長屋・テラスハウス・連棟住宅のホームインスペクション

中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)に関する質問のなかで、長屋やテラスハウスでも調査できるかと聞かれることがあります。その答えは、もちろん対応可能だということになるのですが、長屋ならではの注意点や依頼者が知っておきたいことがあるので、これを解説します。

長屋(テラスハウス)を購入する人や、これへのホームインスペクションを検討している人向けの記事になっています。できれば、購入する前や依頼する前に読んでおきましょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

長屋・テラスハウス・連棟住宅とは?

長屋とは、1棟の建物に複数の住戸が水平方向に連なっているもので、各住戸の境にある壁は互いに共有している建物です。それぞれの住戸が独立した作りになっていて玄関があり、各住戸から直接外部へ出入りすることができます。

この長屋は、連棟住宅のほか、テラスハウスやタウンハウスとも呼ばれますが、長屋や連棟住宅といえば、古い建物をイメージし、テラスハウスやタウンハウスといえば、もう少し現代的なものをイメージする人もいるようです。実際に、デザイン的におしゃれなタウンハウスもあります。

マンションも1棟の建物に複数の住戸があり、それぞれの住戸が独立していて玄関があるという点において同じですが、マンションでは水平方向だけではなく、垂直方向にも住戸が存在しますね。

長屋でも2階建ての建物(重層長屋と言う)がありますが、これは1階と2階が独立しておらず、内部でつながっています。つまり、メゾネットタイプの1つの住戸になっているということです。

長屋のホームインスペクション(住宅診断)の調査内容

長屋の調査であっても、基本的には一般住宅のホームインスペクション(住宅診断)と同じ調査内容ですが、その調査範囲においても一致するわけではありません。

集合住宅だが一戸建ての調査範囲に近い

長屋やテラスハウスはマンションと同じ集合住宅の一種ですが、その調査内容は一戸建て住宅に近いものです。一戸建て住宅では、建物内部(室内)の全てと建物外部の全て(目視できる範囲)が対象になりますが、長屋では対象住戸の室内と建物外部のうち該当住戸部分の基礎・外壁・屋根のみが対象になります。

もちろん、他の住戸の許可を得ることさえできれば、全室内と縦桃の外部の全てを対象とすることもできますが、購入時にその許可を得て調査することは現実的にハードルが高すぎると言えます。

床下と屋根裏の調査は制限される

一戸建てのホームインスペクションで、床下や屋根裏が重要なように長屋の診断をするうえでも、床下や屋根裏は重要なスペースです。しかし、該当住戸以外の床下や屋根裏スペースを調査するためには、事前に所有者や居住者の許可が必要になるため、ハードルが高いです。よって、該当住戸部分の床下と屋根裏の調査に限定されることを理解しておきましょう。

住宅ローン控除をあきらめる?

住宅ローンを利用して住宅を購入する際には、住宅ローン控除を受けたい人が多いでしょう。中古住宅の購入に際しては、築年数等の条件によっては、耐震診断で一定基準に適合するか、既存住宅売買瑕疵保険へ加入することが必要になります。

しかし、長屋では、これらの条件を満たすことが難しく、住宅ローン控除を諦めざるを得ないケースも多いです。ローン控除について詳しく知りたい方は「中古住宅の住宅ローン控除と耐震診断・既存住宅売買瑕疵保険」をお読みください。

耐震診断

耐震診断は、長屋のうちの1つの住戸だけで判断するものではなく、一棟の建物として判断しなければなりません。この調査をするためには、現地で全室の劣化状態を確認する必要があるため、購入する住戸以外の調査も必要だということになります。

他の住戸の所有者や居住者の許可を得て調査することは容易ではないため、現実的に耐震診断を実施することが難しくなるのです。

既存住宅売買瑕疵保険

長屋で既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、住棟型というタイプで保険加入を目指すことが多いですが、この調査をするためにも、やはり全室の調査が必要になってしまいます。

長屋やテラスハウスには、常に全室を調査できるか?という問題がつきまとうのです。

長屋・テラスハウスのホームインスペクションの必要性

前述したように、長屋・テラスハウスにおいては、他の住戸を確認できないという制約があるわけですが、それでもホームインスペクションを実施する必要性はあるのでしょうか。

他の住戸を確認できない以上、100%の診断をできるわけではありませんが、それでも確認できる範囲から購入判断や建物のメンテナンスに役立つ有益な診断結果を得られることは多いですから、必要性は高いです。

基礎や外壁の著しいひび割れ、界壁(隣の住戸との境となる壁)の傾斜、床下や屋根裏の著しい劣化、漏水などがホームインスペクションで確認されることがありますから、依頼しておくとよい参考になるでしょう。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。