基礎ひび割れの住宅検査

一戸建て住宅に対する不具合の建物調査で基礎のひび割れに関するものは多いです。「購入予定の住宅の基礎にクラックがあるのでインスペクションしてほしい」「自宅にひび割れが見つかったので、それが問題ないか調べてほしい」「建物が傾いている気もするが関連性を調べてほしい」「ひび割れ以外にも何か問題ないか建物全体をみてほしい」といった相談が数多く寄せられています。

ご自身がお住いの自宅の調査や購入予定物件の住宅診断(ホームインスペクション)に際して、基礎のひび割れも見てほしいというニーズは非常に多いですが、築年数の経過した中古住宅に限らず新築したばかりの住宅についても依頼は多いです。

基礎が建物の構造上、たいへん重要であることは誰もが知っているわけですから、そこにひび割れを見つけて心配するのも無理はありません。ここでは、基礎のひび割れに関して説明したうえで、その調査手法についても解説しているので、ひび割れへの対応を検討する際の参考としてください。

基礎のひび割れ(クラック)の種類と発生箇所

基礎のひび割れといっても大きな心配のないものから、非常に大きな瑕疵にあたるものまで様々です。そこで、まずは大きな心配に至らないものと心配した方がよいものの違いについて説明します。

ヘアークラック

基礎のヘアークラック

基礎のひび割れには、ヘアークラックと言われるものがあります。ヘアーとは髪の毛のことですが、髪の毛ほどの小さな巾のひび割れという意味です。このヘアークラックは新築住宅でも生じていることは少なくありません。

このような軽微なひび割れは基本的には大きな心配のないものです。コンクリートの上に施工されたモルタルに生じているものであり、主要構造部に問題があるわけではないのです。

ただし、ひび割れが大きくなっていくようであれば、次に説明する構造クラックの可能性も考える必要があります。新築や築年数の浅い住宅で軽微なひび割れを確認した場合は、慌てずにしばらく経過観察して大きくならないかチェックしておきましょう。

構造クラック

基礎の構造クラック

構造クラックと判断されたものについては、補修等の対応を検討しなければなりません。ヘアークラックがコンクリートの上から施工されたモルタルの割れであるのに対して、構造クラックはコンクリートそのものが割れたものです。

但し、後述しますが、建物の外側から基礎を目視しただけでは、構造クラックであるかどうか判断できないこともあるので注意が必要です。国土交通省から既存住宅インスペクション・ガイドラインが出ておりますが、これによれば、巾0.5mm以上または深さ20mm以上のひび割れを指摘対象としていますので、これを1つの目安として考えるとよいでしょう。

但し、単純に数値だけで判断できないため、これは参考とするだけであって、他の症状の有無を調べるなどして診断・判断することも大事です。そこは、住宅診断の経験豊富な専門家に相談することをお勧めします。

ちなみに、基礎のひび割れのなかには、建物外部から床下側まで貫通してしまっているものもあります。これを貫通クラックと呼んでいますが、これがあるとすぐに対応を検討すべきです。

基礎ひび割れが貫通しているかどうかは、判断しづらいことも多く、専門家の見解でも「貫通が疑われる」「貫通の可能性が高い」などと表現されることも少なくありません。しかし、ときには床下側からクラックを見たときに外部からの光が床下へ漏れていることや、空気の流れを感じることがあり、このときは明らかに貫通していることがわかります。

床下は暗いため外部の光が入れば目立つのです。

基礎立上りのひび割れ

基礎のひび割れといっても、その発生場所は立上り部分と底盤部分の2種類があります。基礎の立上りとは、基礎が垂直方向になっている部分で、建物の外周部分や耐力壁の真下部分などにあります。

外周部分の基礎については、建物の外側からと床下側からの両方向から確認することができます。但し、床下側から確認するためには、床下点検口から床下へ潜って検査する必要がありますので、点検口がなければ床の一部を開口しなければなりません。

外部側の基礎立上りには、コンクリートの上にモルタルが施工されていることが一般的であるため、コンクリートを直接に確認できませんが、床下側にはモルタルが施工されていないため、コンクリートを直接確認できる点がメリットになります。

住宅診断(ホームインスペクション)を利用する際には、床下調査を推奨することが多いですが、このメリットがあることも推奨する理由の1つです。

基礎のひび割れ

基礎底盤(ベース・スラブ)のひび割れ

床下を見たとき、地面にあたる部分のコンクリートが基礎の底盤部分です。ベースやスラブと呼ばれることもあります。

底盤は、立上りの床下側と同じでモルタルが施工されていないため、ひび割れがあれば構造クラックだと考えられますから対応を検討しなければなりません。

新築住宅でも底盤や立上りの床下側にひび割れの補修跡が確認されることがありますが、それは新築業者がひび割れを認識していた証です。

そして、その補修方法が不十分なものであることも多い(例えば、症状が重いにも関わらず、ひび割れ箇所にモルタルを塗っただけ等)ので、補修跡が見つかった際は補修方法が適切なものであるか確認すべきです。目視だけでは補修方法の詳細まで判断しづらいですから、新築業者からヒアリングしてください。

基礎のひび割れ(クラック)の検査・診断の方法

基礎のひび割れに関して、一般的にはどのような検査・診断がなされているのでしょうか。ここでは、一般的な検査方法について説明します。

設計図の確認

基礎に限らず、住宅診断(ホームインスペクション)に共通して言えることですが、設計図で建物の形状を確認するところから診断が始まります。

基本的な図面としては、敷地配置図・平面詳細図・立面図が必要ですが、基礎にひび割れがあることを確認し、それが構造クラックの疑いがあるようであれば、基礎配置図・基礎詳細図(基礎断面図)・地盤調査資料・地盤改良施工報告書なども確認することがあります。

この設計図等の確認は、ひび割れの発生原因を予測する際の参考材料となることがあるのです。

基礎立上りの割れ

基礎外部から目視・計測・打診

調査の基本は目視です。つまり、目で見てわかる症状を探すわけです。合わせて打診することで、モルタルの浮き具合を確認することもできます。モルタルの割れがあり浮いている場合は、薄いが侵入してモルタルの劣化・剥がれが進行しやすいです。

ひび割れの巾をクラックスケールで計測したり、ピアノ線等を使用して深さを計測したりすることも大事です。これにより、表面のモルタルだけの症状なのか内部のコンクリートまでひび割れが到達しているのか確認するわけです。

床下から目視・計測・打診

床下へ進入して調査する場合でも、目視・計測・打診は同じです。外部にひび割れがあった場合、床下側の同じ位置にもひび割れがないか確認することを忘れてはなりません。同じ箇所にあれば、貫通クラックの可能性を検討すべきですし、貫通していなくとも同じ箇所にひび割れが生じる原因(例えば荷重が集中している等)を考えて、場合によっては対応を検討すべきです。

床下では前述したように大事な基礎の底盤を確認できるので一緒に見ておくべきです。繰り返しになりますが、床下側からはコンクリートを直接確認できるメリットがありますから、ぜひ診断しておきたいところです。

外部・床下の基礎検査

関連症状の有無を検査

基礎のひび割れがあったとき、基礎だけを見ていては判断を誤る可能性がありますから、建物全体をよく観察することです。特に、外壁や室内壁・天井・床に何らかの症状が出ていないか確認した方がよいです。壁などのひび割れ、床や壁の傾き・歪みなどを調べるわけです。

そうして建物に現れている症状を確認したうえで、基礎のひび割れを含めた症状の原因を推察していく手順が必要です。

基礎のひび割れが気になるからと言って、単純にリフォーム業者等へそのひび割れだけの補修を依頼する人がいますが、これではほとんど意味がなく費用を無駄にしていることもあるので注意してください。

建物の診断の基本的な方法は、部分的な症状だけで判断するのではなく、様々な症状を確認して総合的に判断するものです。

一戸建て住宅の基礎の非破壊検査

一戸建ての住宅診断(ホームインスペクション)で一般的に行われる基礎の検査手法は、目視・ひび割れのサイズ計測・打診です。

そして、ひび割れに構造クラックの疑いがあるときに、その原因調査等をするのであれば、適宜、鉄筋探査やシュミットハンマー(コンクリートテストハンマー)によるコンクリート強度調査を行うことがあります。

鉄筋探査では、鉄筋の有無や鉄筋と鉄筋の間隔(ピッチ)の計測をしますが、ときにはかぶり厚(コンクリート表面から鉄筋の表面までの距離)の計測を行います。

また、一戸建て住宅でされるケースは少ないですが、他にもX線検査やコア抜き試験もあります。こういった検査は、必要性に応じて特別に実施するものですが、必要性については検査会社とよく相談しましょう。

基礎にひび割れが見つかって心配なら、まずは床下と建物全体を点検(住宅の点検・建物調査)するとよいでしょう。

アネストの住宅インスペクション

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。