新築時に分譲していた売主(事業主)や建築会社が倒産した住宅の所有者から、ご自宅の住宅診断(ホームインスペクション)に関して問い合わせを頂くことがあります。この記事は、売主や建築会社が倒産して存在していないので定期点検をしてくれる会社もないし、不具合の有無を誰に確認してもらったらよいかわからないという人に役立つコラムです。
新築当時の売主や建築会社が倒産して困っている人は多い
建売住宅でも注文建築でも、新築住宅を取得してから間もなくして、その売主である不動産会社や施工した建築会社が倒産してしまったという人の話は数多く聞いてきました。今、これを読んでいるあなたがそうだとしても、それは何も珍しいことではなく、誰にでもふりかかることのある問題なのです。
不動産会社や建築会社の倒産・廃業は多い
日本では、不動産業者や建設業を営む会社は非常に多く驚きます。平成27年の時点で不動産業(宅地建物取引業)の免許を取得している会社(=不動産会社)の数は123,000社超もあり、平成28年3月時点の建設業は467,000社超もあります。
このすべてが新築住宅の建築や分譲にかかわっているわけではないのはもちろんですが、業界の大きさは驚くべきものではないでしょうか。
ちなみに、不動産会社は10年前に比べて8,000社ほど減っており、建設業者は75,000社ほども減っています。しかも、この間にも新規で開業する業者の数が非常に多いことから、減少した実質の数はこれよりもはるかに多いものです。建設業者で平成27年に廃業した数は24,000社を超えています。
下請け業者も含まれる数ですから、このまま受け止めるべき件数ではないですが、どの住宅でも購入後に売主や建築会社が倒産したり廃業したりリスクが現実的であることはわかるでしょう。
倒産が多いことを知らずに購入する買主は多い
不動産業界や建築業界にいる人にとっては、業者が毎年のように多数入れ替わっていることをよく知っていますが、世間的にはそれほど認知されていません。そのため、購入してすぐに倒産する可能性があることを考えずに住宅購入している人は多いです。
建物の維持管理の問題
住宅は何もせずに放置しておくとどんどん劣化していきますが、新築時の施工が良く、且つ適切に維持管理している住宅では、長く安心して暮らすことも可能です。
建物には定期的な点検とメンテナンスが必要
倒産や廃業に遭遇した住宅所有者にとって、大きな課題となるのは建物の維持管理・メンテナンスに関することです。
建物の寿命や良し悪しは、新築時の施工品質とその後の維持管理・メンテナンスが非常に大きく影響します。維持管理をしていくために大事なものの1つが、定期的な建物の点検です。売主や建築会社が行う1年点検、2年点検、5年点検というサービスがありますが、これはまさに定期的な点検ですね。
この定期点検で不具合が確認されれば、その事象に応じて早めに、そして適切に補修などの対応をすることが重要ですが、売主等が倒産・廃業しているときには、この点検をしてもらえません。点検をしなければ、早期に建物の不具合などを発見することもできず、対応が後手を踏んでしまうことがあるのです。
建物の不具合を相談できない
また、居住しているうちに、居住者たちが自ら建物の不具合に気づくことがあります。例えば、「どうも湿気が高いと思って床下を覗いたら、床下に水が溜まっていた」「壁のひび割れが増えているが、構造的に問題ないのだろうか」などといったことがあります。
本来ならば、こういったことがあれば、まずは売主や施工した建築会社に相談するものですが、倒産していては相談もできません。
第三者の住宅診断(インスペクション)で定期的な点検や突発的な問題に対処
アネストに相談される人は、前述したケースに該当する人が多く、倒産した不動産会社や建築会社の代わりに建物を点検してほしいというご希望で、住宅診断(ホームインスペクション)をご利用頂いています。
住宅診断(ホームインスペクション)は第三者性が重要なポイントですから、普段は売主や建築会社の倒産に関係なく、第三者の意見を聞きたいという人からご利用頂いていますが、倒産・廃業の多い業界事情のことを考えれば、建物の定期的な点検を行うサービスは大事なものとなりそうです。
これから、新築住宅を建築する人なら、倒産リスクを把握した上で対策を考えておく必要があるので、「住宅の建築中に工務店が倒産するリスク(倒産件数・理由と具体的な対策も)」を参考にしてください。
関連記事
執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。