住宅の建築中に雨で濡れたときの対応方法と注意点

新築住宅を建築している途中で雨に濡れたので検査しほしいというお問合せを頂くことが少なくありません。せっかくのマイホームが建築中に、しかも大雨で濡れたとなれば心配になるのもわかります。

雨で濡れた要因には、そもそもきちんと養生していなかったことや養生していたものの、台風などの強い風で養生シート等が外れてしまったということもあります。いずれにしても濡れたのであれば、リスクと適切な対応方法を理解しておきたいものです。

雨濡れによる影響は、全くないこともあれば、多少の影響が出ること、または影響が大きく出ている住宅もあります。何よりも落ち着いて状況を把握し適切に対応するよう心がけましょう。ここでは、そのために必要な知識を身につけることができます。

建築工事の工程毎に雨濡れしたときのリスクについて簡単にまとめると以下の通りです。

  1. 基礎配筋の雨濡れリスクは大きくない
  2. 基礎コンクリート打設中の雨のリスクは大きい
  3. 土台や柱は雨濡れのリスクは大きくない
  4. 下地材(合板)が濡れたときは要注意
  5. 断熱材が濡れたときも要注意
  6. 床下に雨水が残ると大変

ただし、これはリスクの程度をまとめているだけであり、実際の影響は個々の住宅によって違いが大きいことを知っておきましょう。これまでに何棟もの住宅の雨濡れ後の住宅検査をしてきた実績がありますので、この点はしっかりお伝えしておきたいところです。

ここからは、上であげた工程毎に対応方法や注意点を解説していきます。

基礎配筋の雨濡れリスクは大きくない

基礎配筋の雨濡れリスク

最初に取り上げるのは、基礎の配筋工事中や配筋工事完了後・コンクリート打設前に雨が降ったときの状況についてです。

このタイミングの雨の雨量が多いときには、現場を見に行くと鉄筋がびしょびしょに濡れていて配筋のしたに水が溜まっていることがあります。この状況を見た建築主や買主の皆さんは、「こんなに濡れて鉄筋は大丈夫だろうか?」と心配することが多いようです。

「鉄筋が錆びないか?大丈夫か?心配なので検査してほしい」

この要望が多いのですが、実は住宅検査会社としてはこのお話をきいたときには、鉄筋よりも水溜りの排水処理の方が気になっています。鉄筋は乾燥すれば問題ないからです。多少の錆が影響することもありません。しかし、きちんと雨水を排水せずにコンクリートを打設してしまうとコンクリートの強度に問題が生じる可能性があるのです。

雨水が溜まったままコンクリートを打設することは通常ではありえないですが、現場管理をきちんとしていない建築会社では適切な対応、つまりコンクリート打設前に排水する時間をとることができず、結果として排水せずに(又は排水状況が不十分なままで)コンクリートを打設し始めたケースがあります。

基礎配筋工事中の雨濡れリスクは高くはないものの、建築会社が当然にとるべき対応をしてくれないようなことがあれば、問題が大きくなりますから注意は必要です。きちんと排水してからコンクリート打設をしてもらうことを確認してください。

基礎コンクリート打設中の雨のリスクは大きい

基礎コンクリートを打設している途中に雨が降ってきたときはどうでしょうか。

前述した「溜まった雨水を排水せずにコンクリートを打設」するのと同じで、コンクリートの強度に大きな影響を及ぼす可能性がありますから、これはやめてもらいたいものです。雨といってもごく僅かでほとんど影響がない程度のときもあれば、雨量が多くて影響が大きいこともあります。

建築主(または買主)の自宅付近では雨量が多かったが、建設現場ではほとんど降っていないこともありますし、その逆もあります。それだけに、現場にどれだけの雨量があったのかにもよりますね。

ただし、事前に天候を確認しておきリスクがあるときのコンクリート打設は中止すべきものですから、リスクあるときに実行してしまう建築会社の姿勢には疑問を感じます。その後の現場の管理も適当になるのではないかと感じるのも無理はないでしょう。

雨水が混ざった可能性があるときには、基礎の型枠を撤去してからコンクリートの仕上がりを目視確認すること、さらにシュミットハンマー試験などでコンクリート強度を確認することを検討してください。ただ、シュミットハンマー試験は実施時期やその精度などの問題もあるため、検査会社とよく相談するとよいでしょう。

目視調査で著しいジャンカやひび割れなどが確認されたときは要注意ですから、建築会社に見解を確認することとともに出来れば第三者の住宅検査で安全性を確認するとよいでしょう。

土台や柱は雨濡れのリスクは大きくない

土台の含水率の計測

基礎工事を終えた後は土台を基礎に設置していく工事です。さらには、柱を組んで上棟へと工事が進んでいきます。この過程のなかで雨に降られたときは、土台や柱などの構造材が雨濡れすることになります。

土台や柱といえば、家の骨組みとなる大事な部分ですから、雨濡れした後に建築会社から「これくらいは大丈夫ですよ」と言われても心配になるのも無理はありません。

結論から先に言えば、濡れたのが土台や柱だけであれば、多くの場合は大きな問題になることはありません(絶対に大丈夫というわけではないですが)。

まずは、それ以上の雨濡れを防ぐためにしっかりと養生してもらいましょう。そのうえで乾燥状態を確かめることです。その方法は、水分計を使って含水率を計測することがお勧めですので、建築会社に実施してもらうか、心配なら第三者の住宅検査会社に依頼しましょう。

濡れた材料が、土台や柱だけではなく、下地材に及ぶ場合は注意が必要ですが、これについては次に触れておきます。

建築中の住宅検査
建築中の住宅検査で施工ミスを回避

構造用合板が濡れたときは要注意

工事が進んでいけば床や壁の下地材が施工されていきますが、その状態で雨濡れしたときについて解説しておきます。

雨濡れがひどいときには、床の構造用合板が乾燥する過程で変形(反りなど)することがあります。また、カビが繁殖してしまうこともありますので、濡れた後の状態をよく確認しなければなりません。十分に乾燥した状態になってから、変形がないか確認してください。乾燥する前にフローリングを施工するようなことがあれば、カビ・腐食が心配されます。

また、壁の構造用合板でも反りなどの変形・カビの有無を乾燥したときに確認しましょう。

検査してきた経験からいえば、影響が出やすいのは壁より床です。床には雨水が滞留しやすいことが影響しているのでしょう。

積み上げられた構造用合板

注意したいのは施工済みの下地材(構造用合板)だけではなく、施工前に搬入されて現場に置かれているものです。通常ならば、雨水の被害にあわないようにするため養生しているはずですが、それがされていなかったり強風で養生していたシートが飛んでいったりして雨濡れしていることがあるのです。

その時点で雨濡れがひどければ、新たに材料を納入すればよいのですが、そのまま施工してしまう建築会社もありますから、施工前に確認しておきたいところです。

断熱材が濡れたときも要注意

雨が降って断熱材が濡れたと相談を受けるケースもあります。構造用合板などが濡れたという相談に比べると少ないですが、このような被害も意外と多いようです。相談されるケースの多くは、断熱材としてグラスウールを使用している場合です。住宅で最も多く使用されている材料です。

外壁面に施工されたグラスウールが濡れていると重みで下がってきてしまい、壁内に隙間が生じて断熱性能に問題が生じてしまいます。

表面のフィルムが少し濡れた程度でその乾燥状態に問題ないようであればよいのですが、程度によっては交換が望ましいことは多いです。

また、断熱材の裏側(壁内)に雨水が回っている場合、乾燥しづらいこともあるので、浸水した雨量が小さくないようならば、取り外して状況を確認することが望ましいです。壁の下地材を施工してしまうと確認できなくなるため、早期に確認するようにしてください。

床下に雨水が残ると大変

基礎工事の土台設置工事の次は上棟へと進んでいきますが、上棟する前に1階の床材を施工することが多いです。この床材を施工してから床下へ雨水が浸入して水溜りができてしまっていることもあります。雨水が吹き込んだり、基礎の水抜き穴から逆流したりして起こることです。

施工途中に床下に溜まった水はできる限り早期に排水して乾燥させる必要がありますが、ひどい現場では建物が完成したときにもまだ残っていることがあり驚かされます。

早期に排水して乾燥させれば何も問題が起こらないのに、長期間の放置により床下でカビや腐食が確認されることがあります。床下の湿度が高い状態が長く続くのはよくないわけです。

適切な対応方法としては、早期に排水及び乾燥させて木部の含水率を計測することです。乾燥していなければ、機械的に風を送って換気量を増やすなどの対応をしたうえで、再度、含水率を計測してください。

第三者の住宅検査で計測
含水率を計測する様子

建築途中の雨濡れ被害に関するご相談は多いですが、結果的に全く問題ないものもあれば、被害が大きいものもあります。早期の乾燥と含水率の確認、乾燥後の状態の確認が必要なことが多いので、これを意識して対応しましょう。

建築中の住宅検査
建築中の住宅検査で施工ミスを回避

関連記事

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。