売主が不動産会社である競売物件とホームインスペクション(住宅診断)

中古住宅を買う人のなかには、不動産会社が競売によって取得して転売する物件を購入する人もいます。そういった方から、「検討している住宅が競売物件なので、インスペクション(住宅診断)してもらいたい」というご依頼を頂くことがあります。

多くの人が競売物件に対して不安を頂くものですが、今回は競売物件に対するホームインスペクション(住宅診断)の必要性を説明します。

元の所有者が建物のメンテナンスを怠っていることが多い

一戸建て住宅である場合、その住宅のメンテナンスは所有者が行うものです。手間と多少のコストをかけてメンテナンスするものです。

ところで、競売物件の多くは、元々その物件を所有していた個人や法人が経済的に困窮していたケースが大半を占めています。債権者から差押えられるなどして競売にかけられるぐらいですから、当然のことですね。

経済的に厳しい状況にある所有者は、住宅のメンテナンスに手間やコストをかけることはあまりありません。それだけに建物の状態が悪い可能性が高まります。困窮している期間が長いほど、住宅が荒れる期間も長いことが多いため、建物へも影響が出やすいと言えます。

売主である不動産会社も建物状況を把握していないことが多い

競売物件の入札する人は、事前に建物の外観を見ることはできますが、建物内部までは確認できないことが多いです(できることもある)。室内へ立ち入って、傷み具合などを詳細に確認してから入札することができればよいのですが、現実にはそれができずに建物の内部状況を把握していないまま入札している人が多いのです。

落札した人が不動産会社であっても、建物の内部を見学できていない場合には、ひどい物件にあたることもあります。見た目の劣化状況があまりにひどいということもありますし、主要な構造部分などがひどく腐食してしまっていることもあります。

仮に見学できたとしても、床下や屋根裏の内部まで細かく確認していることはほとんどないため、詳細に状況を確認しているケースは稀です。

落札後に確認した瑕疵を黙っていることもある

不動産会社が競売物件を落札して入手し、転売している物件であっても、前述のように落札時点では建物に大きな傷みや瑕疵が存在している可能性はあるわけですね。そういった物件であれば、不動産会社は、再販する前に補修しておくべきですよね。

不動産会社が再販目的で入札するのであれば、必ず補修費用を事業計画に入れているはずですから、再販前に補修しているはずです。しかし、多くの不動産会社は、表面的な補修のことしか計画に入れていないため、壁の内部や床下などの普段は見えないところに問題があったとしても、補修せずに再販してしまうこともよくあることです。

不動産会社としては、想定よりも補修費用がかかるようであれば、再販しても利益が出ないこともあるため、瑕疵が見つかっても補修せずに黙っておくことがあるのです。驚くことかもしれませんが、こういった事例は何度も確認されています。

不動産会社が競売物件を入手して再販した場合、買主に対して引渡しから2年以上の契約不適合責任(2020年3月までは「瑕疵担保責任」という)を負わなければなりません(一般的な取引では2年間としている)。それだけに、不動産会社が瑕疵を隠して売ったとしても、買主が責任を追求できるわけですから、不動産会社が隠すことはないと考える人もいます。

しかし、引渡しから2年以内に気づかなければ、契約不適合責任を求めることができませんので、「しばらくの間、気づかれなければ」などと考える残念な不動産会社が実際にあるのです。

競売物件はホームインスペクション(住宅診断)の必要性が高い

競売物件だった住宅を不動産会社から購入する場合には、前述のようなリスクがありますから、購入する前には建物の状態を把握するためにも、第三者によるホームインスペクション(住宅診断)を利用する必要性があると言えるでしょう。

進入できるような建物のプランであれば、床下や屋根裏の確認も希望した方がよいでしょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。