工務店・設計者選びの注意点

新築住宅のホームインスペクション(住宅診断)の依頼をされる人から、住宅の新築に関する様々な後悔話を聞く機会があります。

「今さら相談しても遅いけど」という前置きがあることも多いですが、実際に後戻りできない状況になってから、せめて建物の施工不具合だけでも無くしたい、あるいは減らしたいとの思いでホームインスペクションの問合せをされているようです。

今回は、ホームインスペクションを行う立場で伺ってきた依頼者の後悔話を参考に、家を新築するときの工務店や設計者を選ぶときに注意すべき点を紹介します。

アネストの住宅インスペクション

契約前に担当者への不満が大きいなら契約中止すべき

工務店(ハウスメーカーを含む)と建築工事請負契約を締結する前の時点で、既に「この担当者で大丈夫かなぁ」と心配していたものの、その工務店が提示する建築工事費の価格に大きな魅力を感じて、つまり安さを優先して契約してしまってから後悔している人の話は本当に多いです。

建築プランの計画過程や建築工事途中、さらには引渡し後のアフターフォローの段階でも、担当者の質は施主にとっての影響が非常に大きいです。対応の善し悪しだけではなく、互いに合うか合わないかというフィーリングの点も少なからず影響することもあります。

ずっとストレスを抱えながら、家の計画を進めていき、最後は疲れ果ててしまい後悔するかもしれません。ときには、面倒になって大事な点で本来なら必要ない妥協をしてしまうこともありえます。

担当者に関して見るべき点は、

  • レスポンスが良いか(早いか)
  • 曖昧な返答をしないか
  • 知らないことを知らないと言えるか
  • 勤続期間が短すぎないか

といった項目です。

担当者は大事ですから、工務店選びの1つの要素に入れるべきでしょう。不満が小さくないなら、契約を中止して他の業者を検討してください。もしくは、担当者の変更を丁寧にお願いするのも1つの方法です。

営業担当も設計者も大事

設計者とコミュニケーションが取りづらいなら契約中止すべき

実際に住宅の設計を行う設計者(資格名で言えば建築士)も非常に重要です。

最初は営業担当を介してプランに関する要望を伝えていたとしても、少し話が進んだ段階で設計者と直接打合せする機会も出てくるでしょう。そのとき、設計者によってはコミュニケーションが得意ではなく、意思疎通が十分にできない、もしくは意思疎通できているのかわかりづらいという問題に遭遇することがあります。

営業担当が良ければ、何とか通訳のように頑張ってもらえることもありますが、それだけでは心許ないですね。

ハウスメーカーによっては、契約するまでは設計者と会えないと言われてしまうこともありますが、大事なマイホームの設計を託すわけですから、先に簡単な面談だけでもお願いしてみましょう。

コミュニケーションの問題だけではなく、以下のような設計者にも注意しましょう。

  • 施主の要望をまとめただけのプランではないか
  • 勤続期間が短すぎないか

ラフプランも出さないで契約を急かす業者に要注意

契約前にラフプランを確認

工務店や設計者と契約を締結するタイミングは、実は難しい問題です。

施主の要望に対して提示されるプランは、検討・作成に手間・時間、つまりコストがかかるわけですから、工務店等は早めに契約または仮契約を締結しようとします。契約してしまうと、その時点で手付金(キャンセルすると返金されないことが多い)が生じることが多いため、その時点でどの業者に発注するか判断しないといけません。

しかし、判断するためには、どのような住宅になるのかプランを提示してもらわないといけないですね。そこで、簡単なプラン(=ラフプラン)を提示してもらって、それを参考に比較検討することが多いです。

ところが、一部の業者では、そのラフプランも契約しないと出さないというケースもあります。いくら安くてもそれでは判断しようがないですから、そういう業者は検討対象から除外する方がよいでしょう。

建築工事請負契約は用意に締結してはいけません。もちろん、たとえ仮契約だと言われても同じです。一度契約してしまうと、それに縛られてしまうので、手付金を放棄してもよいくらいの覚悟をもてないなら(持つ必要もないですが)、せめてラフプランをいくつか出してもらい、他社とも比較検討してから取引を進めてください。

建築工事の丸投げ業者に要注意

丸投げはダメ

建築業界では、未だに受注した建築工事をそのまま別の業者へ一括して丸投げしているようなことがあります。しかし、建築工事の丸投げと言われている一括下請負は、建設業法(第22条)により禁じられています。

工事の丸投げは、発注者(=施主)との信頼関係の問題もありますが、丸投げしている業者がきちんと現場を管理・把握せず、他人任せにしてしまうことなどが要因の1つとなって、多くの施工不具合を生み出してしまうこともあり、施主にとってはリスクが小さくありません。

また、丸投げしている工務店の責任感の無さも大きな問題です。

たとえば、雨漏りなどの具体的な問題を起こした工務店の担当者が、「それは下請けがやったことだから。補修はするけど、やったのは下請けだから」と訳の分からない言い訳を言いだすことがあります。このような責任感の無さ、異常な対応こそが施工不具合の問題になっているですが、そのような業者の姿勢では改まることはないでしょう。

施主側には、工務店が一括丸投げしているかどうかわかりづらいこともあるので、「工事を他社さんにほとんど丸投げしているようなことはないですか?」と直球で聞いてみるとよいでしょう。

過去の実績は直近の5年が重要

住宅の新築工事を依頼する工務店を選ぶ際、過去の実績を重視しようと考える人は多いです。それは大事なことであるのは間違いありません。

しかし、これまでの各社の歴史のなかでの総施工棟数を確認することは、それほどまでに重要ではありません。もちろん、実績が多いことは大事なことですが、10年も20年も前の実績が多くても、その実績や経験が今では活かされていないこともあるからです。

当時と今では運営している人(経営者・責任者・下請け業者・職人など)が変わってしまっていることも多いからです。人が変わってしまうことで、技術も管理業務の品質も受け継がれていないことも少なくありません。そもそも、同じハウスメーカーの同時期の住宅でも現場によって施工品質にばらつきが見られるのも事実です。

工務店の実績について検討するときは、直近5年くらいの期間の実績について確認するようにしてください。それも年度別で確認できれば、それがよりよいでしょう。

以上、工務店や設計者を選ぶときに注意すべき点について紹介しましたが、いかがでしょうか。住宅のプラニングや価格も大事ですが、それ以外にも着目すべき点はありますので、慎重に比較検討してください。

アネストの住宅インスペクション

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。