新築の建売住宅の契約をすると決断してから、購入申し込みをした後、価格等の条件交渉も完了した後は、いよいよ売買契約の締結です。そして、その売買契約を無事に終えたら後は物件の引渡しを待つばかりですね。
しかし、この売買契約から引渡しまでの間にも、買主がやるべきことはいくつもありますから、契約したところで気を緩めている場合ではありません。取引によっては、契約から引渡しまで1カ月程度ということも少なくないですので、まずは契約から引渡しまでの流れを把握した上で、その間の注意点を理解しておきましょう。
今回のコラムでは、売買契約から引渡しまでの流れをご紹介します。そして、次回のコラム(新築住宅の売買契約から引渡しまでの注意点)ではその間の注意点をご紹介します。
今回も次回も、主に新築の建て売りを購入する人を対象としています。売買契約の前後のタイミングでそれぞれを読んで必要な知識を身につけておき、建売購入を失敗しないように進めていきましょう。契約前から全体的な流れを知りたい人は「新築住宅の購入・引渡しの流れと注意点(建売住宅編)」を参考にしてください。
それでは、新築住宅の売買契約を締結したところから、その物件の引渡しを受けるまでの流れを解説します。契約の頃には、売主や不動産仲介業者からも説明を受けられることが一般的ですが、実はその説明内容では不十分なときも多いので、ここでしっかり学んでおいてください。
新築建売住宅の売買契約から引渡しまで
どの建売住宅を購入するか決断して、売買契約をするところから、引渡しをうけるまでの全体の流れは以下のとおりです。
- 手付金の支払いと売買契約の締結
- 住宅ローンの本申込(本審査の申し込み)と必要書類の提出
- 住宅ローンの承認(不承認なら契約解除)
- 内金(中間金)の支払い(不要なことが多い)
- 引越し業者の選定
- 建物の完成(未完成物件を契約した場合)
- 引渡し日の調整
- 司法書士へ必要書類を提出
- 引渡し前の立会い検査(内覧会)
- 補修工事(手直し工事)
- 補修後の再確認
- 金銭消費貸借契約
- 残金決済・引渡し・登記申請
以上が売買契約から引渡しまでの流れですが、取引によっては進める順序が前後することがあります。たとえば、引越し業者の選定はもっと早いタイミングでしておいた方がよいこともありますし、司法書士への必要書類の提出は売買契約のときに準備を求められることもあります。
よって、上の流れのとおりにならないこともあるので、流れが異なるからといって焦ることのないように意識しておきましょう。
それでは、上の流れにそって1つずつ詳しく見ていきましょう。
1.手付金の支払いと売買契約の締結
売買契約の締結に際して手付金を支払いますが、購入申し込みのときに申込金を支払っている場合には、これを手付金の一部に充当します。
たとえば、申込金として10万円を支払っている場合で手付金が200万円ならば契約の際には差額の190万円を支払うことになります。
2.住宅ローンの本申込(本審査の申し込み)と必要書類の提出
住宅ローンの本申込ですが、建物が完成している場合には契約してすぐに申込み手続きをすることが多いです。引渡し日をいつに設定しているかにもよりますが、住宅ローンの本申込から審査結果が出るまでに1週間程度(長引くときは2週間程度)かかるからです。
そのため、売買契約の時に住宅ローンの本申込に必要な書類を準備するよう求められることも多いです。この点は契約前に不動産会社に確認してください。
3.住宅ローンの承認(不承認なら契約解除)
金融機関から住宅ローンの審査結果が通知されます。万一、不承認となったときには契約解除することになりますが、不動産会社と相談して別の金融機関へ申し込みすることもあります。
売買契約の時点で既に建物が完成しているようであれば、住宅ローンの承認を得られ次第、引渡し手続きへ移行することも可能です。
また、住宅ローンを利用せずに全額キャッシュで購入する人なら、売買契約後すぐに引渡しに移るケースもあります。
4.内金(中間金)の支払い(不要なことが多い)
内金(中間金)の支払いは、一般的な建売住宅では必要ありません。これから建築する物件を契約したときなどに売主から上棟したタイミングなどで中間金の支払いを求められることがありますが、最近の取引ではほとんどありません。
もし、内金(中間金)を求められた場合は会社の財務状況がよくない可能性が考えられるため警戒した方がよいです。
内金(中間金)が必要な場合は契約書に明記されますから、契約書で確認しておくとよいでしょう。
5.引越し業者の選定
引越し時期をいつにするかで引越し業者の選定時期は異なってきます。この順序にとらわれる必要はありません。
業者の選定にあたっては、必ず複数の会社で相見積もりをとって比較検討してください。この業界では、一社のみで見積りをすると割高に金額になることが少なくありません。
多くの人にとっては慣れていない引越し業者の選定ですが、相見積もりすることは忘れないでおきましょう。
6.建物の完成(未完成物件を契約した場合)
売買契約の時点で建物が完成していない場合に該当するものです。建築途中や建築開始前に建売住宅の売買契約をしていることは多いので、該当者も多いことでしょう。
未完成物件を購入する場合は、住宅ローンの申込時期や引越し業者の選定時期も完成時期のことを考えながら進めていく必要があります。
未完成物件を買うなら、契約を締結する前に、完成予定日を売主に確認しておきましょう。
7.引渡し日の調整
引渡し日は、売買契約書のなかに記載しているはずです。つまり、契約時点で決まっているわけですので改めて日程を決めるというと違和感があるかもしれません。
しかし、売主も買主も契約で取り決めた引渡し日を前倒ししたい場合などには契約書に記載した引渡し日にとらわれず変更することは可能です。
もちろん、売主・買主の両者が合意したときに前倒しまたは延期が可能というものですから、一方的に変更することはできません。建物の完成が予定より早まったときなどには、相談して引渡し日を再調整してもよいでしょう。
8.司法書士へ必要書類を提出
司法書士には所有権保存・移転登記や抵当権設定登記の登記申請を依頼しますので、それに必要な書類を提出しなければなりません。
取引によってはもっと早い時期に提出を求められますが、不動産会社から提出書類と提出時期について案内があるはずです。万一、案内が無い場合は、遠慮せず質問しましょう。
9.引渡し前の立会い検査(内覧会)
建物の完成後、引渡し前のタイミングで買主による立会いがあります。建物の完成状態を現地で見て、施工不具合などがないかチェックする大事な機会で、内覧会や購入者検査などと言われています。
これに先立って売主側で完成検査をしているはずなのですが、その検査が杜撰なケースが多いですし、そもそも売主側の検査をまともにしていないことも多いです。買主目線で時間をかけてチェックするようにしてください。
建物の専門的なことはわかりづらいことが多くて不具合を指摘漏れすることもありますし、指摘しても売主に誤魔化されて対応してもらえないこともあるので、一級建築士に依頼して立ち会って頂くのもお奨めです。
内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)で依頼できます。
10.補修工事(手直し工事)
「9.引渡し前の立会い検査(内覧会)」で指摘した項目について、売主側で補修工事をします。簡単な補修工事ならば1日~数日で完了するものですが、指摘内容によっては手間がかかるケースもあり、引渡し日を延期しなければならないこともあります。
この補修工事も大変大事なものですから、無理矢理に引渡し日に間に合わせるよりも、可能ならば引渡し日を延期して丁寧に補修してもらう方がよいです。
11.補修後の再確認
補修工事が完了したら、必ず買主の目で現地確認し、きちんと補修できているか再チェックしてください。
このとき、補修箇所だけではなく新たなキズ・汚れの有無ができていないかにも目を配ってください。なぜならば、補修のために出入りした業者によりキズ・汚れが増えていることも少なくないからです。
この再確認で新たな指摘事項があったときは、その補修後の確認も忘れないでください。
12.金銭消費貸借契約
金銭消費貸借契約とは住宅ローンの契約のことで、買主(=債務者)と金融機関(=債権者)の間で締結する契約です。
その時期はもう少し早くて「9.引渡し前の立会い検査(内覧会)」の前に行うこともありますので、金融機関や不動産会社と日程や段取りを確認しあいましょう。
この契約は最後の決済・引渡しと同日に行うこともあります。
13.残金決済・引渡し・登記申請
引渡しの当日には、引渡しだけではなく売買代金の残金決算や登記申請も行います。
引渡しはその住宅の鍵を受け取ることで買主がそのときから住宅を使用することができるようになります。
残金決済は住宅ローンの融資金と用意しておいた現金で支払うものです。4,000万円の新築住宅を契約して手付金を200万円支払っていたならば、住宅ローンの融資金と現金を合わせて3,800万円、用意しなければなりません(諸費用分も別途で必要)。
登記申請は司法書士が行いますので、事前もしくはこのときに提出する書類をもって手続きを進めてもらいましょう。残金決済・引渡しが完了したのを見届けてから登記申請をしてくれます。
以上が、新築住宅(建売住宅)の売買契約から引渡しまでの流れです。わからないことがあれば、不動産会社に遠慮せずに質問して教えてもらいながら進めることも大事です。
次回は、「新築住宅(建売住宅)の売買契約後、引渡しまでの注意点」を解説します。
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執筆者
ホームインスペクションのアネスト
住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。