新築住宅の引渡し前のチェックポイント

新築一戸建て住宅を購入して、建物の完成後、引渡し前に買主が確認しておくべき大事なチェックポイントを解説します。完成済みの建売住宅を購入した人が引渡し前にチェックすべきことでもありますので、購入した新築物件が未完成か完成済みかに関わらず参考になります。

引渡し前にチェックすべきことは、大きく分けて以下の3つです。

  • スケジュール
  • 書類
  • 内覧会(引渡し前の完成チェック)

いずれも大事なことですから、順を追って説明していきます。

内覧会から引渡しまでのスケジュールのチェック

最初に解説するのは、内覧会から引渡しを受けるまでのスケジュールのチェックポイントです。内覧会とは、建物の完成状態を買主が確認する大事な機会です。この内覧会や引渡しまでに至る流れを覚えておきましょう。

引渡し前までスケジュールのチェック

契約日から引渡しまでの流れ

建売住宅の購入なら売買契約、注文建築の発注なら工事請負契約を締結しますが、この契約日から引渡しまでの流れは以下のとおりです。

  1. 契約(売買契約 or 工事請負契約)の締結
  2. 建物の完成
  3. 建築業者や売主の自社検査
  4. 買主(注文建築なら施主)による完成チェック(=内覧会)
  5. 補修工事
  6. 買主(注文建築なら施主)による再チェック
  7. 引渡し(同時に残代金の支払い)

これが一般的な新築一戸建ての契約から引渡しまでの流れです。

外構工事が契約対象に含まれるなら、その外構工事も完了してから内覧会を実施して引渡しを受けることが望ましいですが、取引によっては外構のみは建物本体の引渡し後に完成することもあります。その場合は、外構工事代金の支払いはその完成後にすべきですから注意してください。

内覧会と引渡しの日程に要注意

前述の「契約日から引渡しまでの流れ」のなかでも内覧会と引渡しの日程の設定には十分に注意してください。このスケジュールに無理があることが要因の1つとなり、大きなトラブルに発展することが多いからです。

内覧会は必ず建物完成後に実施

内覧会とは、前述したように建物の完成状態を買主(注文建築なら施主)が確認する機会です。確認といっても何となく見た目で「完成してそうだ」ということを見るわけではありません。施工不具合がないか、契約した通りのものが建っているかチェックしなければなりません。

当然のことながら、こういったチェック作業は建物が完成していないことには適切に実施できませんので、建物完成後に内覧会を開催すべきなのです。

これは当然のことなのですが、工事が遅延したときなどには、未完成の状態にも関わらず売主や建築業者が強引に内覧会を実施しようとすることがあります。これでは、完成していない部分をチェックできないのはもちろんですが、養生シートや障害物などで隠れている部分の施工不具合などをチェックできません。

内覧会は引渡し前の大事な完成チェックですから、必ず建物の完成後に行うよう日程を設定してください。

内覧会と引渡し日には1~2週間のゆとりが必要

「契約日から引渡しまでの流れ」に記載しているように、内覧会と引渡しの間には「補修工事」と「買主による再チェック」があります。内覧会で指摘した施工不具合等を建築業者に補修してもらってから、その補修結果を再確認するわけです。

これも大事な機会であることがわかりますね。

そのために、内覧会の開催日と引渡し日の間にはゆとりある日程を設けておきたいものです。内覧会で見つかる指摘がどういったものか、指摘したことに対してすぐに補修対応できるのかといった不確定要素があるため、ゆとりをもちたいものです。

できれば、2週間以上の期間を設けておくことをお勧めします。

しかし、引渡しや引越しのスケジュールが厳しい人も多く、2週間の余裕を見られないケースもあります。最低でも1週間以上はあけておくべきです。

内覧会に一級建築士が同行するサービスを行っているため、普段から多くの買主からお話を聞くことがありますが、内覧会の3日後に引渡しでその翌日には入居するというスケジュールを組んでいる人もいて驚きます。内覧会で指摘した事項を翌日にも補修を完了できることならよいですが、何日もかかってしまうこともありますから、スケジュールにはゆとりをもってください。

引渡しまでに受領すべき書類を要チェック

新築住宅を購入した人が引渡しまでに受領しておくべき書類は多いです。これら書類の名称を覚えておくのは困難かもしれませんので、このページをお気に入りに入れるなどして保存しておくことをお勧めします。

受領すべき書類のチェックリスト

買主が受け取ったかどうかチェックしておくべき書類の一覧は以下のとおりです。

  • 建築確認申請書(副本)・確認済証・中間検査合格証・検査済証
  • 設計図書(竣工図書)
  • 打合せ記録
  • 地盤調査報告書・地盤改良施工報告書
  • 設備機器等の取扱説明書
  • 保証書
  • 保険付保証明書
  • アフターサービス規準書
  • 住宅性能評価書(設計住宅性能評価書/建設住宅性能評価書)
  • 重要事項説明書に記載された書類(建売住宅の場合)
  • 工事完了・引渡し証(注文建築の場合)
  • 鍵の引渡し証
  • 工事業者の一覧(注文建築の場合)
  • 工事監理報告書(注文建築の場合)
  • 登記識別情報

見ての通りいくつもの書類がありますね。ただし、これらはすべての新築住宅に共通して存在しているものではありません。物件によっては該当しない書類もあるのです。

たとえば、住宅性能評価書とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく制度で、第三者評価機関が住宅の性能を表示しているものですが、任意の制度であることから利用していない物件は非常に多いです。

また、保険付保証明書は、瑕疵が見つかった際の保険制度によるものですが、この瑕疵保険に加入していない物件もあり、その場合にはこの書類はありません。

これらの書類の1つ1つについて、もう少し詳しく知りたい人は、「新築住宅の引渡し時の書類チェックリスト」をお読みください。

引渡し前の内覧会(完成チェック)

ここまでに何度か記載している内覧会でチェックすべきポイントも解説しておきます。この内覧会当日の対応を誤ることで、入居後の建築トラブルに遭遇したり、トラブルが大きくなったりすることがあるため、注意して対応してください。

内覧会(完成チェック)

内覧会とは完成検査

最初に内覧会についてきちんと理解しておきましょう。

内覧会とは、購入した建物の完成状態を買主(注文建築なら施主)がチェックする機会で、そのチェックする内容は主に施工不具合の有無と契約した仕様との照合チェックです。

参照:新築住宅の引渡し前の施主検査・完成検査(竣工検査)の立会いと注意点

施工不具合のチェック

施工不具合のチェックは、床や壁が傾いていないか、必要な箇所のビスが抜けていないか、断熱材の隙間がないか、必要なシーリングが施工されているかといったことをチェックすることです。施工ミスや著しく雑な施工がないか確認するものです。

ただし、完成状態ではすでに隠れて見られない部分もあることを理解しておきましょう。この時点のチェックのみで100%の確認はできませんが、それでもできる限りのことをやっておくことで、後のリスクを減らして後悔しないようにしておきたいものです。

契約した仕様との照合チェック

契約した仕様との照合チェックは、仕様書を含めた設計図書の内容通りに完成しているか確認するものです。特に注文住宅の場合、最初にいろいろな仕様・プランについて打合せなどで取り決めているはずですが、その注文通りに建築しているか確認するのは大事なことです。

ただし、完成状態では隠れて見られない部分の仕様までは照合ができません。また、使用材料の照合は現場で見ただけではわからないものが多いですから、建築業者から納品書などを提示してもらって確認することも考えましょう。

一級建築士の内覧会立会い・同行サービス

建物の完成後、引渡し前のタイミングで行う内覧会には、一級建築士などの専門家を同行するサービスが活用できます。建築の専門的な部分について知識も経験もなく自力で対応するには限界が浅いところにありますから、専門家に依頼するのは効果的な手段です。

ただし、この内覧会立会い・同行サービスでは、施工不具合のチェックをしますが、契約した仕様との照合チェックまでは含まれないことを理解しておきましょう。アネストの内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)サービスでは、必ず一級建築士が行っていますので、安心です。

引渡し前の完成チェックの事前準備と当日の持参物

内覧会、つまり引渡し前の完成チェックは、何の準備もせず当日を迎えると後悔することになるでしょう。必要な事前準備があるので、これを怠らないようにしてください。

最初に大事なことは、このページの記事を読んで内覧会がどういうものであるか理解しておくことです。そして、当日持参する以下のものを用意しておくことです。

  • メモセット(用紙と筆記具)
  • 間取り図(指摘箇所をメモすると後で場所を確認しやすい)
  • 設計図書(仕様の確認をする場合)
  • デジカメ or スマホのカメラ機能
  • メジャー(採寸用)
  • 脚立(3段程度でよい)
  • スリッパ(特に冬季に必要)
  • 懐中電灯(点検口の内部チェックに必要)
  • 付箋 or マスキングテープ(付箋ははがれ易いためマスキングテープの方がお勧め)

これらの持参すべき物ですが、売主や建築業者側で用意してくれていることもあります。たとえば、スリッパやマスキングテープがそうです。しかし、全ての業者が用意してくれるわけではありませんから、事前に何が準備されているか確認しておくとよいでしょう。

また、専門家の内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)サービスを依頼するなら、できる限り早い段階で予約しておくことも準備の1つです。直前でも対応してもらえることはありますが、内覧会の日程が決まり次第、予約することをお勧めします。

当日に立会いすべき人

完成チェックである内覧会の当日に立会いする人は以下のとおりです。

  • 買主(注文建築なら施主)
  • 売主(建売住宅の場合)
  • 建築業者(ハウスメーカーを含む)
  • 不動産仲介業者(仲介業者を介する取引の場合)

買主等が依頼した場合は、内覧会同行業者が立会いますし、カーテン等の業者が採寸のために同行していることもあります。こういった同行を依頼するときは、事前に売主や建築業者へ伝えておくようにしましょう。

上に挙げた当日に立会いする人は、本来なら立会いすべき人ではありますが、実際には売主が立ち会ってくれないケースもあります。自社の住宅を引渡し前の大事な機会であるにも関わらず、その当事者である売主が立ち会わないことには違和感を覚えるところですが、最近はそういうケースも少なくありません。

この場合、当日立ち会っている下請けの建築業者や不動産仲介業者へ指摘事項を伝えて補修工事をしてもらうことになります。

内覧会でのチェックポイント

最後に内覧会で買主(注文建築なら施主)が確認すべきチェックポイントの紹介です。1つ1つのポイントを全て挙げていくとあまりにも膨大なものになるため、まずはチェックすべき範囲を説明します。

建物の外部(外側)

基礎・外壁・バルコニー・屋根・樋・その他の外構部分です。主に目視で確認しますが、打診棒があれば基礎モルタルやタイルの浮きを確認するのに便利です。

外部では外構の確認も忘れないでください。意外と指摘すべき症状は多いです。たとえば、境界にあるフェンスのぐらつきや駐車場などの土間コンクリートの亀裂は補修を要求すべき症状であることが多いです。

建物の内部(居室側)

居室などの各スペースで床・壁・天井を丁寧に目視確認してください。ひび割れ、継ぎ目の著しい隙間が見つかることがあります。水平器(ホームセンター等で3,000円以下のものを購入可能)があれば、床と壁に著しい傾斜がないか凡その確認が可能です。

サッシ・扉は収納も含めて全て動作確認してください。動作の異常、重さを感じたときは指摘した方がよいでしょう。その他にも動作可能な設備(キッチン収納等の引き出しなど)や水周り設備(キッチン・洗面台・トイレ・浴室など)の排水テスト、照明の点灯テスト(ライトが付いている箇所に限られる)もしておきましょう。

床下・小屋裏の点検口内部

最後にぜひチェックしておきたいのは、点検口の内部です。点検口は、床下や小屋裏のように普段は隠れていて見られない箇所を点検するために設けられているものです。点検のためなのですから見なくてはなりません。

床下は床下収納庫が点検口を兼ねていることも多く、1箇所だけの住宅から複数箇所の住宅までいろいろあります。小屋裏は、どこかのお部屋か収納などの天井に点検口を設けていることが多いですが、屋根裏収納がある場合はその収納内の壁に設けていることもあります。

また、浴室の天井にも点検口が付いていて内部をチェックできることが非常に多いです。

点検口の内部は暗いため、ここで懐中電灯が役立ちますから、必ず準備しておきましょう。

残念ながら一部の住宅では点検口がないこともあります。この場合は、確認できる範囲が限定されていることを理解しておきましょう。

もし、内覧会での調査項目をより詳細に知りたいなら、「住宅診断(ホームインスペクション)の具体的な調査項目」がよい参考になるのでご覧ください。もしくは、アネストで行う内覧会立会い・同行(竣工検査・完成検査)の報告書サンプルを無料でダウンロードしてチェックリスト代わりに使用すると便利です。


以上が、新築住宅の引渡し前のチェックポイントです。買主がチェックすべきことは、スケジュール・書類・内覧会での完成チェックと多岐にわたりますが、いずれも大事なことですから、準備して対応しましょう。住宅購入は何かと労力が必要でエネルギーのいることですが、引渡しが近くなっているのなら、もうあと少し頑張ってください。

竣工検査・内覧会立会い
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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。