売買契約を締結する前に注意すべき点の1つが、設計図書(せっけいとしょ)などの大事な図面・仕様書などの要求です。設計図書などの資料は、その住宅のことをよく理解する為にかかせないものであり、購入後に適切にメンテナンスをしたり、補修やリフォームをする際に必要となります。
新築住宅の場合
新築住宅を購入すれば、本来であれば設計図書は当然に売主から買主へ渡されるものです。売主・設計事務所・施工会社・買主のいずれもが、設計図書を保有するのが最も良いでしょう。しっかりした不動産会社や施工会社であれば、当然にこのようにしています。
この設計図書を受け取るタイミングですが、まず契約前(購入判断の前)にそのコピーをもらいましょう。設計図書からその住宅のメリットやデメリットを読み取ることができ、購入判断の為には非常に重要なものです。
仮に、契約前の段階で詳細な図面を受領していない場合には、契約時には必ず、受領するようにしてください。
しかし、不動産会社によっては
「平面図と立面図しか渡していません」
「会社に来てもらえば閲覧は可能ですが、渡していません」
「いつも簡単な図面程度しか渡していません」
などと、主張をすることもあります。
「図面を見られるとまずいことでもあるのか?」と思われても仕方ないことですね。購入前の住宅診断(ホームインスペクション)を依頼された方を介して図面の準備をお願いしても、なかなか対応しようとしない業者も見られます。
もちろん、これらは非常に対応の悪いケースですが、実際にこういったことは少なくありませんので、ご注意ください。「それが会社の方針です」などと悪びれずに言うこともありますが、同じ会社でも担当者によって対応が異なることもあるようです。
まず、契約前の段階でどのような資料を受領できるのかよく確認しておき、上記のような対応であった場合には、強く要求するようにしてください。万一、契約前に要求しても断られるようであれば、そのような不動産会社からは購入するべきではないでしょう。
既に契約済みの方で、不動産会社から設計図書の提出を拒否されている方は、粘り強く交渉するようにしましょう。
ちなみに、注文住宅の場合は売買契約ではなく建築工事請負契約になりますが、その契約時に設計図書のうちできる限り多くを受領するのが最も良いでしょう。契約後に詳細図を作成していくことが多く、契約時点では詳細図までもらうことは難しいです。
それでは、設計図書にはどのようなものがあるのか見ておきましょう。
- 建物概要・設備概要
- 仕様書
- 内部・外部仕上げ表
- 地積測量図
- 敷地配置図
- 各階平面図
- 立面図
- 断面図
- 矩計図
- 平面詳細図
- 基礎伏図
- 各階床伏図
- 小屋伏図
- 軸組図
- 電気設備図
- 給排水設備図
- 金物配置図
- 建具リスト
- 壁量計算書または構造計算書
- 地盤調査報告書 → 地盤調査をしていない場合はございません
- 確認申請書(1~5面)
- 中間検査合格証 → 自治体によってはない場合もございます
- 検査済証 → 完成後に必ず受領しましょう
作成する図面は構造種別等によって異なりますので、上のリストは参考と考えてください。建売住宅なら、電気設備図や給排水設備、建具リストなどを作成していないことも多いです。
中古住宅の場合
中古住宅の売主が新築当時に建築業者から設計図書を受け取っていないこともあれば、受け取っていたものの紛失してしまったということも多いです。また、今の売主が何年も前に中古で購入していて、その前の売主からもらっていないということも少なくありません。
とにかく、中古住宅の場合、売主が設計図書を保管していないことは少なくありません。
買主としては、不動産仲介業者を介して売主に設計図書の有無を確認してもらい、有るならばきちんと引き継げるように依頼してください。本来ならば、当然に新しい所有者(買主)が引き継ぐべきものですが、引き継いでいないことも少なくありません。
売主が持っていないのであれば、買主が設計図書の引継ぎを要求しても頂くことはできませんね。ちなみに、住宅診断(ホームインスペクション)は、簡易な間取り図だけでもあれば対応はできます。
また、対象の中古住宅が過去に大きなリフォーム(増改築・補修工事・耐震補強工事などを含む)を行っていた場合で、その図面や仕様書があれば、それらも引き継ぐようにしましょう。
不動産会社の営業マンによっては、悪意なく、図面の引き継ぎの重要性を知らずに手配しようとも売主へ確認しようともしないことがあります。買主から働き掛けが必要です。
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執筆者
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。