋根裏の断熱材の落下
    7. 屋根裏の雨漏り

築10年くらいの中古住宅の基礎知識

築10年の中古住宅の基礎知識

築10年くらいの中古住宅とはどういうものか、何となくでもイメージできるでしょうか。実際に、いくつか該当する物件の内見をした人ならわかりやすいと思いますが、まだこれから探すところならば、意外と10年程度の建物の状況についてイメージしづらい人もいるでしょう。

ここでは、築10年くらいの住宅の基礎的なことを説明します。

築10年は住宅のメンテナンスを考える時期

住宅は、最初に新築した後に何もメンテナンスなどをせずに住み続けると、劣化進行が早くなり、良い状態で長持ちさせることが難しくなってしまいますので、適切な時期と内容でメンテナンスしていくことが前提となります。

最初にメンテナンスを考えるべき時期は、築10年ほど経過した頃です。

この時期になると、外壁や屋根、バルコニー(屋上がある場合は屋上を含む)の劣化が顕著になってくることがあるため、適切なメンテナンスが推奨されることが多いです。建物外部については、常に日照や雨にさらされているため、内部よりも劣化進行が早くなりがちです。

各建物の状態の差異が目立ち始める時期

前述したとおり、10年くらいでメンテナンスを考えるべき時期ではあるのですが、どの建物でも同じとは限りません。劣化の進行具合は、新築当時の施工品質や建物の各部位の仕様、そして立地環境(日当たりなど)などによって小さくない差異が生まれるからです。

日当たりがよい家が好まれる傾向にありますが、日照により進行が早めるというデメリットもあります。逆に日当たりが悪すぎるとコケ・カビの付着が認められることもあります。また、屋根材がスレートなのか、金属屋根なのかでも劣化具合は相違します。

住宅毎に違いがあることを認識しておく必要があるということですね。

意外と築浅物件の販売件数は多い

築10年の住宅といえば、まだ築浅の住宅の部類に入ると言ってよいでしょう。多くの人がマイホームを購入するとき、長く居住することを前提としていますので、10年くらいで売却する人はほとんどいないと考えがちです。

しかし、SUUMOやHome’sなどの不動産ポータルサイトで物件情報を見ていると、思いのほか多くの築浅物件が掲載されていることがわかります。新築で購入した人にも、10年経つ間にいろいろなことが起こりうるので、自宅を5年や10年で売り出す人もいるのです。

たとえば、予定外の転勤や転職、身内の介護、離婚、住宅ローンの返済困難などのライフイベントをきっかけとして、新築当時の想定よりも早くマイホームを手放すことがあるわけです。

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築10年の中古住宅を購入するメリット

築10年の住宅を買うメリット

築10年の中古住宅を購入する人にとってのメリットを紹介します。

築浅なので見た目が綺麗

築10年ということは、一般的には、まだ築年数が浅くて内装や設備の見た目の状態は綺麗なものです。使う人によって、汚れや傷などの量に小さくない差異があるものの、平均的には綺麗な状態であることが多いです。新居としては、綺麗な状態である方がよいと考える人が多いですから、メリットだと言えます。

リフォーム・メンテナンス費用がかからない

見た目の綺麗さだけではなく、建物としての機能・性能に関わる点で劣化が酷くないことが多いため、購入後にリフォームやメンテナンス(修繕)に費用をかける必要性が低いです。物件によっては、全く費用をかけずに居住したり、僅かなリフォーム費用だけで快適に暮らせたりします。

設備が新しく、機能・利便性が期待できる

築10年くらいまでなら、住宅設備がそれほど極端に陳腐化しておらず、機能的にも利便性やニーズが高いものが装備されている住宅が多いです。もちろん、ここの物件によって差異があることですから、付帯設備については内見時によく確認しておきましょう。

たとえば、食器洗い乾燥機が欲しい人にとって、築30年以上の物件より10年くらいの物件の方が、付いている可能性は高くなるので、プラス条件となりますね。ただし、古い住宅でも売主がリフォーム等で付けていることもあるので、築年数だけで判断できることではありません。

断熱性・省エネルギー性が古い住宅より高く快適

マイホームでの生活において、その快適性を左右する要素の1つが、建物が持つ断熱性能です。

古い住宅では、断熱材が全く施工されていないものや、一部のスペースにのみ施工されているものがありますが、築10年くらいのものなら、建物全体を包むように断熱材が施工されていることが一般的です。夏や冬の快適性、そしてエアコン効率(=省エネルギー効率)に影響する大事なことですから、メリットだと言えます。

省エネ性能の違いは、当然ながら、電気代の違いにもなりますので、軽視できないことです。

耐震性に関して安心できる

建築基準法という法律において、建物の耐震性に関わる基準が規定されていますが、この点に関わる重要な法律改正が1981年と2000年に行われました。改正前に比べて改正後の基準で建築された住宅の方が、耐震性が高いということになるため、築10年くらいの住宅ならば、耐震性の点で安心感が高いと言えます。

ただし、新築当時の建築確認申請通りに建築されていることが前提の話となるため、増改築している場合は、その増改築の内容に影響を受けますし、建築確認申請通りに建築されていない住宅では、安心感が高いと言えないことになります。

古い住宅より耐久性が期待できる

建物は、基本的に劣化進行していくものです。適切な時期に適切なメンテナンスを行うことで、劣化を遅らせたり、回復させたりすることもできるのですが、大きな方向性としては劣化していくものです。

よって、全く同じプラン・仕様レベルであるならば、古い住宅に比べると新しいものの方が、耐久性があり長持ちする可能性が高いと言えます。まだまだ長持ちすることはメリットだと言えますね。

建物価格が新築より安くなっていて買いやすい

新築住宅に比べると10年ほど経過した住宅については、建物の価値が下がっていると考えられ、売主が売却するときの査定額も下がりますし、実際の売買価格も下がります。よって、新築住宅より安くなっているので、買いやすいと言えます。

ただし、何らかの外的な要因で土地の価値があがることがあり、その場合は新築当時に比べてそれほど下がっていないということもあります。その外的要因とは、市場動向(不動産相場の上昇など)や土地価格の上昇(近くに駅ができると公表されたときなど)といったことが考えられます。

築10年の中古住宅を購入するデメリット

築10年の住宅を買うデメリット

購入判断の参考とするためには、メリットだけではなく、デメリットを知っておくことも大事なことです。築10年の中古住宅を購入する人にとってのデメリットを紹介します。

築浅とはいえ思ったより劣化状態が酷いことがある

築浅の住宅では、それほど劣化が進行していないことが多いのですが、一部の住宅では想定以上に劣化が早く進行していることがあります。それまでの所有者・居住者の使い方によって異なる部分なので、築浅だから劣化していないと決めつけないことが肝要です。

古い中古住宅より価格が高い

築10年くらいの住宅は、新築に比べると安く買えることが多いですが、一方で築20年、30年などのもっと古い住宅に比べると価格が高くなりがちです。同じ立地・大きさの住宅であれば、築年数が古いものほど安くなる傾向にあります。

まだまだ建物価格が値下がりしやすい

築10年の中古住宅は、まだまだ建物に価値が認められるため、価格査定するときにも小さくない建物価格を計上しています。購入後に古くなっていくわけですから、まだまだ建物価格は下がると考えておきましょう。

ちなみに、都会の物件なら、売買価格のうち土地価格が占める割合が高くて建物の割合が低いですが、地方など土地価格が安い地域では、建物の割合が高くなるために、住宅全体の価格下落割合が高くなりやすいです。

全面改装・リノベーションしたいなら既存の内装・設備がもったいない

中古住宅を購入してから、買主の希望する内装・デザイン・使い勝手にあわせて、リノベーションする人も多くなりました。個々のニーズに合わせてリノベすることはよいことだと考えられますが、築浅である場合、まだまだそのまま使える内装材や設備を解体撤去処分することになり、資源や環境の面で損失が生じます。

また、中古住宅として購入するときには、状態の良い内装材や設備機器は査定に含まれていますが、リノベーションで内装・設備を解体処分することを理由に価格を下げてもらえることはありません。つまり、購入に投資した金銭のある程度の部分を捨てるようなことになり、経済的にももったいないと言えます。

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築10年の中古住宅を買うときの注意点

築10年の中古住宅を買うときに買主が注意すべき点を紹介します。周辺環境・利便性、用途地域・建ぺい率などの法規制、住宅ローン・税金などのマネー関係については、築年数に関係なく注意しておくことなので、ここでは省いており、10年程度経過した住宅だからこそ注意すべきことを紹介します。

修繕(メンテナンス)と内装リフォームの必要性

築10年という築浅の住宅だけに、内装材の交換や住宅設備の交換、機能的な部分の補修(メンテナンス)の必要性が高くないことが多いですが、前述したとおり、物件による差異が小さくありません。よって、内見する際には建物の外部や内部、設備に至るまでしっかり見ておき、リフォームの必要性の有無についてチェックしておきましょう。

販売価格の妥当性

築10年くらいで自宅を売却する人のなかには、住宅ローンの残高が多く、自宅の価格下落が大きくて、不動産会社の最低価格よりローン残高の方が多いというケースも少なくありません。資金的にゆとりがある売主ならば、差額を現金で支払うことにより適正価格で売り出すこともできますが、それができない人もいるのです。

そういう物件では、やむを得ず相場より高い価格で販売されていることもあるので、買主としては高い価格で買わないように注意したいところです。他の物件と価格を比較して販売価格の妥当性を見極めるようにしましょう。

売主の契約不適合責任が免責になっていないか要チェック

不動産を売るとき、売主はその対象物に契約に不適合となる問題があれば、買主に対して補修や損害賠償などの責任を負うことになります。これは、売主の契約不適合責任と言われるものです。

しかし、売主が不動産会社ではない場合(例:自宅を売ろうとする一般個人の人など)、契約不適合責任を免責(つまり責任を負わない)とする特約を付けることもできます。

もちろん、買主の立場としては、売主にこの責任を負ってもらう方がよいわけですので、契約不適合責任が免責になっていないかどうか、契約前に確認すべきことです。

参考として、建物の築年数が古い住宅ほど、免責とするケースが多いです。それは、古い建物については、いろいろな劣化・不具合があることが一般的だと言えることや、売買価格のうちに建物価格を少額しか含んでいない、もしくは全く含んでいないことになるからです。

築10年くらいの住宅においては、売買価格のなかに建物価格、つまり建物の価値を十分に含んでいるはずですので、免責とすることは買主に不利だと言えます。

購入時の諸費用を考慮すれば新築を購入できることがある

築10年程度の中古住宅では、新築住宅より販売価格が安くなっていたとしても、売主の事情などによりそれほど大きく値下がりしていないこともあります。

また、中古住宅の多くは、不動産仲介業者を介して取引するために仲介手数料が生じますが、新築住宅の場合は仲介手数料が生じない取引も多いです。その他の諸費用のことも含めて売買価格と諸費用(税金を含む)の総額を比較すると総負担額が新築を買うのと大差ないこともあります。

よって、購入判断に際しては、諸費用なども含めて比較検討するようにしましょう。

築10年と思えない劣化状態の物件がある

建物を見るときは、表面的な内装材のことだけではなく、構造耐力に関わる部位や雨漏り防止に関する点でもチェックすることが重要です。いや、むしろこちらの方が重要だと言ってよいでしょう。

築10年の建物では、雨漏り防止に関する点である程度、劣化が進行していてメンテナンスを必要としている物件が少なくないですが、その劣化の程度が酷すぎる物件が見られることがあります。また、床下で確認できる基礎や床組み、屋根裏で見られる小屋組みにおいて、著しく劣化していて、とても築10年の住宅とは思えないものあります。

こういったことは、専門家(建築士資格を有するホームインスペクター)にホームインスペクション(住宅診断)を依頼することで、買主の代わりに診てもらうこともできるので、検討するとよいでしょう。

新築当時の施工不良が補修されていない物件に注意

新築工事の際に、建築会社の不手際により、建物の施工不具合が発生している物件があります。その当時にすぐに適切に補修・補強されておればよいのですが、そのまま放置されていることも少なくなく、それがきっかけで築10年くらいの家で構造耐力に影響が小さくない問題を引き起こしていることや、雨漏りの要因となっていることもあります。

こういったことも、専門家にホームインスペクションを依頼することで、確認してもらえるので、できる限り売買契約を締結する前に依頼しましょう。ホームインスペクションは、目視できないところまで確認することはできないものの、経験・知識がある専門家に様々な症状を診てもらって意見してもらうことで、購入判断に役立つものです。

築10年という築浅物件なら深く考えずに安心して購入して良いだろうと考えていた人もいると思いますが、物件によっては安心できない可能性があることや、築年数という数値だけではなく、個々の状態を見極めることの大切さを理解できたと思います。

また、そのメリットやデメリット、注意点を知ることで、冷静に購入判断することもできるでしょう。中古住宅を購入検討する際、特に築10年くらいの築浅物件を検討する際に、今回のコラムが役立つこと、また皆さんの良いマイホーム取得につながることを願っています。

ホームインスペクションの指摘事例を写真付きで紹介

築10年程度の中古住宅に対して、実際にアネストがホームインスペクション(住宅診断)を実施して見つかった建物の劣化事象などの指摘事例を写真付きで紹介します。10年くらいの築浅の住宅でも、様々な劣化などの問題があることが理解できるでしょう。

床下のボルトの緩み

床下のボルトの緩み

床下へ潜って調査したところ、土台のアンカーボルトの著しい緩みが確認されました。

床下の基礎のひび割れ

床下の基礎のひび割れ

床下へ潜って調査したところ、基礎コンクリートに巾1mmのひび割れ(構造クラック)が確認されました。

外壁のシーリングの破断

外壁のシーリングの破断

外壁材の継ぎ目にあるシーリングに破断が確認されました。築10年くらいとしては著しいものです。

外壁のシーリングの隙間

外壁のシーリングの隙間

外壁材の継ぎ目にあるシーリングに隙間が確認されました。これは築5年でしたので新築当時の施工不良の可能性が考えられます。

床の傾き

床の傾き

床の傾きを計測したところ、10/1000もの著しい傾斜が確認されました。

屋根裏の断熱材の落下

屋根裏の断熱材の落下

屋根裏を調査したところ、屋根断熱の断熱材がいくつも落下している状況が確認されました。

屋根裏の雨漏り

屋根裏の雨漏り

屋根裏で雨漏り跡が確認されました。

以上が築10年くらいの住宅に対して実施したインスペクションの調査結果の実例です。一部で、築5年のものも載せています。

この築年数では、建物の劣化進行による症状だけではなく、新築当時の施工不良がそのまま補修されずに残っている状況が確認されることも多いです。売主も問題に気づいていなかった事例が多数です。

買主としては、築浅の中古住宅であっても建物に問題が確認されるケースがあることをよく理解し、できれば、売買契約の締結前にホームインスペクションを利用することを考えるとよいでしょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。