ホームインスペクター

住宅の売買や新築、リフォームを行うタイミングや、定期点検・相続・賃借人の退去などのタイミングなどで、建築士でもあるホームインスペクターによるホームインスペクション(住宅診断)が利用される機会が、年々増えてきています。

そこで、ホームインスペクターをやってみたいと考えている人や、はじめてホームインスペクターに依頼するので、どういう仕事なのか把握しておきたいという人に向けて、ホームインスペクターの仕事や資格について解説します。

ホームインスペクターとは?

最初にホームインスペクターとは何か簡単に説明しておきます。

ホームインスペクターとは、住宅診断士や住宅検査員とも呼ばれることがありますし、後述する「ホームインスペクター資格の難易度」にも出てくる既存住宅状況調査技術者のことも含めてホームインスペクターと解釈することもできます。

いずれにしても、ホームインスペクターとは、住宅を対象として建物の劣化状態や施工不具合の有無を調査する専門家のことであり、多くの場合は建築士の資格を保有しています。この調査業務はホームインスペクション(住宅診断)と言われています。

ホームインスペクターの仕事内容

前述の「ホームインスペクターとは?」にも記載したように、住宅を対象として建物の劣化状態や施工不具合の有無を調査する業務(ホームインスペクション)が、その主な仕事です。

新築住宅であれば、基礎工事から完成するまでの間に何回も検査する仕事や建築途中や完成時にスポットで1回のみ検査することもあります。検査回数やタイミングは依頼者の希望を聞いたり、適切なタイミングを提案したりして決定することが多いです。

中古住宅であれば、売買契約の前に劣化状態の確認を主な目的として実施することが多いです。依頼者は、買主の場合もあれば売主の場合もあります。お互いに劣化状態を把握した上で納得して売買することができるメリットがあります。

ホームインスペクターには、建物の専門家として依頼者に建物の状態などを伝えることで、安心して取引できる環境を整える役割もあります。住宅業界や消費者に役立てる仕事ですね。

また、現場で行う仕事というイメージが強いかもしれませんが、現地調査の前に図面等の資料を確認したり、調査後に報告書を作成したりとデスクワークも少なくありません。現場仕事とデスクワークで完結するものです。

ホームインスペクター資格の難易度

ホームインスペクターに関する資格にも様々なものがあります。民間資格は、一時的な資格の乱立時期もあったため、多くの組織・団体が講習や試験を行っているものの、いずれも難易度はそう高くはありません。講習と簡易な試験で取得できるものが多いです。

そして、それらの民間資格は実務に効果的でないものが多く、資格取得の必要性は高くありませんし、なくても問題なく業務を遂行することができます。ただし、資格とは別に、知識や経験、整備されたマニュアルが必要です。

安易に目指すべき職業ではない

誤解してはいけないこととして、建築に関する基礎知識や経験がない人には難しいということと、資格を取得しても責任あるホームインスペクターという仕事を適切にこなすことは困難ですから、安易に目指すべきものでもないでしょう。

建物の作り手としての経験も大事なことから、建築業界での経験(できれば、建築士として設計や監理の経験)を積んでいる人が目指す方が、業界や社会に役立てると言えます。

有効な2つの資格

ホームインスペクション(住宅診断)の関連資格のなかで最も有効で、且つ必要なものは、以下の2点です。

  • 建築士
  • 既存住宅状況調査技術者

建築士は、誰もが聞いたことのある国家資格です。一級建築士や二級建築士の資格です。

ホームインスペクションを行うには、建築に関わる知識と設計監理の業務経験が必須であるため、建築士の資格は必須だと考えておきましょう。

もう1つの既存住宅状況調査技術者は、中古住宅のホームインスペクションを行うには必須となっているものです。この既存住宅状況調査技術者の講習については、国土交通省告示第81号が根拠となっており、同82号(2023年4月1日に改正したものが施行された)には調査方法基準も定められています。

既存住宅状況調査技術者は、建築士でなければ受講することもできません。つまり、ホームインスペクション(住宅診断)をするのであれば、建築士であることは必須だと国交省が決めているということでもあります。

建築士でなくても取得できてしまう民間資格とは異なる点であり、重要な違いでもあるでしょう。

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