これまで多くの記事を書いてきましたが、その大半は住宅購入や建築に役立つコラムやホームインスペクション(住宅診断)に関することですが、今回のコラムはいつもと少しイメージを変えた内容で書いてみます。

もう20年以上もホームインスペクション(住宅診断)の仕事をしてきましたので、当然ながら多くのお客様とお話しする機会がありました。伺ったお話のなかには、ホームインスペクションに対する誤解も少なからずあるものですが、思い込みが強いときには事実を説明しづらいこともありました。

今回のコラムは、そういう一般消費者のホームインスペクション(住宅診断)に対する誤解や考え方の違いなどについてあげてみます。インスペクションを利用するかどうか、検討するときの参考になるかもしれません。

ホームインスペクションを依頼して指摘がないともったいない

ホームインスペクション(住宅診断)は、新築なら建物の施工不具合の有無をチェックし、中古なら建物の劣化事象の有無をチェックする建築系の専門的サービスです。

このホームインスペクションは、決して安いわけではありませんので、投資するからにはそれなりのリターンを求めるのは当然の心理だと思います。

調査を終えて大きな不具合などが見つからなかったときに、

「費用をかけたのに、もったいない」

と感じる人もいるようです。
気持ちはよくわかります。

一方で、大きな不具合が見つかると「依頼しておいて本当によかった」との声を聞くことが多いです。

「ホームインスペクションを依頼したのに何も指摘がないともったいない」という考えについて、完全には否定しませんが、問題ないことを把握し、安心して購入できることに意義があると考えてほしいところです。

なかには、購入後に依頼する人もいますが、それで大きな不具合が見つかった場合は、その対応にかける手間(交渉など)とコストが本当に大変で、苦労している人は多いです。

間違いなく、「大きな不具合がある方がつらい」ことになりますので、依頼する際は何もないことを願いつつ依頼したいものです。

見えないところまで見えると思っている

ホームインスペクション(住宅診断)を検討中の人から、「見えない箇所に何かないか心配なので依頼したい」と聞くことがあります。

専門家であっても、一部の特殊な調査を除いては、基本的には物理的に目視できない箇所は見ることができません。目視できる範囲は、専門家でもそうではなくても同じです。

ただし、床下や屋根裏は慣れていない人が進入していくことは困難ですし、そもそもどういう点に注意して見るべきかわからない、見るべきポイントがわかっても見つかった症状に問題があるかどうか判断できない、といった点で専門家とそうでない人の間に大きな差があります。

ちなみに、構造木部の含水率の計測や床・壁の傾斜測定など目視範囲ですが、そもそも機材が必要ですし、適切な使い方をする必要性もあるので、経験と知識のある専門家でないと、見えていてもできないことは多いです。

アネストの住宅インスぺクション
施工不具合や劣化状態を専門家が診断するサービス

自分で見て問題ないと思っている

お問合せをいただいたときに、「自分で見たところ特に問題ないので大丈夫だけど、妻が(又は夫が)心配しているので、ホームインスペクションを検討している」と伺うことがあります。

「自分で見て問題ない」と言うので、建築士などの業界経験・知識のある人かと思い聞いてみると、そうではないこともあります。

問題ないか、大丈夫か、といった判断をするためには、適切なチェックポイントと見つかった症状の判断が必要ですから、「自分で見て大丈夫」という考えは聞いていて怖いと感じます。

とはいえ、知識も経験もないのにその判断は間違っているとも言いづらく、困るところですね。

参考として、アネストがホームインスペクターを採用するときの考えをお伝えしておきます。採用時の最低基準は以下のとおりです。

  • 一級建築士の資格を有している
  • 既存住宅状況調査技術者の資格を有している
  • 住宅の設計・監理、工事管理の経験が通算10年以上

実際には10年でも短いので、もっと長い経験がある人を採用し、かつオリジナル・チェックシート、マニュアルの活用、現地研修までしています。これくらいはしないと適切な判断は難しいことですから、「自分で見て問題ない」と判断するのは危険だと感じています。

築浅だからホームインスペクションは不要だと思っている

築5年くらいまでの築浅の中古住宅を購入する人から、「まだ新しいので、インスペクションする意味はないですか?」と聞かれることがあります。

答えは、「ノー」です。

中古住宅のホームインスペクションでは、簡単に言えば、建物の劣化状態の確認と新築時の施工不具合の有無を確認しています。新築住宅でも、建築するときの施工不具合がありますから、築浅の住宅でもホームインスペクションをしておく方がよいと考えています。

新築住宅でも専門家にホームインスペクションを依頼する人は大変多いくらいですから、築浅だからやらなくてよいということはないでしょう。築1年でも2年でも、購入時にはやっておくことをお勧めします。

大手ハウスメーカーが建てたから大丈夫だと思っている

「大手ハウスメーカーの家だからホームインスペクションをしなくても大丈夫ですか?」

これもたまに受ける質問ですが、答えは、「ノー」です。

この質問は、新築住宅だけではなく、築浅の中古住宅を購入する人からも聞くことがあるものですが、大手への信頼性の高さということなのでしょう。

しかし、現実には、大手ハウスメーカーの家であっても、新築時の施工不具合が見つかることは少なくありませんし、それで社内検査をパスしたというのですから驚かされることもあります。

また、中古住宅なら、劣化の進行もありますから、大手であるかどうかはあまり関係がありません。

アネストでは、お客様のご依頼で、毎年、何棟もの大手ハウスメーカーの欠陥工事に関する検査をしていますので、大手ハウスメーカーが建てた家だから大丈夫とは考えていません。本当に対応が悪くて、被害にあったお客様が時間をかけて交渉していることもありますから、大手への過信は禁物です。

アネストの住宅インスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。
住宅
ホームインスペクション

住宅の購入・新築・リフォーム時などに、建物の施工ミスや著しい劣化などの不具合の有無を調査する。実績・経験・ノウハウが蓄積された一級建築士の建物調査。プロを味方にできる。