ホームインスペクションを依頼する前に知っておきたいインスペクションの基礎知識として、依頼時の注意点や必要書類、所要時間、メリット・デメリットなどを解説します。
ホームインスペクションとは、住宅の建物を対象として劣化状態や施工不具合の有無を調査する建築系の専門的サービスで、住宅診断や住宅検査も概ね同じ意味で利用される呼称です。
建物の専門性が高いことから、ホームインスペクションを実施する人(=ホームインスペクター)は、建築士であることが一般的です。主に住宅の売買や建築のときに利用されますが、リフォーム時やメンテナンスの参考にすることや定期点検に利用されることもあります。
ホームインスペクションについての基礎知識や詳細は、以下で解説します。
ホームインスペクションを依頼する人の目的は、主に以下の4点です。
以上のほかにも、依頼者の都合・考えにより利用することもありますが、その目的に合う調査内容であるか、依頼前に確認しておく必要があります。また、不具合や欠陥工事の原因や被害状況を確認するための調査もホームインスペクションの一種ととらえることもあります。
ここでは、一般的なホームインスペクションにおける調査内容および費用について説明します。インスペクション業者によって多少の差異があるものの、良い目安になるでしょう。
一戸建て住宅のホームインスペクションの調査方法は、主に目視や打診、触診、計測(傾き・含水率・ひび割れ)です。
調査範囲は、次のとおりです。建物外部では基礎・外壁・軒裏・屋根(但し、地上やベランダ等から目視できる範囲)・バルコニー、建物内部では床・壁・天井・水周り設備(キッチン・トイレなど)・建具・サッシなどです。また、床下や小屋裏(屋根裏)も調査対象です。
マンションでは、専有部分(住戸)の床・壁・天井水周り設備(キッチン・トイレなど)・建具・サッシ・バルコニーなどです。また、中古マンションでは共用部にあたる外壁なども一部で確認を行います。
住宅診断(ホームインスペクション)の具体的な調査項目で詳細な調査項目を確認できます。
ホームインスペクションに必要な費用(調査料金)は概ね以下のとおりです。
【マンション】
4~6万円程度
オプションでコンクリート強度調査などを付ける場合、+1.5~4万円程度
【一戸建て(完成物件・中古)】
5~7万円程度
オプションで床下・屋根裏の進入調査、専門機材による調査などを付ける場合、+2~10万円程度
【一戸建て(新築工事途中)】
検査回数・規模等による(5~60万円程度)
1回のみなら、5~7万円程度
【施工不具合・欠陥工事の調査】
内容により差異が大きいため、都度、問合せてください
ホームインスペクションの調査料金は、調査範囲・内容を限定的にすることや担当者の質を落とすことで低額な価格を設定するケースもありますが、大きな買い物をするときだけに、適正価格の業者へ依頼する必要があります。
ホームインスペクションのエリア別の料金で各サービスの料金を確認できます。
ホームインスペクションを依頼する人にとってのメリットとデメリットを紹介します。
ホームインスペクションを依頼する人にとってのメリットは、建物の状態を把握してから購入判断やリフォーム・修繕の判断をすることができる点です。
一般の人が自力で建物の状態を把握することは難しいため、誤った考えで購入・リフォームなどを判断してしまうことがあり、後に失敗に気づいて後悔する人が少なくありません。こういった後悔する確率を下げるメリットがあるのです。
デメリットは、費用負担があるという点です。なかには無料のホームインスペクションサービスもありますが、それはサービス提供者の意図(リフォーム等の受注)があるからであり、適切な診断結果を得られず、かえって損してしまうリスクがあります。
費用がかかるとはいえ、それだけのメリットがあるわけですから、検討する価値はあると言えます。
ホームインスペクションを依頼する際には、必要書類や所要時間のことも考えておかなければなりません。必要書類には必須のものと、必須ではないもののあれば役立つ可能性があるものがあります。
調査にかかる時間は、対象物件の大きさ・依頼内容(オプションサービスの有無)・依頼者の質問量など様々な要件の影響を受けるため、個々の差異が非常に大きいです。
建物の延床面積が30坪(約100平米)で床下および小屋裏(屋根裏)の調査も依頼する場合、平均的な所要時間は3.5時間程度です。
ホームインスペクション(住宅診断)の依頼者は、基本的にはその実施を希望する人です。希望する人は、新築住宅では買主ですが、中古住宅では買主の場合も売主の場合もあります(個人向けサービスの場合)。
アネストでは、中古住宅でも買主からの依頼が大多数を占めますが、業者によっては売主の依頼が大半を占めるケースもあります。
買主が購入判断や売主へ補修を求めるために活用することに向いた診断サービスですから、買主が依頼するとより有益なことが多いですが、売主が有利な条件で売るため(販促目的のため)に利用することもあるのです。
ホームインスペクション(住宅診断)の依頼を検討する人からよくある質問を挙げますので、参考にしてください。
買主のなかには、ホームインスペクションを依頼することで、不動産会社や建築会社が嫌がるのではないかと気を遣う人もいます。実際に、嫌がる担当者もいますが、そうではない人も多くいますので、こればかりは要望を伝えて反応を確認するしかありません。
確実に言えることは、インスペクションを依頼する人は非常に多くなっており、不動産・建築業界のうち住宅売買・建築に携わる人たちにとっては日常的に聞いたり見たりするものですから、それほど遠慮する必要はないということです。
中古住宅では、不動産会社の方からインスペクションのことを説明して依頼の希望有無を確認することが義務化されているほどです。新築でも、利用する人が非常に多いですから、嫌がる業者は対応がよくない業者だということを理解しておきましょう。
ホームインスペクションと言っても、新築や中古住宅、新築でも完成物件や建築途中など様々な住宅へのサービスがあります。具体的なサービスの種類については、「住宅診断(ホームインスペクション)のアネスト」を確認してください。
住宅を買うこと自体が何度もあることではありませんから、ホームインスペクションを依頼することが初めてだという人が多いです。そこで、依頼前に確認しておきたい注意点を挙げておきます。
最近はいろいろな人がホームインスペクション業務を行うようになりました。業務開始にかかるコストがそれほど高くないため、経験や能力が乏しいこともあれば、研修・マニュアルなどの整備もしないまま開始する業者も多いです。
「ホームインスペクション業者の選び方」も参考になりますが、まず最低限の要件として、担当者の一級建築士資格を確認してください。建築士でない人は論外ですが、同じ建築士でも二級より一級の方がよい経験を積んでいる確率が高いです。
担当者や会社の経験と実績が大事なことは想像できるでしょう。しかし、これだけではなく、組織全体のレベルを向上させていく仕組みがあるかも重視しましょう。
具体的には、検査データを蓄積して活用していること、研修制度があること、マニュアルを整備していることです。その上で多数の人数が所属することで、多くの意見・考えを集約できることも大事です。5名未満の人数では意見や考えが偏ってしまい、判断ミスが起こりやすいです。
建物の診断をするうえで大事な床下や小屋裏(屋根裏)の確認ですが、住宅によっては、床下や小屋裏のスペースを物理的な理由により確認できないことがあります。
確認するための点検口がなくて確認できないこと、点検口はあるものの建物の形状・設置位置・床下等にある障害物などの関係で全く確認できないこと、もしくは一部しか確認できないことがあります。
新築住宅のホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人のなかに、表面的な仕上げ材の傷や汚れのチェックに多くの時間を費やしている人がいます。
しかし、傷や汚れは住み始めれば生じるものですし、長期的に見ても住宅を傷めるようなものではありません。建物の構造・機能・性能に関わる大事な点をチェックするようにしたいものです。専門家に任せることで、これが可能になります。
ホームインスペクション(住宅診断)を依頼するタイミングも重要です。新築の完成物件と中古住宅であれば、最もお勧めのタイミングは契約前です。購入判断の活用することができ、大きな欠陥などの問題があれば、購入を中止できるメリットがあります。
次にお勧めのタイミングは、契約後・引渡し前です。特に新築住宅なら、このタイミングで売主へ補修してもらうべきことを指摘しておきましょう。
未完成の新築住宅であれば、建築途中の住宅検査も有効ですから、検討するとよいでしょう。
ホームインスペクション(住宅診断)について必要な基礎知識を中心に紹介しましたが、具体的なサービスについては、「住宅診断(ホームインスペクション)のアネスト」から確認してください。