建売住宅が安い理由と後悔しないための対策

新築住宅を購入するとき、多くの人は建売住宅を選択しています。建築条件付き土地を購入して建物を建築する場合でも、間取りや仕様をほぼ決められた状態で建売同様の条件で契約している人も多いです。

こういった建売住宅を購入する人から、安いことへの不安を伺うことが少なくありません。また、購入後に後悔したくないという声を聞くこともあります。

住宅探しをしていてしばらくすると、探している地域の相場勘が培われてくることでしょう。インターネットで物件情報サイトを見ているだけでも、「このエリアでこのくらいの大きさなら、だいたい●●●~●●●万円くらいかな」といった感じですね。

一部で安いものがあれば魅力的でありながらも、なぜ安いのか?と不安になる人も少なくないようです。今回のコラムでは、建売住宅が安い理由(もしくは安く感じる理由)や購入して後悔しないためのチェックポイントを解説します。安さの理由がわかれば、安心して購入に踏み切れる人もいるでしょう。

人件費に関する建売が安い理由

建売住宅が安い理由にもいろいろありますが、そのうち人件費に関わることから紹介します。

人件費に関する理由

よくあるプランで設計が早い(プランの規格化)

建築物の設計には本来なら結構なコストがかかります。施主の要望や土地等の条件(規模・規制等)を考慮して、プラニングしていくのですが、何度もプランの見直しをしたり、施主と打合せを重ねたりと、設計業務はなかなか大変なのです。

しかし、多くの建売住宅では、この設計を簡素化しています。土地の形状・規模等により、プランを規格化して、いつも同じような間取りプランで分譲するのです。仕様も物件ごとに細かく打合せて決めることは少なく、標準仕様を決めておき、毎回のように同じ仕様で建築するのです。

こうすることで設計にかける人件費を安く抑えることができるのです。

このことは、オリジナリティのない住宅が大量供給される要因にもなりますが、市場に安く提供できるメリットにもなっているのです。

詳細設計を省いて設計料をコストダウン

設計に関するコストダウンとしてもう1つ大きな要素があります。

それは、詳細設計にコストをかけないという点です。注文建築で家を建てる場合は、詳細な設計図をいくつも作成するものですが、ローコストの建て売りや小さな不動産会社が分譲する物件では、平面図・立面図・配置図とあと2~3枚くらいの設計図しか作成していないこともあります。

それでは、現場で施工する下請け業者や職人が困りそうなものですが、「あとはだいたいいつもの感じで施工しておいて」といったやりとりで済ませていることがあるのです。これは、設計料を安くできるメリットがあるものの、詳細な仕様を取り決めていないことによるトラブルを招くできメリットにもなっています。

ここでは設計料という言い方をしていますが、要するとに設計者に関わるコストを抑えているわけなので、人件費を抑えているという側面もあります。

現場管理・施工監理を極端に削減

建築工事が始まってから完成するまで、建築会社は職人任せで放っておくだけで建物が出来上がるわけではありません。各種工事の手配(職人・下請けなどの手配)、工事進捗の確認、設計通りの施工か確認、施工不具合がないか確認といったことをしながら、進めていかなければならないので大変です。

それが、現場管理や施工監理にあたるわけで、欠陥工事を無くすためにも非常に大事なことです。

現場管理は現場監督が担当する業務で、施工監理は工事監理者が担当する業務です。

この部分の人をできる限り減らして人件費を抑えることで、建売住宅の販売価格を安く抑えていることも多いですが、このことは施工品質の良否に直結することなので注意が必要です。

具体的な人件費の減らし方は、1人の現場監督が担当する棟数を増やすという方法です。各物件の立地条件等にもよりますが、同時期に3~4棟なら適切に業務遂行できます。しかし、その倍以上も担当させられているケースもあります。

また、工事監理者は名義だけでほとんで現地へ足を運ばないことが多いです。事実上の名義貸しですから、これ自体も問題視されています。

現場管理や施工監理のコスト削減による建て売り住宅の価格の安さは、負の側面が非常に大きいものですから、買主は十分に注意したいものです。

工期を短縮

建築工事の工期を短縮することでコスト削減をするのも建築業界では当たり前のことです。何も悪いことではなく、無駄を削ってコストを圧縮するのはむしろ望ましいことです。

工期短縮が低価格化につながる理由の1つは、人件費の抑制です。同じ人数で工事日数が90日と80日では人件費が異なります。

それだけに、これが行き過ぎた場合、工事が雑になってしまうことがあるのです。工期の短縮によって人件費を抑える効果は小さくないので、行き過ぎになってしまいやすいとも言えます。

工期短縮によるコスト削減効果は他にもあります。それは、足場や簡易トイレなどのレンタル料の抑制です。建築会社が所有している物ならコストは大きく変わりませんが、意外とレンタルしている物も多いのです。

ちなみに、工期短縮の要因の1つに、工場による建築材料の加工・生産が挙げられます。これにより、現場で職人が行う手間が減ることで工期を短縮でき、安くできているので、基本的には歓迎されることです。

無理な突貫工事で工期を短縮しているわけでないなら、デメリットは小さく、メリットが大きいとも言えるでしょう。

多くの供給(スケールメリット)で建売が安い理由

次に、多くの物件を供給することで販売価格を抑えられる建売住宅の話です。最近は、一部の建売分譲業者が大企業化することで、大きなスケールメリットを活かしているケースが増えています。

スケールメリット

複数棟の建売なら土地の仕入れが安いことが多い

建売住宅の販売広告を見ていると、一棟のみではなく、複数棟の住宅を同時販売しているケースが多いことに気づく人もいるでしょう。

分譲業者が大きな土地を仕入れて、それを売りやすい大きさに分割し、建物を付けて建売住宅として販売しているケースですが、この場合、その分譲業者は相場よりも安く土地を仕入れていることが多いです。

地域ごとに、売れやすい住宅の規模というものがあり、それより非常に大きな土地は売りづらいです。よって、土地オーナーは一般消費者に売ることができず、不動産会社へ売ることが多くなります。もちろん、不動産会社の間でもその土地を仕入れるための価格競争が働くのですが、一般消費者と同じくらいの高い金額で購入しても利益を出しづらいので、どうしても安くなります。

また、田畑や山林を買い取って造成・開発している現場では、相当安い金額で土地を仕入れています。この場合は造成・開発費用が高くなりますが、それでも利益を出せる金額設定で買取しているはずです。

建築資材・設備の大量生産・大量仕入れで低コスト化

企業がスケールメリットを活かした仕入れをしようとするのはどの業界でも同じですね。建売業者でも同じことを考えて実行しています。多くの物件を供給する業者なら、大量に建築資材や設備を仕入れることで安く仕入れていますし、自社で生産する部材がある場合も安く生産することができますね。

建売業者の大規模化、大企業化が進んできたことで、このスケールメリットは大きくなっており、大企業化していない業者との価格差を見て安い物件だと感じるケースは多いです。

2000年頃までは、建売業者の大規模化はあまり目立たなかったのですが、最近は都市部に限らず地方でも顕著になってきており、新築建売住宅の低価格化を後押ししています。これは企業努力で安くなっているわけですから、基本的には歓迎する消費者が多いでしょう。

ちなみに、大企業となり、多くの建て売り住宅を供給する事業者はパワービルダーと呼ばれることが多いです。

販売業務の外注で大量供給しても営業マンの増員は軽微

新築住宅を大量供給するということは、それを販売する営業マンを増やすことになり、人件費が増えると思う人もいますが、実際にはそうでもありません。

販売業務は、他の不動産会社に仲介してもらうという形で外注できるからです。売主が自社で直接販売してもしなくてもよいので、上手く販売の外注を使いながら営業活動をしています。

これは、工事についても同じことが言えます。建築業界は何層もの下請け構造になっていますが、建売住宅の売主が施工する職人を直接雇用する必要はありません。、

よって、大量供給する場合でも営業マンなどを大量に抱える必要はなく、固定費を抑制できるので、これもスケールメリットの1つと言えます。

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建売が安いその他の理由

建売住宅が人件費や大量供給と関係ない理由で安くなっている理由もあります。なかには注意すべき理由もあるので気を付けましょう。

建売が安い他の理由

住宅展示場がなく販売コストが安い

ハウスメーカーの注文建築の家について、その販売活動の代表的な手段の1つとなっているのが住宅展示場です。住宅展示場のモデルハウスとはいえ家を建てるわけで、その建築・維持コストは高額です。これらは販売コストの1つですが、こういった販売コストがあまりかからないのが建売住宅の利点です。

完成後に販売する物件なら、実物を見てもらえるので展示場は不要です。何棟も分譲する現場なら、最初に建築した建物をモデルハウスに使うことができ、さらに、そのモデルハウスも分譲するわけですから、無駄が少ないです。

住宅展示場がないことは、注文建築の家に比べて、建売住宅を安く販売できる理由の1つになっています。

外装・内装・設備機器等の仕様レベルを落としている

個々の住宅によって差異はありますが、外装材や内装材、設備機器などの仕様レベルを落とすことでコストダウンしている建売住宅の割合は多いです。こういったところにあまりこだわりがないなら、特に問題ないとも言えます。キッチンやユニットバスなどの設備1つだけでも小さくない金額差がありますので、1つ1つの使用材料・商品の違いがあると考えてください。

オプション工事で追加請求

土地と建物本体の売買代金のほかに、オプション工事費等を請求されることがよくあります。2000年くらいまでなら、ほとんどすべての建売住宅で標準的な設備と考えられていたものが、今では別途費用を請求されることが増えています。

たとえば、網戸やカーテンレールなどがオプション工事となっているケースです。こういった項目がいくつもあると総額で馬鹿にならない金額になります。

オプション工事として販売価格とわけてしまうことで、販売価格が安く見えるような仕組みにしているとも言えます。もちろん、そのオプションが不要な人にとってはその分、安くなっているとも言えるので、人によってメリットにもデメリットにもなりえることです。

物件によっては、食器洗洗濯機や昇降式吊戸棚などの設備が標準になっていることもあります。設備レベルの違いは意外と大きいので、比較検討時には注意したいものです。

売れ残り物件の積極的な値引き

建売住宅として建築し、完成後もしばらくの期間、売れずに残ってしまった場合、積極的に値下げして販売しているケースがあります。こういう物件を見たとき、「非常に安い」と感じる人もいます。

しかし、元の金額で売れなかったということはニーズに合っていなかったわけですので、値下げ後の価格(もしくは最終的に売れた価格)が適正だとも言えます。とはいえ、早期に売り切るときに思い切った値下げをすることもあるので、値引き幅が適切かどうかは個々に判断するしかないです。

高い物件と比較して安く感じているだけ

企業努力などにより安く売っている建売住宅は多いですが、逆に高額な物件もあります。大手ハウスメーカーでは、ブランドイメージもあるし、高い利益率を狙う傾向が強いこともあり、建売住宅でも高級・高額物件が多いです。

そういった物件とローコスト路線で展開している住宅の価格を単純比較して、安いとの印象を持つ人もいますが、この比較にはあまり意味がありません。外装・内装・設備を含めた仕様のグレードがあまりにも違いすぎるからです。

アネストの住宅インスペクション

安い建売で後悔しないためのチェックポイント

購入したい住宅が安いのであれば、それは単純に大きなメリットですね。上に紹介した安い理由をよく理解して購入するのであれば、問題はないでしょう。ただし、この大きなメリットには理由があり、その理由によっては買主にとってリスクにもなりますし、実際に購入後に後悔している人も少なくありません。

そこで、売買契約を締結する前にチェックしておきたい最低限のポイントを紹介しますので、買ってから後悔しないように、できる範囲で対応しておきましょう。

建物の施工不具合・品質をチェック

安い建売住宅を購入するときに最も多くの人が心配していることは、建物を建築するときに手抜き工事をされていないかどうかという点です。アネストにも、毎日多くの人から建売住宅の購入に際してホームインスペクション(住宅診断)をしてほしいと問合せが寄せられています。

ホームインスペクション(住宅診断)とは、建物の施工不具合の有無をチェックするサービスで、購入前の利用が最もお勧めです。このサービスのことをよく知らない人は「ホームインスペクションとは?」をご覧ください。

本当は、建築途中に基礎工事や構造躯体工事、防水工事、断熱工事などの検査もしておくことをお勧めしますが、完成物件を購入する人は、完成状態で利用するとよいでしょう。

現場管理や施工監理の人員抑制や不適切な工期短縮は、手抜き工事・施工不具合の原因になっていることもあり、建売住宅の買主が安心して購入するためには、ホームインスペクションが有効です。

追加費用の有無をチェック

あなたにとって必要なものがオプション工事になっていないか契約前に必ず確認してください。オプションになっているならば、それがいくらになるかも契約前に確認すべきです。契約後に予算オーバーとわかって必要なオプション工事を発注できないとなれば後悔することになるでしょう。

追加工事に関することを売買契約の席になって初めて説明され、よく理解しないまま契約書に署名・押印してしまい、後から抗議したが聞いてもらえず、後悔したという話を聞いたことが何度かあります。その対策のためにも、現地へ内見に行ったときに質問しておきましょう。

地盤調査報告書をチェック

日本は全国どこでも軟弱地盤のリスクはありますから、どの物件であっても地盤の状況を把握しておきたいものです。特に、元の土地が田畑であれば、想定以上に地盤が弱いこともありますので、より注意したいところです。山林を造成している現場でもそうです。

田畑や山林を転用して複数棟の建売住宅を供給している物件では、地盤調査報告書を提示してもらい、地盤の強度・地質について説明を受けるようにしましょう。地盤改良工事をしている場合、その改良工事の内容についても説明を受けるとよいでしょう。

建売住宅や中古住宅の購入時に地盤が心配・不安なときのチェックポイント」も参考になりますが、アネストの新築一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)を利用すれば、地盤調査報告書を提出するとその内容を確認しアドバイスを受けることもできるので検討しましょう。

建物の仕様レベルが買主の希望に合うか

物件によって、外装材・内装材・設備などの仕様レベルに違いがあることは既に述べたとおりです。この仕様レベルが、あなたの求めるものと大きくずれが無いか確認することを忘れてはいけません。

わかりづらい仕様レベルの違いとしては、断熱・省エネ性能や耐震性能があります。住宅性能評価制度を利用している住宅なら、どの程度の性能の住宅なのか参考になりますが、この制度を利用していない物件の方が多いですから、見分けづらいところです。

当然ながら、それぞれの予算との兼ね合いもあって考えていくべきものですが、仕様レベルが大きくずれるならば、立地条件を緩和するなど(例:駅からもっと遠くても許容するなど)の対応も検討しましょう。

建物の完成や引渡しを急がせない

建売住宅とは言え、売買契約の時点では未完成(着工前や建築途中)ということもよくあります。そういった物件である場合、買主の都合により早く入居したいと考えて、完成や引渡しをせかすような要求はあまりしないがよいです。

無理な工事スケジュールを組むことで、施工ミスを誘発することがあるからです。

むしろ、工期にはゆとりをもってもらい、丁寧な施工を心がけてもらう方が、入居後の後悔をしなくてすむ可能性が高まります。ご注意ください。

未完成の建売住宅の引き渡しを受けない

アネストには、毎年のように、「建物が未完成の状態で残代金を請求されて支払ってしまった」「未完成なので引渡しされた」といった話が入ってきます。そのようなことをしようとする不動産会社側に大きな問題があるのは間違いないですが、買主側もよく注意すべきです。

未完成なのに引渡そうとするくらい工期の遅れがあるケースが多く、そういった物件は工事を急ぐことで雑な施工となっていることが少なくありません。実際に、完成後にホームインスペクション(住宅診断)に入ったところ、施工不具合が大量に発見された事例は何度もあります。

未完成の住宅については、引き渡しを受けないとはっきり拒否する必要があると覚えておいてください。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。