住宅購入時に地盤が心配・不安なときのチェックポイント

購入した住宅の地盤に問題があり、地盤沈下によって建物が傾いてしまったら大変だと思いません?

日本国内では、地盤が弱いとされているところが多く、地盤沈下や建物の傾きといった問題が発生することが少なくありません。せっかくの新居でこのような問題に直面してしまっては、対応する労力もコストも大変ですから、ぜひとも避けたいリスクです。

新築の建売住宅や中古住宅を購入する人に役立つ住宅地としての地盤に関するチェックポイントや注意点を紹介しますので、できれば契約を締結する前にできる限り確認しておきましょう。

 地盤がダメなら住宅購入を後悔する

住宅を購入する人のなかには、建物は大丈夫だろうか?安心できる施工か?劣化しすぎて買ってからコストがかからないだろうか?と心配して住宅診断(ホームインスペクション)を依頼する人も多いですが、地盤については意識していない人が多いです。

しかし、地盤に瑕疵があれば、せっかく購入した住宅を無駄にしてしまう可能性があることを理解しておかなければなりません。

建物が良くても地盤が駄目なら台無しになる

建売住宅を購入する際に建物を専門家に診断してもらって問題なかったものの、購入して2年くらい経過したら建物が傾いていることに気づいたと相談を受けることがあります。購入時点では傾いていなかったのに、その後に傾いたということは地盤が沈下した可能性が考えられます。

地盤に問題があり、その補強工事や改良工事が不十分であれば、その後の対応・対策には大きなコストがかかることも多いため、建物がよくても住宅購入が台無しになってしまうわけです。

地盤沈下の対応にはコストがかかる

地盤が弱ければ適切な地盤補強・改良工事が必要

地盤がよくない土地が多いことはご存知の方も多いでしょう。建築前に地盤調査を行うと軟弱地盤と判定されるなどして、地盤補強や改良工事が必要だと判断されることは多いです。

逆にいえば、地盤がよくなくてもそれに応じて適切な地盤補強や改良工事をすることで安心度が増すということでもあります。もちろん、はじめから地盤の強い土地が理想ではありますが、これに固執しすぎると購入する対象物件が絞られすぎる地域もあるので検討してみましょう。

地盤のチェックポイント

住宅を購入する前に地盤について知るためのチェックポイントを紹介します。ここで挙げるポイントは、新築の建売住宅や中古住宅を購入するときに活用できるので、契約前にチェックしてください。

立地を参考にする地盤のチェックポイント

地盤についてチェックするとき、まず立地に関することやや敷地そのものから確認していくとよいでしょう。チェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 川・池・沼が近い以前に田んぼだった(埋立地)
  • 盛り土ではないか
  • 過去の地盤調査データを参考にする

近くに河川、池、沼があれば、その地域の地盤は弱いことが多いです。土地勘のないエリアで購入するならば、地図を眺めて確認するとよいでしょう。

以前に田んぼや畑であった土地は、軟弱地盤であることが多いです。田んぼから住宅地に転用してから長く経過していなければ、心配はより大きなものとなります。

丘陵地の住宅街では、斜面地を造成して宅地を作っていることが多いですが、そういったところでも注意が必要です。斜面地を平らな土地にするためには、元々の地面を削って平らにした部分(切土)と、埋めて平らにした部分(盛り土)があります。

盛り土は、新しく土を入れて造成しているので、どうしても地盤が弱くなりがちです。斜面地を造成した物件を購入するときは、その土地が切土か盛り土か売主に確認しましょう。但し、中古住宅の場合は売主が把握していないことも多いので、すぐに確認できないことも多いです。

地盤データは、インターネットや役所で地盤データを無料で閲覧できるので購入物件周辺の調査データを見ておきましょう。地盤Mapで見ると強いところと弱いところが混在していることに気づくでしょう。河川や池の近くでも地盤が弱くないデータもあります。つまり、河川・池の近くというだけで判断してもいけないということでもあります。

ここで述べたことは参考としておき、これだけで判断しないように覚えておきましょう。

地盤を確認するうえで最も信用できるのは、その土地の地盤調査結果の閲覧です。これについては、後述しています。

建物・外構を参考にする地盤のチェックポイント

地盤について確認するとき、実はその土地に建築されている建物などを見ることが有効な参考情報となることも多いです。その理由は、地盤に問題があり、地盤改良・補強工事が不適切であるならば、建物等に何らかの症状が出ていることが多いからです。

実際にチェックすべきポイントは以下のとおりです。

  • 外壁のひび割れ
  • 室内の壁・天井のひび割れ
  • 基礎のひび割れ(床下は大事なチェックポイント)
  • 建物の傾き
  • 庭の陥没・犬走りのひび割れ
  • 外構のひび割れ

地盤が悪くて地盤沈下を起こし建物が傾くなどしたとすれば、上のような症状が出てきます。このような症状がみられたときには、地盤を心配した方がよいというわけです。逆に言えば、これらの症状が全くなければ地盤についてはそれほどまで強く心配しなくてよいということです。

大事なことはこれらを単独ではなく、総合的に考慮して検討することです。判断は簡単ではないので、専門家に相談して診てもらうのも有効な方法です。

ちなみに、軟弱地盤と地盤改良・補強工事の不十分さが原因で建物に症状が出てくるのは、建築されてから初めの数年間が最も多いです。地盤に対して建物の重みがかかりはじめてから、影響が出てくるので何年も何の影響もなかったのに急に建物が傾くということはほとんどないのです(他の理由ならありうる)。

地盤調査報告書をチェック

地盤をチェックする上で最もよい方法は、地盤調査報告書を入手してその内容を確認することです。周囲の状況を見たところで、購入する物件も同じとは限らないため、周囲のことはあくまでも参考にしかならないのです。

盤は、お隣同士でも全然違った調査結果が出ることもありますし、条件によっては1つの土地のなかでも場所によっては全然違った調査結果が出ることもあります。たとえば、前述した切土と盛り土が1つの土地内に混在しているときには、知らない人が見ると驚くような調査結果の違いを目にすることもあります。道路から見て土地の西側は地盤が弱くて東側は固いということもあるのです。

この地盤調査報告書は、建売住宅を購入するときには基本的には閲覧することができます。なぜならば、売主がその物件を販売する前に地盤調査をしているからです。売主に地盤調査報告書を閲覧させてほしいとお願いして見せて頂くとよいでしょう。

しかし、中古住宅では所有者が新築当時の地盤調査報告書を保管していない限り、確認するのは難しいです。長年、紛失せずに残している人は少数派ですし、かなり以前は地盤調査をせずに建築することもあったからです。地盤調査を行うのは、基本的には建物を建築する直前ですから、増築や建て替えのときには行っていることも多いでしょう。

住宅の地盤に関する予備知識・注意点

建売住宅や中古住宅を購入する上で知っておきたい地盤に関する予備知識や注意点を紹介します。売主や仲介業者が誤った説明をすることも多いので、ここに記載していることを覚えておいて説明内容がおかしくないか検討する材料にしてください。

売主が地盤補強しないこともある

建売住宅の売主が必要な地盤補強・改良工事をしないことがある

地盤調査をして地盤がよくないとわかれば、普通の不動産会社ならば必要な改良・補強工事を行います。それは、その住宅の設計者が進言するでしょうし、地盤調査会社の報告書にも見解が述べられているので、当然に対応するものです。

しかし、地盤改良・補強工事も、その工事内容によってはコストが非常に高くつくこともあるため、必要な補強等をしないことも確認されています。必要な補強等をしない場合、建物に影響が出てきたときに売主も困るわけですが、それでも驚くような判断をしてリスクをとっていることがあります。

建売住宅では必ず地盤調査報告書がある

建売住宅の購入者からの相談のなかで、「地盤調査をしていない」「地盤調査報告書はない」と売主や仲介業者から言われたと聞くことがあります。今の住宅でそれはありえないですし、あってはならないことなのです、そのような説明を受けたときは信用できない業者だと考えるべきです。

担当者が無知で適当なことを言っていることもありますが、単純に対応を面倒だとおもってごまかしていることおあります。

上のようなことを言われたときには、「地盤調査は必ずするし、その報告書がないはずがない」と強く主張してもよいでしょう。

改良しているなら地盤改良・補強工事の施工報告書がある

地盤調査の結果、地盤改良や補強工事が必要だと判断され、その工事を実行したならば、必ず地盤改良・補強工事の施工報告書があるはずです。これも地盤調査報告書と一緒に見せてもらうようにお願いしましょう。

その施工報告書には工事中の写真も添付されているはずです。

地盤調査・改良工事の報告書がある

最後に

地盤調査報告書や地盤改良・補強工事の施工報告書を入手できれば自分なりその内容を見て確認してもよいですが、なかなか理解することが難しいです。信頼できる売主や設計者から説明を受けられるならそれがよいですが、信頼性に問題があるときや説明してもらえない場合には、第三者に相談して意見を求めるのも有効な方法です。

住宅地盤の相談

報告書を見てもらって、地盤がどういった状況であるのか、対応が適切であるのか相談してみましょう。書類があるならば、面談やメールでも相談対応することが可能です。書類がない中古住宅では、現地で建物の状況を住宅診断(ホームインスペクション)してもらったときに関連症状の有無を見てもらうとよいでしょう。

地盤のことで心配なら、「住宅購入前に見ておきたい地盤調査報告書(地盤調査の結果)」も参考にしてください。また、初めて完成物件の見学に行くときには、「建売住宅を見学時のチェックポイント」を参考にしてください。

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。