点検口

住宅を購入したり、新築したりするときに、買主が必ず確認しておくべき大事なチェックポイントの1つが点検口です。購入するときにも、将来のメンテナンスのときにも大変重要な役割を果たす点検口について解説するので、購入する前に理解しておきましょう。

契約する前に点検口の有無をチェック

新築住宅でも中古住宅でも、住宅の見学をする際に必ず確認して欲しいのは点検口の有無です。点検口は、その名の通り「点検」が主な目的です。

住宅に何か問題が生じたとき、例えば水漏れや雨漏り、建物の傾きなどがあれば、点検口から床下や屋根裏の状態を確認しなければなりません。

床下や屋根裏に異常を感じた際に、すぐに点検できる住宅とできない住宅、どちらが良いかは明白ですね。

対象物件が新築で建物が完成している建売住宅であれば、物件見学時に点検口の有無を見て確認することができます。これは中古住宅でも同じことですね。

以下では、点検口があることの多い位置や特徴を紹介します。

屋根裏の点検口

屋根裏を確認するための点検口なら、クローゼットや押し入れといった収納の天井に設置されていることが多いですが、物件によっては廊下や居室の天井に設置されていることもあります。各スペースで天井を観察して点検口の有無を確認しましょう。

築年数が古い中古住宅の場合、点検口としては設けていないものの、収納内の天井板を手で押すと横へずらすことができて、そこから屋根裏を点検できることもあります。押し入れの天袋の天井から確認できることもありますが、体の入れ方が難しくて大変なときもあります。

中古住宅で売主の荷物がたくさんあるときには、点検口があっても開閉したり、覗き込んだりすることが難しいこともあります。そのときは、購入後のできる限り早いタイミングで確認するようにしましょう。

床下の点検口

床下の点検口は、洗面室にあることが多いですが、物件によってはクローゼットなどの収納の床に設置されていることもあります。また、新築や築浅の中古住宅では、キッチンなど床下収納庫を設けていて、その収納が点検口を兼ねていることが多いです。

床下収納の蓋をあけて、その内部の収納ボックスを取り外すと床下を点検できるわけです。対象物件が中古住宅で荷物がある場合は、売主の了解を得てから収納ボックスを外して確認するとよいでしょう。

ユニットバスの点検口

建売住宅やマンションの浴室は、ほぼ全てがユニットバスが採用されています。注文住宅でも多くの場合はユニットバスですが、一部では浴室へのこだわりからコストをかけて浴室を現場施工することがあります。これは在来工法と言います。

浴室がユニットバスである場合、その天井には点検口が付いていますので、その内部を覗いて確認することができます。しかし、ユニットバスの天井裏は、人が体重をかけられるだけの強度がなく、一般的には天井裏へ入っていくことはできません。

また、浴室が在来工法である場合、天井に点検口がないことが多いです。天井裏にダクトがあることから、その内部はメンテナンスや点検のために確認できる方がよいのですが、先のことまで考えずに計画された家があるのも事実です。

不動産会社に聞く

点検口の有無は現地で目視確認するか、図面で確認する方法があります。新築住宅なら、平面図に点検口の位置が記載されていることが多いですが、販売資料になっている簡易な間取り図には記載されていないことが多いです。

中古住宅なら、資料で点検口の有無や位置を確認できないことは非常に多いです。

そこで、現地や図面から点検口の有無を確認できない場合には、売主や仲介業者(不動産会社)に質問すると良いでしょう。そして、実際に説明を受けたとおり、現地に点検口があるか確認してください。

売主が居住中の中古住宅を内見したとき、売主へ遠慮があり、十分に見学時間をとれず、点検口の有無を確認できなかったという声を聞くことがあります。大事なことですから、あまり遠慮せずに確認するよう心掛けましょう。

中古住宅の点検口

中古住宅の場合、建物の築年数が古い家ほど点検口がない確率が高いようです。

しかし、無いと思っていたのに、実は気付いていないところにあったというケースや、1階の和室の畳下の板(下地材)をはずして確認できることもあります。

売主から無いと聞いていたのに、住宅診断(ホームインスペクション)をしていると、点検できる箇所が見つかることもあるのです。

一級建築士

畳下の板は、釘やビスで止められていることが多いですが、一部では止められておらず、そのまま手で外せることもあります。

点検口内部の写真を撮る

物件の内見時に点検口を見つけられた場合、できれば開けて中を覗き込んでください。

点検口の蓋をビス留めしていて、すぐに開けられないときや、覗いてみると狭すぎて進入できないときがあります。こういうときは、床下や屋根裏を充分に点検できない、もしくは全く点検できない可能性があります。

点検口をあけて内部の写真を撮っておけば、住宅診断(ホームインスペクション)の依頼時に、内部へ進入できそうかどうか確認してもらえることもあるので、撮影しておくとよいでしょう。

撮影する際は、何か特定の部位を拡大したものではなく、以下の写真のように、全体を写したものの方が後で役立ちやすいです。方向を変えて2~3枚撮っておくとよいでしょう。

点検口から見た床下
点検口から見た床下

点検口の無い住宅に要注意

全ての住宅には当然に点検口があるものだと思われている人もいますが、現実はそうではありません。点検口のない住宅は存在していますし、新築住宅でも点検口がない住宅はあります。

冒頭で記載したように、点検口は住宅のメンテナンスや点検のために設けられるものですから、これがないということは、大事なところを点検しづらい家だということになります。

たとえば、新築住宅でありながら、点検口がないようであれば、そこに住む人への配慮の足りない住宅と言えます。

配慮不足の設計者や分譲業者が建てた家となれば、それを購入するべきかどうか、少し慎重に検討した方が良いと言えそうです。

一級建築士

点検口を付けない家があるなんて驚いたという声を聞くこともありますが、驚く方が正しいのではないでしょうか。業界内の意識変革が必要ですね。

住宅診断(ホームインスペクション)で点検口の内部を確認

点検口は、もしもの際の対応に必要なものであり、常日頃から住宅の点検をする際にも必要なものです。

第三者に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼したとき、点検口があれば、そこから床下や屋根裏の状態を確認してもらえます。そして、床下や屋根裏では、施工不具合や著しい劣化事象が見つかることが多いため、調査の必要性は高いスペースだと言えます。

すぐに確認できないリスク

以前に、雨漏りが疑われるので屋根裏を確認したいが、点検口がないので天井の一部を解体しないといけないことがありました。費用もかかることなので、見積りをとって予算を検討しているうちに台風が来てしまい、雨漏り被害が拡大してしまったことがありました。

やはり点検口は大事ですね。

構造体や断熱材も確認できる

点検口があれば、そこから床下や屋根裏を確認することで、土台・大引きなどの床組みや柱・梁などの小屋組みを確認することができます。これらは建物の主要な構造部分であり、確認しておきたい大事な構造体です。

また、断熱材を確認することもできます。住宅の床下や屋根裏には、断熱材が施工されており(古い住宅を除く)、その施工状態や劣化状態を確認することは、その住宅の断熱性・エネルギー効率や生活するうえでの快適さをチェックすることと同じです。

屋根裏で雨漏りを確認したり、床下で漏水を確認したりすることもできますが、上のようなメリットもあるので、点検口の重要性がわかるでしょう。

新築住宅であっても、中古住宅であっても、必ず点検口の有無を確認し、実際に異常がないかチェックしておきましょう。購入前に確認することをお勧めしますが、購入済みの人なら、できるだけ早めに確認するとよいでしょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。