中古マンションの既存住宅瑕疵保険の基礎知識

中古マンションを購入する際に既存住宅瑕疵保険に加入するケースが増えつつあります。徐々に、購入者や不動産業者の間で認知が進んできているようですが、まだまだ保険の基礎知識や加入することの意義などについて理解が進んでいないようでもあります。

そこで、これから中古マンションを購入する人が知っておくべき既存住宅瑕疵保険の基礎知識や加入前に知っておくべき大事なことを解説します。

既存住宅瑕疵保険は、中古住宅であれば一戸建てでもマンションでも対象となるものですが、今回の記事ではマンションに関して書いています。中古一戸建ての瑕疵保険について知りたい人は、「中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)に既存住宅瑕疵保険も?」や「既存住宅瑕疵保険付き物件の住宅診断(インスペクション)の必要性」を参照してください。

中古マンションの既存住宅瑕疵保険の基礎知識

まずは、基礎的なことから説明します。これを抑えておかないと瑕疵保険に加入すべきかどうか判断することは難しいでしょう。

既存住宅瑕疵保険とは

既存住宅瑕疵保険とは、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人(2018年2月1日時点で5社のみ)が提供する保険で、この保険に加入した中古住宅において構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分に瑕疵が確認されると保険金が支払われます。

支払われる保険金は、補修費用・調査費用・転居及び仮住まい費用です。

中古住宅を購入した後に、対象となる瑕疵が見つかったとき、保険金で補修等の対応ができることは購入者にとってメリットとなり、これによって中古住宅の流通量が増えることが期待されています。

検査に合格しなければならない

どのような物件であっても既存住宅瑕疵保険に加入できるわけではありません。所定の検査を実施して、基準に適合しなければならないのです。

リスクの高い物件にまで保険を付けていては制度が成り立たないですから当然のことですね。そして、この検査で不合格となってしまう物件も多いことも知っておきましょう。

保険の対象範囲

保険金が支払われる対象となる範囲は、建物の構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分の瑕疵です。構造耐力上主要な部分において基本耐力性能を満たさない場合や雨水の侵入を防止する部分で防水性能を満たさない場合(雨漏りした場合)が対象となります。

例えば、屋根裏で結露被害が発生したとしても、雨漏りではないために対象とはなりません。何でも対象の瑕疵として認められるわけではないことを理解すべきでしょう。

予備知識として、保険法人によっては構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分以外に給排水管などを対象とした特約を付けることも可能だということも知っておくとよいでしょう。

中古マンションの既存住宅瑕疵保険に加入する目的

中古マンションを購入する人が、この既存住宅瑕疵保険に加入するのは、万一のときの補修等の費用負担を保険金で賄うためですが、それ以外に減税目的という人も多いです。

住宅ローンを利用して築25年超のマンションを購入するとき、既存住宅瑕疵保険に加入することで住宅ローン減税を受けることができるのです(例えば、会社員ならば給与から差し引かれる所得税を減らすことができる)。

金銭的なメリットがあることから、減税目的で保険加入を希望する人は多いのです。ちなみに、登録免許税や不動産取得税の軽減などのメリットもありますから、購入者は検討すべきことです。

中古マンションの瑕疵保険に加入する前に知っておくべきこと

中古マンションの既存住宅瑕疵保険に関して基礎知識を身につければ、次は実用上の問題点などを抑えておきましょう。実態を理解することで、加入すべきかどうか判断するときに役立つからです。

主要構造部や雨漏りは共用部に関する問題

前述のように、保険の対象となるのは「構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分」ですが、中古マンションの場合、これらの範囲は基本的に共用部分となります。

共用部分とは、ある住戸を購入する人だけではなく、そのマンションの各住戸の所有者全員で共有している部分ということです。この共用部分の補修については、原則としてマンションの管理組合で話し合い、修繕積立金で対応するものです。

つまり、実際には瑕疵の補修等に関して保険のお世話になる機会が少ないのです。一戸建て住宅であれば保険のお世話になることも十分にありうるのですが、マンションに関しては一戸建てよりも機会が非常に少ないということを知っておくべきでしょう(機会がないわけではない)。

瑕疵の補修を目的に加入するメリットが一戸建てよりも小さいということですね。

住宅ローン減税を目的としたときに有効

保険に加入しても保険金を請求する機会が少ないのであれば、なぜ加入する人がいるのでしょうか?

それは前述した住宅ローン減税というメリットがあるからです。保険金の請求のことはあまり考えず、減税目的で利用する人が多いのです。仮に、加入のために必要な検査費用や保証料が12万円(諸条件による)だったとして、減税額が100万円(これも諸条件による)であれば90万円近いメリットがありますね。

ちなみに、基本的に築25年までのマンションはこの保険に加入しなくても住宅ローン減税を受けられるため、利用する人の多くは築25年超の中古マンションを購入する人です。

ここで解説したことを参考にして、「中古マンション建物保証(既存住宅かし保険付き)」の利用を検討してみるとよいでしょう。

追記:税制改正により、建物の登記簿(登記事項証明書など)で昭和57年1月以降に建てられたものであることを確認できれば、耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン控除等の減税等の対象となることになりました。

参照:2022年度の改正で住宅ローン控除の耐震基準適合証明書は必要なくなった?

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。