建売住宅の床鳴りの原因と対策

住宅診断(ホームインスペクション)に関わる数々のお問合せの中で、住まいの床鳴りに関するご相談も非常に多いです。床鳴りにも、軽微で心配する必要のないものから、構造的な問題があり早期に対処した方がよいものまでいろいろなケースがあります。

このコラムでは、床鳴りの原因として考えられる一般的なケースと原因の確認・調査方法を解説したうえで、床鳴りに関する注意点も紹介します。

この記事は建売住宅を購入して居住し始めてから床鳴りに悩まされている人を対象に書いておりますが、注文建築で家を建てた人や中古住宅を購入した人、リフォームした後の床鳴りで困っている人でも活用できます。

アネストの住宅インスペクション

住まいの床鳴りの原因

床鳴りに気づいたとき、単純に音が気になるので何とかしたいという悩みをもつこともあれば、構造か何かにおいて重大な瑕疵・欠陥があるのではないかと心配することもあります。結果的に大した問題でなければよいのですが、建てた工務店やハウスメーカーに言っても、「ただの乾燥伸縮ですから大丈夫ですよ」の一言だけということが多くて、心配が収まらない人は多いです。

まずは、床鳴りの原因となりうることにはどういうことがあるのか紹介しましょう。

床材の乾燥伸縮・変形

建売住宅の売主や建てた工務店がよくいう「ただの乾燥伸縮が原因」ですが、これが真実であることは多いです。新築してしばらくの間は、湿度などの条件によって伸縮や多少の変形が起こることがあり、床材(フローリング)の継ぎ目の実(さね)のところが擦れて音鳴りしやすいのです。

広範囲に床鳴りしていたものの、しばらくすると鳴らなくなることもよくあるものです。床鳴りがなくなっていたことに気づかず、ある時に思い出して「そういえば床鳴りしなくなったね」と家族で話すこともあるでしょう。

しかし、必ずしも自然に収まるとは限らないことと、どの程度の期間で収まるかは住宅によって異なるため、鳴らなくなるまでは安心できない人も多いです。3ヵ月経過しても床鳴りが減らない、または半年経過しても床鳴りが少なくないというときは、別の原因を疑うとよいです。

施工不良による床鳴り

いつまでも床鳴りが収まらないときや、新築当時にはなかった床鳴りが生じたときには、施工不良がないか確認した方がよいです。新築工事の施工不良が原因であるならば、早い段階で売主や工務店に原因追及と補修を求める必要があります。

また、施工不良にもいろいろありますから、床鳴りと関係のある施工不良の事例を見ていきましょう。

床材(フローリング)の施工不良

1つ目は床材そのものの施工不良です。床鳴りで問題になるケースの多くは床材がフローリングです。このフローリングの施工が雑であるために、床鳴りが生じていることがあるのです。しかし、フローリングの問題かどうかを判断することは意外と難しく、いろいろなケースを見ている建築業界人が経験から予測するか、他の可能性をつぶすかしなければ判断できません。

床下地材の施工不良

フローリングの下には下地材(ボード)がありますが、この下地の施工不良が原因となっていることもあります。施工が粗くて下地材の一部(特に継ぎ目付近)が盛り上がるようになっていたこともありますし、建築中の大雨で濡れたことにより下地材が変形してしまっていたこともあります。

下地材はフローリングを剥がすことで上から目視できますが、気軽に剥がせるものではないですから、確認の優先順位は後になることが多いです。

土台・大引き・根太の施工不良

床の下側は、土台や大引きなどの構造材、または根太によって支えられていますが、これらの施工方法や使用材料の問題で床鳴りが生じていることがあります。たとえば、根太が部分的に抜けているために、その付近でひどい床鳴りが生じていたケースがあります。

※下の写真は床材・下地材の下にある根太(縦に何本もあるもの)です。

根太

束の施工不良

床材を下から支える大切な部位の1つに束というものがあります。束は新築の建売住宅では鋼製のもの(いわゆる鋼製束)が多いですが木製のものもあります。古い中古住宅では木製が多いですが、これがシロアリの被害にあっているケースもよく見られます。

仕様・プラニングの問題

現場での施工不良というよりも、仕様やプランニングに問題があると予測される床鳴りもあります。たとえば、根太を使わない根太レス工法を採用していた住宅で床鳴りがひどいので束を増やして補強したところ解消したということもあります。

この手の原因の場合、設計時点では問題ないと判断したものの、実際に出来上がって生活し始めてからわかることが多く、設計者の経験や配慮といったものが大事だとわかる事例です。

著しい劣化・腐食

新築の建売住宅では、完成してすぐに著しい劣化や腐食ということは普通ではありません。しかし、何らかの原因により床下地材や束などの劣化が早期に著しく進行したため、床鳴りという症状が現れたケースがあります。

床下で漏水していることに気づかず、新築から2年程度で腐食してしまい、床鳴りが起こった事例では、床鳴りをきっかけに床下調査を行うことで漏水というもっと大きな問題に気づけたのですが、床鳴りがなければ漏水被害は拡大していたことでしょう。

また中古住宅では、床下の漏水被害がなくても床下の湿度状態や経年により、下地材や根太の激しい劣化・腐食が進み、床鳴りの原因になっていることもよくあります。

床鳴りの対策

床鳴りの原因となりうることは分かったと思いますが、次に何をすればよいのでしょうか。床鳴りとは言え放置していては、重大な瑕疵を見落として、家の寿命を縮めることになりかねませんから、ここで挙げたことを参考にして対策をとりましょう。

原因特定のためにはホームインスペクション

自宅の床鳴りがどの原因に当てはまるのか気になるところですね。これを確認するためには、自宅のホームインスペクション(住宅診断)をすることをお奨めしますが、まずは自分でできる範囲のことをしてみましょう。

床上からの確認

最初にするのは床上からの確認です。つまり、床材(フローリング等)の上から目視や歩行感触によるチェックをするのです。ただ、目視では明らかな異常でもない限りプロでもわかりづらいですから、注意深く観察して何にも気づかなければ、歩行感触に移りましょう。

歩行感触と書くと大げさですが、ようは歩いたり体重をかけたりして床鳴りする箇所を特定します。気温・湿度などの条件によって鳴るときと鳴らないときがあるかもしれませんが、そういった条件面も意識して日や時間帯を変えて確認するとよいでしょう。

湿度の違いで収まるようならば、伸縮によるものということがよくありますが、この確認だけで断定してしまうと後悔することもありますので、次の確認もしておきましょう。

床下の確認

床下からの確認

次に確認すべきは床下の状況です。床下は点検口から覗いて見るのですが、可能ならば床下へ進入して安全に移動できる範囲で確認したいものです。しかし、床下では配管や束を動かしてしまうと別の問題を引き起こすことにもなりかねないため、あまり無理はしない方がよいです。

点検口から頭を突っ込んで目視し、何か不審な点があれば専門家に見てもらうとよいです。床鳴りする位置から点検口までが遠い場合は、売主や専門家に任せて調査してきてもらうとよいでしょう。この調査により、根太や床に問題があるケースが見るかることは少なくありません。

床下地材の確認(床上・床下で原因特定できないとき)

床下地材の確認はなかなか難しいです。上はフローリングが貼られていますし、床下側には断熱材が施工されていることが多いからです。つまり、隠れて見られないものなのです。

それでも、下地材が原因として疑われる場合には、フローリングを部分的に剥がして確認するか、床下側の断熱材を剥がして確認することになります。この作業は売主などに依頼してもらった方がよいでしょう。

但し、復旧作業にも手間と費用がかかりますし、剥がしたフローリング材は再使用が難しいです(断熱材は丁寧に剥がせば再使用できることが多い)から、前に挙げた床下や床上で確認できることを先にしておいて、それでも原因がわからないときや下地材が疑われるときに試すとよいでしょう。

※下は工事中の写真ですが、大工が乗っているところが床下地材です。

床下地材

売主に連絡と現地確認

床鳴りの原因を推測した後、建売住宅ならば売主へ連絡して現地確認を求めてください。実は、原因を推測するよりも前に売主に連絡して現地確認を求めても構いません。誠意ある売主ならばきちんと調査して原因と対策方法を報告してくれることでしょう。

但し、この記事を読んでいる方のなかには、売主が対応してくれないために、インターネットで調べてここにたどり着いた人も多いでしょう。その場合、出来る範囲でよいので自分自身で原因を確認し、売主に意見をぶつけてみてはいかがでしょうか。これにより対応が変わることもあります。

売主に現地確認してもらった後は、原因について見解を提示してもらってください。補修すべき症状ならば、合わせて補修案も提示してもらいましょう。そして、この提示は書面で出してもらうことです。後で言った、言わないのトラブルになることを避けるためです。

住宅購入者が知っておくべき床鳴り対応の注意点

床鳴り対応の注意点

床鳴りの対応方法についてある程度はわかってきたと思いますが、対応する中で知っておきたい注意点を紹介します。失敗しないため、ここに書いていることまで抑えておきましょう。

床鳴りはただの症状

床鳴りは、ただの症状です。人で言えば熱が出たり咳をしたりしますが、これに当たります。そして、原因は別にあるわけです。風邪やインフルエンザが熱などの原因なわけです。同じように床鳴りは症状ですから原因を知る必要があります。原因を考えずに、「とりあえず床の継ぎ目からボンドでも注入しておきます」という対応にならないようにしましょう。

この対応で床鳴りが収まっても、根本原因を解決できていなければ、見えていない箇所で被害が広がる可能性があるからです。

前述した床鳴りの原因確認の作業を行うことと、床鳴り以外にも何か症状がないか建物を点検することをお奨めします。たとえば、壁や天井にひび割れがないか、床や壁が傾いていないか、基礎にひび割れがないかといったことを確認するのです。

もし、建物の基本構造部や地盤に問題がある場合には、床鳴り以外の症状が出ていることが多いからです。建物に現れているあらゆる症状を確認したうえで、対応を最終判断することが理想的な住まいとの付き合い方なのです。

建物の症状の記録を残す

建物全体を点検した後は、見つかった症状についてきちんと記録することが大事です。床下で見つかった症状や壁・天井などのひび割れは写真撮影しておきましょう。見つけた日付も記録しておきましょう。これが、後の争いになったときの証拠になることもありますし、交渉する上でお互いに便利に使えることがあるからです。

たかが床鳴りと思わず、1つの建物の症状がでているかもしれないと考えて、建物を点検するきっかけにしてはいかがでしょうか。永くマイホームと良いお付き合いをしていくための第一歩にもなりうるでしょう。

関連記事

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。