ホームインスペクション(住宅診断)の流れ

住宅購入や購入後・引渡し前などに第三者のホームインスペクション(住宅診断)を依頼するとき、はじめての利用であるためにどのように話を進めていけばよいのか迷うことがあるでしょう。家を買うことは何度もないですから、ホームインスペクションを利用することも何度もあるわけではありません。

ここでは、慣れないホームインスペクションを依頼する流れを依頼するまでや依頼した後のこと、そして現地で実際に調査するときの流れも含めて解説します。依頼前はもちろんですが、取引を進めていくなかでわからなくなったときに読んでも役立つでしょう。

ホームインスペクション(住宅診断)を依頼・利用する流れ

最初に紹介するのは、ホームインスペクション(住宅診断)を依頼する前後の流れです。詳細を理解するため、少し細かく説明しますので、依頼するまでと依頼した後にわけて解説しています。もし、ホームインスペクションというものを詳しく知らない方は、「ホームインスペクションとは?」もご覧ください。

ホームインスペクションを依頼するまでの流れ

ホームインスペクション(住宅診断)のことを考え始めてから、依頼するまでの流れから説明します。順序通りにリスト化すると以下の流れになります。

  1. ホームインスペクション業者のピックアップ
  2. ホームインスペクション業者へ費用や空き状況を問合せ
  3. ホームインスペクション業者を絞る
  4. 絞った業者・売主等と日程調整
  5. ホームインスペクションを申し込み
  6. 必要書類を送付
  7. 待ち合わせ場所の確認
  8. ホームインスペクションを実行

以上のなかで、いくつか補足があるので解説しておきます。

業者選び

ホームインスペクション業者のピックアップについては、1社に絞らず2~3社ほど検討した方がよいでしょう。

複数の業者に問い合わせて見積り金額や希望日の空き状況を確認するのと同時に、必ずどのような報告書が提出されるのかサンプルで確認しておきましょう。通常ならば、報告書のサンプルは各社のHPに掲示されているはずです。掲示されていない場合は、提示するようお願いしてください。

後に証拠として残る大事な報告書ですから、よく吟味しなければなりません。購入後や入居後のトラブルの差異にもこの報告書の内容が命運を握ることも少なくありませんので重視しましょう。

注意点は安い価格設定にしていて、後からリフォーム工事等の影響をしてくる業者が増えていることです。不要な工事を営業することが多発しているのですが、そういった工事を受注するために問題ないことを問題ある症状だと大げさに説明したり、虚偽の説明をしたりすることがあります。

見極めの仕方は、リフォーム工事をしている会社かどうか、そういった会社を紹介しようとする会社かどうかです。「何か見つかったときに、補修もしてもらえるか?または補修する業者を紹介してもらえるか?」と質問し、「Yes」と回答されたときには、このリスクがあるとわかります。

逆に、本当は補修等の対応が必要な症状なのに、それをきちんと報告してくれない業者もあります。それは、購入してもらうことが目的になっているので、売りたい人、つまり不動産業者や売主が紹介する業者に多いです。不動産業者や売主が事前に実施済みのホームインスペクションもこの種のものが多いです。

ホームインスペクション業者選びは簡単ではないですが、工事や販売を目的としていない会社であるかどうか見極めることが重要なポイントになります。

業者選びについては、ホームインスペクション業者の選び方も参考になるのでご覧ください。インスペクションの受け入れを拒否されることが心配な方は、ホームインスペクション(住宅診断)の拒否と対策をご覧ください。

日程調整

通常、正式な申し込みは日時が決まるまで受付してもらえません。日程未定で受付しても日時調整できなければ意味がないからです。日程調整は、依頼者とホームインスペクション業者だけではなく、売主や不動産業者とも調整が必要です。

必要書類

必要とされる書類・資料は、ホームインスペクション業者によって多少の相違はありますが、基本的には間取り図があれば診断自体は実施可能なはずです。但し、同時に耐震診断を依頼する場合などは他にも必要なものがあるので、HPで確認するか直接質問してみるとよいでしょう。

当日、現場へ持参するよりも前もって送付しておき、間取りプランを確認しておいてもらった方が現場でスムーズに対応してもらえます。

待ち合わせ場所

担当のホームインスペクター(アネストなら一級建築士が必ず担当する)とは、現場前で待ち合わせすることが一般的です。事前に業者に確認しておいた方がよいでしょう。アネストは、担当者から前もって依頼者へ連絡して待ち合わせ場所や時間を確認しあうので、待ち合わせで困ることもありません。

依頼後の流れ

ホームインスペクションを依頼した後の流れ

次に、現場でホームインスペクション(住宅診断)を実施した後の流れを説明します。実施すれば終わりではないですから、後の流れも把握しておきましょう。

  1. 調査結果(報告書)を受領
  2. 料金の支払い
  3. 質疑応答
  4. アフターサービス

以上が現場で調査を完了した後の流れですが、これについても補足説明しておきます。

調査結果(報告書)

ホームインスペクションの当日にその場で説明を受けられることが一般的ですが、業者によっては現地説明なしで報告書を待つようにと言われることがあります。しかし、購入時に利用する場合、報告書を悠長に待っていられないことも多いですから、口頭で説明を受けられる業者を選ぶようにしましょう。

もちろん、依頼者自身が現地に立ち会うことを前提に考えることになります。

また、当日、現場で簡単なチェックシートを手渡すことで報告とするケースもありますが、詳細が不明でほとんど役立ちません。必ず、口頭できちんと説明を受けることや後日送付される詳細な報告書を重視してください。

なお、報告される調査する項目は住宅診断(ホームインスペクション)の具体的な調査項目を参考にしてください。

料金の支払い

多くの場合、料金は後払いになっています。報告書の内容を確認してから支払う方が安心でしょう。

質疑応答

報告書を見てからホームインスペクターに質問したいことが生じることはよくあることです。また、対象物件を購入して入居した後に気になることがあれば、それについて質問・相談したいこともあります。そういったことにきちんと回答やアドバイスしてもらえる業者ならば、積極的に質問するとよいでしょう。

もちろん、アネストでは、こういったフォローは無償で対応しています。このときにも、詳細な報告書がないとわかりづらいことが多いので、最初の業者選びでは報告書の質を重視しなければなりません。よく比較しましょう。

ホームインスペクション(住宅診断)の当日の流れ

ホームインスペクション現場の流れ

最後にホームインスペクション(住宅診断)を行う当日の現場における流れを説明します。初めての利用であれば、現場でどのように進めていくのかイメージすることは難しいですから、ここを読んで頭のなかで少しシミュレーションしておくと当日を安心して迎えられるでしょう。

  1. 待ち合わせ場所で集合とご挨拶
  2. 当日の流れを説明・質疑応答
  3. 建物外部から調査開始
  4. 建物内部を調査開始
  5. 床下・屋根裏の調査を開始
  6. 調査結果を説明
  7. 質疑応答
  8. 解散

以上が当日の一般的な流れです。調査の順序は状況によって多少は前後することがありますが、基本的にこのような流れになることが多いです。この当日の流れについても補足しておきます。

設備機器等の使用・取扱い説明

新築住宅の場合は、売主や建築業者から設備機器等の使用・取扱い説明が調査開始前や調査完了後に入ることがあります。売主等が、調査の冒頭から立ち会う場合は最初に行うこともありますが、途中から合流するパターンの場合には最後に行うことが多いです。

しかし、この説明は既に契約済みの物件の場合に限られ、契約前に行うホームインスペクションの際は行われることはほとんどありません。契約後、引渡し前のタイミングで改めて説明があることでしょう。

当日の流れ・進め方の説明

担当するホームインスペクターから、調査の進め方について簡単に説明があります。とはいえ、現場の状況は流動的な部分もあるため、説明通りに進まないこともあります。たとえば、立ち会っている不動産業者や売主からの要望等によっては、それに配慮して調査の順序を変えるといったこともあります。

特に、売主が居住中である中古住宅では、売主やご家族の都合で先に調査を終えてほしい部屋があることもあります。臨機応変に対処すべき時があることも理解しておきましょう。

調査の順序

一般的には建物の外部から調査を始めることが多いです。外部の基礎や外壁などを調査してから、室内の調査へ移っていきます。アネストでは、外部調査の際に外構(塀やフェンスなど)も調査対象に含めているサービスが多いため、外部調査の時間が少し長くかかります(購入後、外構が問題になって売主とトラブルになることが多いため外構も調査した方がよい)。

調査結果の説明と質疑応答

調査結果は、一通りの調査を終えたところで説明をするものですが、実際に対象物を見ながら説明を聞いた方が依頼者にとってわかりやすいため、調査途中でいろいろな説明をすることも多いです。ですから、ある程度はホームインスペクターと一緒に見て回る方とメリットがあるので、そのように考えておくことをお奨めします。

但し、最後にまとめて説明を受けることもできますから、これに固執する必要はありません。できれば、調査時間中は一緒にずっと立ち会うことが好ましいですが、どうしても用事があって途中で抜けたいときなどは事前に相談するとよいでしょう。

そして、説明を聞き終えた後は積極的にわからないことを質問してください。ホームインスペクターが丁寧に答えてくれるはずです。

ホームインスペクション(住宅診断)の流れについて、依頼する前と依頼した後、そして調査当日に分けて解説してきましたたが、概ねのイメージは掴めたでしょうか。これでもわからない点があれば、ホームインスペクション業者に気軽に質問するとよいでしょう。

アフター相談時の流れ

ホームインスペクション(住宅診断)を利用した後、しばらく経過してから、建物のことについて診断を担当した専門家に相談したいこと、質問したいことが生じることがあります。

アネストでは、そういった方に対して、調査完了後も相談に対応しています。同じように対応するホームインスペクション業者も多いでしょう。そういったアフターの相談の一般的な流れを解説します。

  1. 相談したい箇所・部位・症状を写真撮影
  2. E-mailで写真と相談・質問内容を送信
  3. ホームインスペクション業者から回答

相談内容によっては、ホームインスペクション業者から回答の前に質問などが入ることもあります。また、現地確認が必要な場合には、別途費用がかかることもあります。

もちろん、どのようなことでも回答をもらえるわけではありませんが、まずは、アフター相談の対象となることかどうか、気軽に聞いてみるとよいでしょう。

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。