住宅の10年保証と10年点検

新築住宅を購入したり、新築したりすると、その引き渡し日より10年間は、売主または建築会社から建物の保証を受けられます。また、住宅購入後、5年や10年ごとに専門家による点検を受けるべきだとの意見もよく耳にします。

一方で、住宅を購入するときには、施工品質(新築の場合)や劣化状態(中古の場合)など建物についていろいろな心配をし、第三者のホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)を利用するなどするものですが、購入後には特に建物について何も考えなくなる人も多いという現実があります。

いつの間にか、住宅の10年保証や定期的な点検のことは忘れがちですね。

新築住宅であっても中古住宅であっても、購入後のメンテナンスの仕方次第で建物の長持ち度が大きく異なることを知り、たまには点検することが必要です。そして、その点検で保証対象となる不具合が見つかれば、新築業者に対して補修を要求する対応も必要です。

購入した住宅に長く住み続けるならば、よい状態で建物を長持ちさせるためにも、購入すれば終わりではなく点検・修繕といったことを考えるようにしましょう。

一般的に、住宅の点検は5年や10年ごとに実施すべきだと言われています。住宅を長期間、良好に保つための基準をクリアして認定を受ける長期優良住宅でも少なくとも10年ごとに点検する必要があるとされています。

最低でも10年ごとの点検が必要ですが、できれば5年ごとに住宅点検を実施するように心がけましょう。

このコラムでは、住宅の10年保証の内容とその大切さ、そして点検の重要性について解説しますので、新築住宅を購入して5~10年を経過する人は、しっかり理解しておいてください。また、中古住宅を購入した人にもその後の点検に関して役立つ情報を紹介します。

新築住宅を購入したときの10年保証

新築住宅を買えば10年保証が付いていると聞いたことのある人は、住宅購入者なら非常に多いはずです。契約する前に営業マンから説明を受けたものの、あまり理解していない人もいれば、もう覚えていないという人も少なくないでしょう。

そこで、まずは、新築住宅を購入した人を対象に、10年保証の基本的なことを解説します。

新築住宅の10年保証とは?

新築住宅における10年保証は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(2000年に施行、第94条と第95条)が根拠となっており、建物の基本構造部分について完成引き渡しから10年間の契約不適合責任(以前は、瑕疵担保責任という名称だった)を住宅供給者に対して義務化しています。

一級建築士

瑕疵担保責任は、2020年4月に施行された改正後の民法で契約不適合責任という名称に変わりました。

建築基準法で10年保証を義務付けていると勘違いしている人もいますが、正しくは住宅の品質確保の促進等に関する法律(略して品確法と呼ばれることも多い)です。

注文建築の家なら住宅品確法の94条

住宅の品質確保の促進等に関する法律の第94条は、注文建築の家が該当するものです。以下がその引用文です。

(住宅の新築工事の請負人の瑕疵かし担保責任)
第九十四条 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百十五条、第五百四十一条及び第五百四十二条並びに同法第五百五十九条において準用する同法第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
2 前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。
3 第一項の場合における民法第六百三十七条の規定の適用については、同条第一項中「前条本文に規定する」とあるのは「請負人が住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十四条第一項に規定する瑕疵がある目的物を注文者に引き渡した」と、同項及び同条第二項中「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。

住宅の品質確保の促進等に関する法律 第94条

条文は慣れないと読みづらいですよね。

これを簡単に言い直すと、第94条の1項では、請負人(ハウスメーカーや工務店のこと)は、注文者(施主のこと)に引き渡し時から10年間、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、契約に不適合な事象の責任を負うこととなっています。つまり、構造耐力や雨漏りのような施工不具合について10年間、保証するということです。

同条2項では、これに反する特約で注文者に不利なものは無効としています。たとえば、、特約で保証期間を10年より短くすることや、雨漏りを対象外とする内容を付けたとしても、その特約は無効になるということです。消費者にとっては安心材料ですね。

建売住宅なら住宅品確法の95条

同法の第95条は、分譲住宅(建売住宅)が対象となりますが、以下がその引用文です。

(新築住宅の売主の瑕疵かし担保責任)
第九十五条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法第四百十五条、第五百四十一条、第五百四十二条、第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
2 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
3 第一項の場合における民法第五百六十六条の規定の適用については、同条中「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十五条第一項に規定する瑕疵がある」と、「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。

住宅の品質確保の促進等に関する法律 第95条

94条と似ていますが、建売住宅を想定した言葉になっているだけで、保証内容・対象・年数は同じです。また、買主に不利な特約が無効になることも同じです。

10年保証の対象範囲

新築住宅の10保証の対象となっているのは、建物の基本構造部分だと述べましたが、それは、基礎や柱、梁など住宅の構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分のことです。つまり、構造耐力上の瑕疵と雨漏りが10年保証の対象ということです。

対象部分詳細項目
構造耐力上主要な部分基礎・壁・柱・小屋組・土台・斜材(筋交いなど)・床版・屋根版・横架材などの構造耐力上主要な部分
雨水の浸入を防止する部分屋根・外壁などからの雨漏りに関する部分
10年保証の対象部分

注意点としては、構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除くという点です。たとえば、軽微な表面の基礎のひび割れで、構造耐力に影響がないものは保証の対象にならないということです。

保証責任のある住宅供給者

10年間の保証、つまり契約不適合責任を負う住宅供給者とは、建売住宅における売主や注文建築の家を建てたハウスメーカー・工務店(建築会社)です。該当する不具合が見つかれば、売主やハウスメーカーへ補修等を請求できるということです。

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新築住宅かし保険と供託

住宅の品質確保の促進等に関する法律では、前述のとおり、住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、住宅を供給する事業者に対して引き渡しから10年間の保証が義務付けられています。

しかし、その事業者が倒産するなどして、保証義務を履行できないケースもあります。それでは、保証義務といっても意味をなさないことになってしまいます。そこで、それを担保するため(補修費用等の資力を確保する措置をとるため)、新築住宅かし保険に加入するか、または供託することが、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)によって義務付けられました。

これは、平成21年10月以降の引き渡しの住宅が対象となっています。

新築住宅かし保険は、国交大臣指定の保険法人の保険のことで、一部の大手ハウスメーカー等を除く、多くの事業者がこれを利用しています。一部の大手企業は、法務局などへの供託によって資力確保をしています。

供託とは、あらかじめ保証金を法務局などに預けておく制度ですが、大金が必要なために中小規模の会社は供託ではなく、保険の利用を選んでいます。

10年超の保証もある

10年間の保証はあくまでも義務化された最低ラインであり、それ以上の保証をすることは、各不動産会社やハウスメーカーの判断で可能です。

20年、30年、50年の保証をする会社もある

実際に、20年や30年、50年などの保証を付けているケースもあります。特に、大手ハウスメーカーでは、保証期間・内容の充実を図っていることが多く、10年超の保証期間は当たり前のようになってきました。

保証の対象範囲も拡大することがある

また、保証の対象範囲も義務化されている「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」だけではなく、範囲を拡大していることが多くなっています。

これは、大手に限らず、中小規模の建築会社や不動産会社でも見られる傾向です。

ただし、義務化されている「基本構造部分」以外の部分については、多くの不動産会社・ハウスメーカー・工務店が、1年や2年間の保証としていて、10年間の保証にはなっていません。

義務化の対象範囲ですから、10年より短くすることに法的な問題はなく、住宅業界全体としても1年や2年というものが多いです(一部の項目は5年とするということもあります)。

以上のとおり、保証範囲は個々の条件によるものですから、基本構造部分以外の不具合があっても簡単にあきらめる必要はありません。

売買契約(注文建築なら建築工事請負契約)を締結する前に、保証内容と期間を確認しておくことをおすすめしますが、既に契約済みの人で保証内容等をきちんと把握していないなら、早めに不動産会社等に確認してください。

新築住宅の定期的な点検のすすめ

新築住宅を購入したり新築したりすると、引き渡し日より10年間の保証があることは理解できたことでしょう。次に、定期的な点検について解説します

10年保証が切れる前の点検が大事

新築住宅の10年保証の期間が切れる前は、住宅点検をする1つの機会となっており、第三者の専門家にホームインスペクション(住宅の点検・建物調査)してもらう人が増えています。保証対象となる範囲(主要な構造部分や雨漏りに関する部分)において瑕疵があるならば、売主等へ補修等を請求することができるからです。

仮に保証対象外の範囲において問題があった場合には、早期に自ら補修等をすることで住宅の寿命を保つことができるため、保証対象範囲に限らず建物全体を点検してもらうことが一般的です。

基本的には、保証期間の10年を過ぎてから補修請求しても対応してもらえないため、保証期間が切れる前にしっかり点検しておくことをお勧めします。

1年・5年などの定期点検も大事

新築の場合、売主や工務店、ハウスメーカーによる定期点検があることが多いです。

新築後、半年・1年・2年・5年・10年などの時期を決めて点検を行うもので、見つかった不具合などの問題について内容によっては売主等の負担で補修対応したり、買主(購入者)の負担で対応したりします。

全ての業者がこのような定期点検をするわけではないため、点検の有無を知らない人は、売主やハウスメーカーに確認してください。

点検は第三者性が重要

売主等による住宅点検の場合、どうしても利害関係が強いため、第三者の点検を利用するという方法も検討する価値があります。

本来ならば売主負担で補修すべきことを負担したくないために、見つけた問題点(施工上の不具合など)を適切に報告しなかったり、売主等に責任がないように報告内容を曲げてしまったりする事例が確認されています。

ときには、問題ないことを問題ある事象のように説明して買主(購入者)に対して補修費用を請求して不当に利益を上げる事例もあります。これから新築があまり売れなくなっていく(人口減の影響が大きい)ことから、利益を求めるあまり同様の事例は急速に増えていくでしょう。

とはいえ、半年・1年・2年・5年・10年の住宅点検すべてにおいて第三者に診てもらう必要はありません。新築で購入したときに(引渡しを受けるとき)に第三者に診てもらってない人であれば、遅くとも2年以内に点検してもらい、大きな問題がなければ10年経過前に再度点検してもらうとよいでしょう。

新築で購入したときに(引渡しを受けるとき)に第三者に診てもらっているならば、5年か10年で診てもらうとよいでしょう。

中古住宅を購入したときの点検

中古住宅を購入した人も当然ながら住宅の点検を考えなければなりません。購入時に第三者のホームインスペクション(住宅診断・住宅検査)を利用していないならば、できる限り早期に依頼した方がよいでしょう。

お勧めのタイミングは、購入前ですが、その次のお勧めは、購入後(引渡し後)・引っ越し前です。家財道具がなく診断しやすいからです。

既に入居しているなら、できる限り早めがよいでしょう。

重大な瑕疵や著しい劣化に気づかずに暮らしている可能性もありますので、一度、点検を真剣に考えてみてください。

住宅の瑕疵や著しい劣化への対処は、人の体と同じで、「早期発見・早期対処」が望ましいです。発見や対処が遅れるほどに、劣化や腐朽が進行し被害範囲も拡大していきます。

早期に補修していれば10~20万円で済んだはずの補修工事なのに、対応が遅れたために200~300万円もかかるということもありうるのです。補修等の工事が複雑で困難なものとなれば、費用負担だけの問題でなくなることもあります。

最初に住宅点検をした後は、5年か10年ごとに点検することを心がけましょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。