ホームインスペクション(住宅診断)の指摘は建物外部に多い

一戸建て住宅のホームインスペクション(住宅診断)と言えば、どのような調査シーンを思い浮かべますか?

床や壁の傾きを計測している様子や床下へ潜っていくイメージが強い人も多いと思います。事実、そういった調査もホームインスペクションの大事な調査項目の1つです。一方で新築住宅の施工不良にしても中古住宅の著しい劣化にしても、建物の外部で見つかる指摘事項が多いという事実をご存知でしょうか?

住まい探しをする人は、物件の見学へ行ったときには、ぜひ建物外部についても細かく確認してみてください。よくある指摘事項を紹介しておきますので、参考にして頂くとよいでしょう。

建物外部でよくある指摘事項

それでは、実際に建物の外部でよく見つかることのある指摘事項を紹介していきます。可能な範囲で参考となる写真でそれぞれの症状もお見せします。

基礎のひび割れ(構造クラック)

基礎のひび割れ

基礎のひび割れは本当によくある指摘事項ですが、構造耐力に影響がない軽微なひび割れ(ヘアークラック)については、さほど気にする必要はありません。注意したいのは、構造耐力に影響が考えられるひび割れ(構造クラック)です。

中古住宅だけではなく、新築住宅でも構造クラックが見つかることがあるので、思い込みで処理しないようにしましょう。

外壁材の継ぎ目のひび割れ・破断

外壁材の継ぎ目のひび割れ・劣化

外壁材、たとえばサイディングの継ぎ目に防水性能のあるシーリングを施工することが多いですが、このシーリングの施工不良やひび割れ、破断が確認されることがよくあります。

写真のケースでは、シーリングの劣化が進んでひび割れてきているのがわかります。

この症状だけで直ちに雨漏りするわけではないものの、放置しておくと雨漏りしてしまうリスクのあるものですので、早期の補修が必要です。外壁の全てを細かくチェックするのは難しいとは思いますが、目の届くところは確認しておきたいものです。

サッシ周りのシーリングのひび割れ・破断

サッシ(窓)の周囲(外壁との取り合い部分)にもシーリングを施工することが多いですが、これも施工不良やひび割れ、破断が確認されることがよくあります。2階以上のサッシ周りは細かく確認できませんが、せめて1階だけでも確認しておきましょう。

1階のサッシ周りでシーリングに指摘事項が見つかった場合は、2階以上にも同様の症状がありうると考えて、対応を検討しましょう。

配管等の貫通部のシーリングの施工漏れ・施工不良

配管周りの隙間

外壁には、給排水管やダクトなどが貫通している部分がある住宅も多いです。そういった配管等の貫通部分の周りも雨漏りの原因になることが多い箇所なので丁寧に見ておきたいものです。この部分のシーリングも施工不良やひび割れ、破断が確認されることがよくあります。

写真のようにシーリングがなく、隙間がはっきりと目立つケースもあります。

バルコニーの笠木と外壁の取り合いのシーリングのひび割れ・破断

バルコニーは、雨漏りの発生原因となることが多い箇所です。特に、手すり壁の笠木と外壁の取り合い部分の施工不良やシーリングの劣化は大きな問題になることが多いので、よく見ておきましょう。

笠木と外壁の取り合い

バルコニーの保護層のひび割れ

建物構造と一体化しているバルコニーの床周りは、防水性能が大事です。バルコニーの保護層はトップコートになっていることが多くみられますが、これがひび割れていると雨漏りのリスクが考えられます。稀に新築でも何かを落としたのか、保護層が切れてしまっているケースも見つかっています。

軒裏の漏水跡

軒裏もよく見ておくべき箇所です。軒裏にひび割れが生じているケースもありますが、なかには水染みが見つかることもあります。つまり、雨漏りの疑いですね。軒裏内部へ浸入した雨水が室内側へ影響していることもあります。

建物外部をよく見ている方でも軒裏までは注意深く観察していないことがありますので、注意してください。

軒裏の染み

塀・フェンスのぐらつき

建物外部では、建物本体を確認するだけではなく、外構についても可能な限りチェックしておきましょう。外構でよくある指摘事項としては、塀やフェンスのぐらつきです。

軽く押しただけでぐらつくような塀は危険です。その傍にお子さんがいたとしたらと考えると怖いですね。フェンスにもたれかかって倒れても危険です。軽く押してみて問題ないか確認しましょう。

アネストの住宅インスペクション

外観の見た目だけではなく構造・防水面で重要

多くの住宅についてホームインスペクション(住宅診断)をしてきた経験から、建物の外部でよく見つかる指摘事項を紹介してきましたが、いかがでしょうか。

多少の時間をかけて注意深く観察すれば、建築の専門知識がなくても気づくことのできる症状も多いですから、物件見学時に確認してみましょう。心配される症状があれば、専門家に相談するのもよいでしょう。先に気になる箇所を把握しておけば、ホームインスペクション(住宅診断)を有効に活用し相談することもできます。

もちろん、建物外部だけではなく、室内や床下・屋根裏も重要ではありますが、外観は見た目だけの問題だと決めつけず、構造や防水性能に関係する重要項目も多いことを理解しておきましょう。

関連記事

関連サービス

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。