新築工事の遅延のために、新築住宅の売買契約や工事請負契約で定めた引渡し日に、対象の住宅を引渡しできないということがよくあります。完成後・引渡し前に第三者が検査する内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)サービスの前後で、本当に多くの人から引渡し延期に関するご相談を受けてきました。
工事遅延のために引渡し日が契約で取り決めた日に間に合わないとき、売主や建築会社から延期を告げられた時点で、いくつかの注意すべき点について対応を考えなければなりません。この対応をミスした後には、金銭トラブルや欠陥工事などに悩まされることがありますから、よく理解しておきましょう。
引渡し日は契約書で確認する
契約対象の住宅の引渡し日は、契約書に明記されているはずです。建売住宅を購入したのであれば売買契約書を、注文建築で建てたのであれば工事請負契約書を見れば明記されているはずです。具体的に、「○月○日」と記述していることもあれば、「残代金の支払いと同日とする」と記述して、別の欄に残代金の支払日を記述しているということもあります。
契約前の時点で確認しておくべきことですが、契約後の人もチェックしておきましょう。引渡し日について、営業担当者から口頭で聞いた日程のみを覚えているという人もいますが、契約書には別の日が記述されていたということもあります。必ず、契約書を見て確認してください。
延期後の引渡し日を書面で確認する
売主もしくは建築会社より引渡し日の延期について打診があったときには、必ず、その理由を確認しなければなりません。売主や建築会社の責任によることで工事遅延であるかどうかは、最初にはっきりさせておくべきことです。これが後の交渉で重要になることもあるからです。
理由が曖昧であったり、よく理解できなかったりするときには、納得できるまで丁寧な説明を求めてよいです。引渡し遅延は大事なことですから、遠慮せずに確認をとってください。
また、ここで重要なことは延期後の日程を書面で確認することです。引渡しの遅延は、買主や施主にとっては入居日(引越し日)の遅れや現在の住居の退去手続きに関連ある重要事項であり、確実な引渡し日・入居可能日を早めに知っておく必要があります。
また、更なる遅延を防ぐためや更なる遅延の際の責任追及のためにも、書面で明確にしておくことは大事な対策なのです。
契約上の引渡し日に遅延したなら、違約金の請求を検討する
引渡し日とは契約において取り決めていることです。その引渡し日に引渡しが間に合わないということは、契約違反にあたる可能性が出てきます。売主や建築会社の責任による工事遅延が原因であれば、売主側の債務不履行となり、違約金の対象となりうるのです。
違約金については、あらかじめ契約において取り決めていることが多いです。後から損害額を算出するにも、利害関係のある両者が損害額の算出で容易に合意できないことは契約する前からわかっていることですから、予め決めておくことが一般化しているのです。
また、債務不履行を理由として契約解除という流れになることもありますが、多くの場合、買主側も簡単に契約解除できる状況ではありませんから、余程、長期間の遅延でもない限りは、実務上、契約解除になることはありません。
多少の遅延である場合には、売主(または建築会社)と買主(または施主)が話し合って引渡し日の遅延に合意することが多いです。その際、違約金の一部を支払うことで合意することもありますし(買主からすれば違約金を割引してあげるような形)、違約金なしで合意しているケースも多いです。
突貫工事による施工ミスに注意する
新築工事が遅延して引渡し日が間に合わないときに強く心配されることは、施工品質の低下です。工事が遅れて完成予定日や引渡し予定日に間に合いそうに無い状況になれば、突貫工事が行われることは多いです。強引な工事が行われることや複数の下請け業者が同時に現場に入って混乱状態になることもあり、現場が雑になりがちです。
買主や施主の立場としては、突貫工事を強いるようなプレッシャーのかけ方は、むしろマイナスに作用することも多いので、十分に注意したいところです。
引渡し前の完成時の立会い検査を入念に行う
前述したように、工事が遅延した現場では突貫工事によって施工ミスが他の現場よりも増える傾向にあります。よって、買主や施主が行う完成後・引渡し前の立会い検査では、十分な時間をかけて入念に行うべきです。
完成時の立会い検査は、突貫工事がなくても買主や施主がきちんと見ておくべき機会ですが、工事遅延のあった物件ではその意識を強く持つべきということです。
この際、内装仕上げ工事のチェック(傷や汚れの確認)ばかりに気を取られず、床下や小屋裏の断熱材、床下の配管の接続、天井点検口から確認できるダクトの接続なども見ておいた方がよいでしょう。工事を急いだ現場ほどありえない箇所でミスをおかしがちだからです。
できれば、買主の方で内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)サービスを依頼して専門家に施工状況をチェックしてもらった方がよいでしょう。
未完成の住宅の引渡しを受けない
工事が遅延して引渡しが遅れそうになると、建物が完成していないにもかかわらず、買主に無理矢理に引き渡してしまおうとする売主が必ず出てきます。不動産・建築業界の一般常識レベルで見ても驚くべき異常な行為なのですが、未完成物件を買主に平気で引き渡そうとする業者があるのです。
そういった業者の引渡し後の対応悪化によるトラブルは多く、引渡しを受けてしまった人から後悔の声を何度聞いたかわかりません。未完成の住宅の引渡しを絶対に受けないようにしてください。
新築住宅の完成まで残代金を支払わない
未完成だから引渡しを受けないと突っぱねたものの、売主から代金だけでも支払ってほしいと依頼されることがあります。住宅の売買において、未完成で引渡しも受けられない状況なのに、代金を全て支払うことなどはありえません。
ひどい業者になると、「引渡し日までに代金を支払わないと債務不履行で契約違反になる。そうなれば、違約金を請求するかもしれない」と脅すケースまであります。そもそも、引渡し日に完成せず引渡しできない業者の方が契約違反の可能性が高いのですが。
このような悪質な業者だとわかった時点で自治体に相談するなどして、指導を要求してもよいでしょう。
引渡し遅延の有無は早めに確認が必要
どのような住宅であっても、引渡し遅延のリスクはありうるでしょう。よって、引渡し日の1ヶ月前ぐらいには工事が予定通り進んでいるのか、引渡し日に変更がないのか売主や建築会社に確認するべきです。
また、口頭による確認だけではなく、工程通りに進捗しているのか工程表と現場の進捗を照合して確認することをお奨めします。現場監督や工事監理者から、現場で工事の進捗の説明を受けながら、確認することが最も望ましいでしょう。
引越し業者の手配にも影響することですから、引越し依頼の前には確認したいものです。
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