引越し前の注意点と入居前の点検

新築でも中古住宅でもそうですが、住宅を購入してこれから引越ししようとするとき、「引越し準備が万端か」「何か忘れていることはないか」などと心配する声は多いです。日本では、引越しする機会が多い人は限定的ですから、慣れない引越しで心配事が多いのは当然かもしれません。

今回は、住宅を購入して引渡しを受けた後、新居に引っ越し(入居)するタイミングで買主がやっておくことや注意点について解説し、そのなかで大事な住宅の点検(入居前のホームインスペクション)についても説明します。

引越ししてから後悔することをできる限り減らすために、入居後の負担を減らすために、ここで入居前の基礎知識を抑えておきましょう。

引渡し日と引越し日は同日にしない

引渡し日と引越し日は同日にしない

住宅を購入(契約)するときや契約した後に、売主と引渡し日をいつにするか相談することになります。不動産仲介業者を介して取引する場合は、その業者が間に入って引渡し日を調整します。

その引渡し日は、何らかの理由でずれることがあるので注意が必要です。

未完成の新築の工事遅延と引渡し日の延期

特に多いのは、未完成の新築建売住宅を購入したときや注文住宅の工事を発注したときに、着工や工事が遅延して完成日が遅れてしまうことにより、引渡し日が延期されてしまうケースです。

最近は、職人の人手不足などが要因で工事が遅延するケースが相次いでおり、当初の予定通りに工事が進まないことは少なくありません。ときには、数か月もの間、工事が止まっていて不動産会社や建築会社と買主(または施主)の間でトラブルになる事例が何件も確認されています。

未完成物件を購入するときには、引渡し日が遅延することを考慮して、引渡し日はゆとりをもって計画すべきです。

◆関連記事:新築住宅の工事が遅延して引渡し日に間に合わないときの注意点

中古住宅でも引渡し日が変更になることがある

中古住宅を購入するケースでは、当初予定していた引渡し日が大幅にずれることはそう多くありません。最初に引渡し日を決める段階で、売主と買主の都合を考慮して調整するわけですが、未完成の新築のように工事の遅れという影響を受けることがほとんどないですね。

しかし、注意すべきときもあります。

その1つが、売主が不動産会社の中古住宅の場合で、引渡しまでの間にリノベーションしているときです。未完成の新築住宅と同じで工事が遅れることにより、引渡し日が遅れてしまうことがあるのです。但し、これまでの経験上、未完成の新築住宅ほどに遅延する確率は高くありません。

別のケースとしては、売主都合による延期です(売主都合というと売主に可哀そうなのですが)。売主が自宅を売却して(それをあなたが買ったとして)、別にマイホームを新築することがありますが、その新築工事が遅れてしまい、売主が新居へ引っ越せないために引渡しを遅らせてほしいと言ってくることがあるのです。

本来は、たとえ引越し先の工事が遅延したとしても、売主が仮住まいを用意して退去してでも、売買契約において決めた引渡し日までに引き渡すべきなのですが、一部の売買契約内容では引渡し日を延期できる内容としていることがあるので注意してください。これは売買契約を締結する時点で条件を細かくチェックしておく必要があることです。

他にも、何らかの予期せぬ出来事により、引渡し日が多少遅れるということはありうるため、引越し日を引渡しの当日に設定しないようにしてください。引越し日を直前になって変更するのは引越し業者の手配が難しいこともありますし、キャンセル料の問題が生じることもあるからです。

入居する前に建物を点検する

入居する前に建物を点検する

購入した住宅に入居する前には、必ず、建物の状態をよく確認してください。このタイミングで不具合などがあれば、売主へ速やかに通知して補修対応などを求めるべきこともあるからです。引越しが完了してからでは対応してもらえないことや、交渉が難航することもあるので、引越し前(入居前)に点検することがポイントになります。

新築住宅の場合

新築住宅を購入した場合、売買契約を締結する前や引渡し前のタイミングで、第三者の専門家に依頼してホームインスペクション(住宅診断)を実施し、施工不良の有無を確認することが多くなっています。素人ではわからないことを専門家に代わりに診てもらい、売主や建築会社に補修してもらってから引渡しを受けるわけです。

しかし、売買契約前や引渡し前に専門家のホームインスペクション(住宅診断)を依頼していないなら、引渡し後・引越し前(入居前)のタイミングで依頼することを考えましょう。

入居した後でも実施することはできるのですが、同じ依頼するならば家具や荷物を入れる前の状態で診てもらった方がよいからです。家具等があれば、どうしても隠れて見られない箇所が出てきますね。

中古住宅の場合

中古住宅を購入した場合でも売買契約の前や引渡し前に第三者の専門家によるホームインスペクション(住宅診断)を依頼していないなら、引越し前に依頼を考えてください。

売主の瑕疵担保責任の対象となる項目で問題が見つかれば、補修を求めることができますし、瑕疵担保責任がなくても早めに補修・メンテナンスすべき項目を確認することで、早めの補修対応ができるようになり、家を長持ちさせられることが多いからです。早期発見、早期対応ですね。

新築と同様に家具がない状況で広範囲に確認する方が好ましいですから、できれば入居する前に実施しましょう。

ちなみに、売買契約前に実施していた場合でも、そのときに床下や小屋裏の点検口がなかったなら、もしくは家具等が多すぎて確認できない範囲が多かったなら、入居する前に再度、診断することも考えましょう。もちろん、点検口がなかったときの再診断は点検口を開口してから実施してください。

売主や不動産会社がホームインスペクション(住宅診断)をしていた物件の場合、その診断範囲・項目はあまりに限定的なものであり、基準も項目によってはかなり緩いものもあるため、入居前に買主の依頼で依頼することも積極的に考えましょう。

引越し業者選びと手続き

引越し業者選びと手続き

引越し日が決まる頃にやるべきことを考えておきましょう。もちろん、引越し業者選びもそうですが、家具等の配置やライフラインの手続きもしなければなりません。引越し前後は大忙しですね。

引越し業者は相見積りすべき

引越し業者の選定を簡単に考えすぎないようにすることも、引っ越し時の大事な注意点だと言えます。

全く同じ位置関係や同じ量の荷物であっても、引越し業者によって料金は全然違ったものになります。同じ業者でも時期が違えば料金が大幅に変わるように、引っ越し費用は巾があるものです。同じ業者でも引越し日をずらすことで安くなることもあります。

馬鹿にならない金額の引越し費用ですから、3社以上で相見積もりをとって比較検討するようにしましょう。相見積もりをとっていることを伝えるだけで値引きされることも多いです。

家具・荷物の配置は決めておく

引越しの当日に全ての家具の配置をその場で決めるような人はいないと思いますが、それでも曖昧にしか考えていない人はいます。また、大きな家具の配置だけ考えておいて、他の荷物については考えていないという人も多いです。

しかし、入居してから荷物をどこに置くか決めていくと、収納等に収まらなくなることもあるので、何をどこに収納するのか決めておくことをお勧めします。これにより、収納量の不足に気付くこともあり、移転に伴う家具等の購入・処分の判断も変わってくることがありうるからです。

また、引越しの当日には、家具や荷物の配置を間取り図に書いて手渡すようにしましょう。段ボールに詰めた荷物もどれをどの部屋におくべきか決めておくことは、入居後の後片付けを楽にするために案外大事なことです。

引越し日が決まったときの手続き

引越し日が決まれば、早めにやっておくべきことがあるので忘れないようにしましょう。

賃貸住宅を退去する場合で、まだ退去通知をしていないならば、その通知をしなければなりません。退去通知は、その時期を逸すると余分に家賃を払わざるを得ないこともあるので、購入する住宅の契約をする頃には賃貸契約書などで退去条件を確認しておくようにしてください。

もう1つの大事な手続きは、ライフライン関係です。つまり、電気・ガス・水道・電話です。

これらは直前で手続きしても間に合うことも多いですが、インターネット回線は早めに手続きしないと引っ越し後すぐに使えないことも少なくありません。特に、引越しの多い時期は要注意です。

引渡し日と引越し日の設定や入居前のホームインスペクション(住宅診断・建物の点検)、引越し業者選びなどについて注意点を挙げてきましたが、これらについては本来なら住宅の引渡しを受ける前から理解して対応を考えておきたいところです。

もう引渡し日が近い、または既に引渡しを受けているなら、急ぎ対応を進めましょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。