建売住宅を購入する人から、「建売は欠陥が多いから心配だ」と聞くことがあります。また、「少々のことがあっても建売だから仕方ない」とあきらめの声を聞くこともあります。

本当に建売は欠陥が多いのでしょうか。

この問題について、長い間、建売住宅のホームインスペクション(住宅診断)をしてきた経験や欠陥工事の事例を交えて解説します。これから購入しようとする人も、既に購入して居住している人も欠陥問題を知り、適切に対応していくために参考にしてください。

建売住宅といえば欠陥住宅?

「建売住宅を買うと欠陥住宅にあたることが多い」「建売は欠陥ばかりだ」などと話す人もいます。一方で、「昔の建売はひどかった」「今の住宅ではそんなことはありえない」「いろんな検査も入っているので大丈夫だろう」と話す人も少なくありません。

実際のところ、最近の建売住宅に欠陥工事があるのかどうか気になっている人も多いでしょう。これから建売りを買おうとしている人やすでに買って居住している人にとっては関心が高いはずです。

ホームインスペクション会社の実績から

筆者の会社では、たいへん多くの建売住宅を住宅診断(ホームインスペクション)しています。その数は年間700件程度(※執筆当時の件数。2023年時点では2000件超。)にのぼります。

関東や関西など広範囲で建売住宅のインスペクションをしているのですが、その診断結果を見ていてわかるのは、建売住宅にはまだまだ欠陥工事、施工ミスがあるということです。

ただ、昔、それこそ2000年以前に比べると全体的な品質は上がっているのではないでしょうか。ただし、2000年以前にはこのようなホームインスペクションをしていませんので、直接的な経験で比べることはできません。あくまで実感によるものです。

昔より求めるレベルがあがった

以前と今とでは、消費者の求める品質レベルはより厳しくなっており、同じ尺度では測れません。厳しいチェックがあることで、業界の施工品質はあがってきており、今後も品質向上が期待できそうです。

しかし、今でも単純な施工ミスは数多く見られます。住宅を新築する過程では、基礎の配筋工事、断熱工事のところでの施工ミスが多く、検査時に指摘にあがることが多くなっています。

また、完成物件の住宅診断(ホームインスペクション)で床下へ潜って奥まで調査していくと、新築とは思えない施工ミスが見つかることもあります。

レベルが上がっても施工ミスはある

昔より施工レベルがあがってきたとは言っても、施工ミスが無くなったわけではないですし、ホームインスペクションをしてみると少なくない頻度で見つかっています。

たとえば、床下においては、基礎の構造クラックや著しいジャンカ、配管からの漏水、断熱材のはずれ、アンカーボルトの施工不良(土台から外れている)などです。屋根裏においては、構造金物の緩みや断熱材の施工不良などです。建物外部においては、外壁・バルコニー周りなど様々な箇所のシーリングの施工不良などです。

新築でも漏水などの施工ミス

他にも、新築なのに床下で漏水していたり(配管からの漏水で建築会社がテストしたときに漏れた可能性がある)、配管の支持金物が固定されていなかったりといったこともあります。

建築時に使用するいろいろな材料が工場で生産されて、現場で組み立てていく工程も増えましたが、現場ではそれらの設置作業などを丁寧に、適切に実施しなければなりません。残念ながら、それができていない建売も少なくないということです。

新築一戸建て住宅診断(建売のホームインスペクション)

建売住宅には欠陥が多いか?

建売住宅に欠陥が多いのか?

これがこの記事のテーマでしたので、この点に回答しておきます。

建売住宅の欠陥は少なくない

「建売住宅に欠陥が多いのか?」との問いには単純には回答できない点もあります。

しかし、アネストが全国の建売住宅の住宅診断(ホームインスペクション)をしてきた経験より、決して少ないとは言えないことだけは確かです。昔と違って安心してよいということはありません。

昔はなかった瑕疵保険制度(検査もある)、住宅性能表示制度(検査もある)を利用していても、未だに欠陥工事は無くらないですし、見つかった事例のなかには、建物の構造耐力や雨漏りの防止に関わる点も多いです。つまり、重大な指摘があがることもあるわけです。

欠陥は建売だけの問題ではない

ただし、誤解すべきではない事実をお伝えしておきます。それは、欠陥住宅のリスクが、建売住宅だけの特有のものではないということです。

公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられる新築住宅に関する相談件数はずっと増加傾向にありますが、この相談には、建売住宅も注文建築の家も含まれています。増加傾向にあることや新築住宅に対するホームインスペクションの必要性は以下の記事が良い参考になります。

注文建築でもしっかり監理されておらず、施工ミスが見逃されてきていることがあるからです。

おそらく、割合としては建売の方が多いでしょう。しかし、建て売りだけがダメだと決めるつける業界人もいますが、それは間違いだと言えるでしょう。

建売住宅でよく見つかる欠陥工事(施工ミス)の事例

最後に、建売住宅でよく見つかる施工不具合の事例を挙げておきます。購入する前や引渡しを受ける前に、こういった点をできる限りチェックしておくことをおすすめします。もし、もう既に購入して居住しているとしても、できる限り早い段階で確認して、問題が見つかれば、対処を検討してください。欠陥がある場合、早期発見・早期対処によって、被害を少しでも抑える努力が必要だからです。

外壁のシーリングの施工不具合

外壁周りには、雨水の浸入を防ぐためにいろいろな箇所にシーリングが施工されることが多いです。外壁材の継ぎ目やサッシ周り、ダクト・配管・スリーブ等の外壁の貫通部分、ベランダの手すりと外壁の取合い部分などがそうです。

そういったシーリングが雑に施工されていて、新築完成時点で隙間があることや、そもそもシーリングを施工し忘れていることがあります。将来的な雨漏りの懸念がある施工ミス、つまり欠陥と言えるものです。

外壁貫通部のシーリング不足
外壁貫通部のシーリング不足

床下の基礎の構造上の懸念があるひび割れ(クラック)

基礎は建物の外側から目視確認することができますが、屋外の基礎の大半は表面をモルタルで仕上げているために、コンクリートを直接に確認することができません。そのため、基礎を調査するならば、床下側から確認することがおすすめですが、その床下の基礎コンクリートに著しいひび割れが見つかることがあるのです。

新築住宅なのに、完成時点で構造的に懸念があるようなひび割れ(クラック)が見つかるという事例は意外と多く、ホームインスペクション後にその報告結果を聞いて驚く人もいます。

基礎の構造クラック(ひび割れ)
基礎の構造クラック(ひび割れ)

床下および屋根裏(小屋裏)の断熱材の施工不良

建売住宅のホームインスペクションにおける指摘事例の代表的なものとも言える指摘内容が、断熱材の施工不良です。既に完成している建売物件であっても、床下や屋根裏で断熱材を確認できることが多く、そこで見つかっています。

あまりにも床下などでの断熱材の施工状態が酷いときには、インスペクションの依頼者が売主である不動産会社に対して「こんなに酷い欠陥住宅だと思わなかった!」と強く怒っていたこともありますが、その気持ちはよく理解できます。非常に大きな買い物ですからね。

床下の工事の残存物やゴミ

ホームインスペクションでは、床下の奥まで潜っていき調査することが多いですが(オプションサービスとなる)、その際に点検口から覗き込んで見た範囲だけは、綺麗な床下であったのに、床下の奥まで進入してみると建築工事中に出た資材の残りや切りくずなどの残存物が見つかることも多いです。酷いケースでは、空き缶やたばこの吸い殻が見つかることがあり、驚かされます。

こういったことは、欠陥工事とは異なるかもしれませんが、床下の奥という買主にばれない箇所で酷い対応をしていることがわかるので、購入した人としては大変不安になるものです。

まとめ

建売に施工ミスが少なくないことは前述のとおりですから、建売住宅の欠陥工事に対して不安を感じている人は少なくありませんし、実際に購入した住宅に大きな問題が見つかって、その後の売主との交渉・対応などで多くの時間・労力をつかっていて精神的に参っている人もいます。

欠陥工事の心配がないよい物件を購入できるか、もしくはいくつもの施工ミスがある物件を購入してしまうかは、買主が何もしなければ、運・不運の問題になってしまいます。運次第でも買ってしまえば、買主の自己責任の部分も大きいです。

対策をとるため、理想としては、購入する前に(着工前の物件なら建築工事中も)専門家のホームインスペクションを利用することも考えてはいかがでしょうか。

一級建築士の建売住宅の住宅診断で安心できる

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
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住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。