アネストでは、2003年より新築住宅向けホームインスペクション(住宅診断)を行ってきましたが、この間、たいへん多くの施工不良・欠陥工事を見つけてきました。もちろん、全ての新築住宅で重度の施工不良が確認されるわけではありませんが、意外と多いのも事実です。

「新築なのに、こんなことがあるなんて」
「有名な会社の家だから大丈夫だと思っていたのに」

といったホームインスペクション依頼者の声も少なくありません。

アネストにホームインスペクション(住宅診断)を依頼するとき、依頼者の皆様から「具体的には、どのような問題が見つかるのか?」と質問を受けることは多いです。そこで、アネストのホームインスペクションで実際に見つかった施工不良等の指摘事例を挙げていきます。

今回は、新築完成物件における基礎に関する指摘事例に絞って紹介します。建物全体についての指摘事例は、「住宅診断(ホームインスペクション)の指摘事例」でも公開しているので参考にしてください。

新築一戸建ての基礎の不具合・施工不良の対象物件

今回、ご紹介するのは、新築一戸建ての完成物件における基礎に関する指摘事例の一部です。完成物件ですから、建売住宅の売買契約前や引渡し前に依頼されたものと注文建築の完成後・引渡し前に依頼されたものが対象です。

完成物件ということは、基礎の工事中の検査は今回の事例の対象外です。建築中には、配筋工事やコンクリート打設時の検査が有効で、住宅あんしん工程検査(建築中の住宅検査)サービスで検査対応していますが、このサービスによる指摘事例は除外しています。

対象となっているサービスは以下の2つです。

基礎の施工不良の事例の紹介

ここからが、具体的な基礎の施工不良等の事例の紹介です。見つかった症状ごとに分けて事例をあげていきますので、ご覧ください。

構造的な影響があるひび割れ(クラック)

基礎で見つかることが最も多い施工不良は、ひび割れです。クラックとも言われています。しかし、基礎のひび割れ(クラック)には、心配ないレベルのものと構造的な影響が心配されるものがあります。ひび割れが見つかったからといって全てを不安視する必要はありません。ここで紹介する事例を参考にしてください。

基礎のヘアークラック

上の写真は、建物外部の基礎の立上りのひび割れです。これは、基礎の表面に仕上げ材として施工されたモルタルに生じた軽微なひび割れで、ヘアークラックと呼ばれるものです。これ自体は構造的な影響があるものではありません。ただし、新築してすぐの場合、ヘアークラックとはいえ、早期にひび割れが大きくなったり、増えたりしないか注意しておきましょう。

ただし、同じ個所の床下側にもひび割れがある場合、構造的な影響も心配する必要が出てくることがありますので、できれば床下側の調査もしておきたいものです。

床下の基礎のひび割れ

この写真ではその前のものに比べてひび割れの巾が大きいのがわかります。クラックスケールで計測すると0.5mmありました。また、同箇所にピアノ線を差し込んで深さを計測すると10mmほどでした。そして、この場所は床下側の基礎の立上りです。

床下側の基礎には建物外部のようにモルタル等の仕上げ材が施工されておらず、基礎構造そのものにひび割れが生じているかどうかを確認できます。

立上りのみで底盤にまではひび割れがありませんでしたので、直ちに基礎の強度を大きく低減するものではありません。しかし、早期の補修が望ましいです。

基礎の大きなクラック

この写真でも床下側で基礎の立上りにひび割れが確認できます。ひび割れの巾が0.8mmと大きなもので、補修を要するものです。

それでは、以降は構造的な影響が考えられるひび割れを紹介します。

基礎底盤のひび割れ

床下で基礎の底盤に見つかったひび割れです。

基礎の構造クラック

床下側の基礎の立上りに広範囲で確認された大きなひび割れです。

ここで挙げたようなひび割れ(クラック)が見つかることがありますので、基礎、とくに床下の調査はしておきたいものです。

欠損・ジャンカ

基礎の調査でジャンカが見つかることもよくあります。ジャンカとは、コンクリートの表面に砕石が見られるものです。ジャンカができたとしても軽微なものであれば、気にする必要はありませんが、その症状の程度によっては心配される基礎の欠損にもなります。コンクリート打設工事の際の施工不良です。

基礎のジャンカ

この写真は床下へ潜った時に確認されたジャンカです。広範囲に確認されており、構造的な影響があると考えられるため、補修が必要なものです。

著しいジャンカ

こちらも同様に構造的な影響が心配されるもので補修が必要でした。

床下側のじゃんか

こちらも新築住宅で確認されたものです。新築でもホームインスペクション(住宅診断)をしておくべきだと思えますね。

まだ、建築途中でコンクリート打設工事の検査に間に合うなら実施しておきたいところですね。

基礎貫通部の隙間

基礎コンクリートは、配管が貫通している部分がよく見られます。下の写真を見ればわかりやすいですね。

基礎の配管貫通部の隙間

この写真をよく見ると配管が貫通している周りに隙間が見られます。この隙間から雨水が床下へ浸入してしまうことがあるため、処理しておくことが望ましいです。地面に跳ねた雨水が浸水するリスクもありますが、豪雨の際に庭に溜まった雨水が大量に床下へ浸水した住宅もありますので注意が必要です。

地中配管の貫通部

この写真も同様です。配管は地中に埋められてわからなくなってしまうこともありますが、地中でも雨水が浸水していくため、防水処理が必要です。

基礎の破壊と鉄筋の切断・露出

最後に紹介するのは、基礎コンクリートの破壊とそれによる鉄筋の切断です。

基礎の破壊と鉄筋

床下で配管のために、基礎コンクリートを破壊させている住宅もあります。できることなら、計画的にやるべきことで、コンクリート打設の前に配管しておくことで後から破壊しなくてすみます。大きな影響がない範囲で、且つコンクリート内の鉄筋を切断することの内容に配慮して配管してほしいものです。

新築のホームインスペクションは不要か

今回、紹介した事例は全て新築一戸建ての完成物件におけるホームインスペクション(住宅診断)で発見されたものです。

新築にホームインスペクションが必要なのかと聞かれることがありますが、長年、調査してきた経験からすべきだとはっきり言えます。もちろん、調査しても大きな施工不良が何もない住宅もたくさんあるのですが、気付かずに暮らしている人も多くいることでしょう。

基礎だけに絞ってもこれだけのことがあるのですから、購入時にはインスペクションしておいた方がよいでしょう。新築住宅のホームインスペクション(住宅診断)の必要性も参考にしてください。

また、中古住宅なら「中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)で見つかる基礎の不具合」も参考になります。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。