地盤調査報告書

新築住宅でも中古住宅でも、購入する前に地盤を確認しておくべきだと知っていますか?

初めてのマイホーム購入となれば、わからないことも多いでしょう。多くの人が、立地環境や建物の間取りには注意を払いますが、地盤のことまで確かめない人が多いです。しかし、地盤が大事なことは何となくわかっている人も多いようです。

なぜ、大事なことだとわかっていながら、地盤について確認する人が少ないのでしょうか?

目の前に形のある建物と違って、地盤は地面より下の部分だから直接に見ることができないことや地盤について確認する方法を知らないことが理由になっています。

また、不動産会社から地盤について丁寧に説明を受けられるケースは稀ですから、皆さんが住宅購入時に地盤を理解していることは少ないわけです。説明を受けられないどころか、要求しても地盤調査報告書をもらえないということもあります。

今回の記事では、地盤がいかに大事なものであるか説明し、その上で物件ごとの確認方法を紹介します。

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地盤調査報告書は非常に大事

地盤が大事であることはご存知の人の方が多いでしょう。日本はどこにでも軟弱地盤がありうるので、重要性を理解してきちんと対応してから住宅購入を進めていきたいものです。

地盤は大事

地盤が弱く、それに対して適切な対処をしていない住宅では、地盤沈下が起こって建物が大きく傾いてしまうことがあります。傾く過程で、基礎や壁などにひび割れが生じ、更にその症状が増えていき、大変、不安な想いを抱えている人もいます。

安心して暮らしていくためには、建物の施工不良の有無や著しい劣化の確認と同じく、地盤の確認も重視すべきなのです。

丘陵地でも安心できないこともある

日本には軟弱地盤が多いと述べましたが、丘陵地のようなエリアならば、地盤が固くて安心だと考えている人もいます。確かに元の地盤は、海に近いところや平地に比べて安心できるものであることが多いですが、1つ1つの土地を見ていくとリスクを抱えている土地も少なくありません。

特に、何らかの理由により埋め立てしている土地は注意が必要です。斜面地の造成工事をしたことのある土地は、その代表格です。

地盤改良工事の施工報告書

地盤の状況を確認するために見ておきたい書類は、地盤調査報告書です。

これは、地盤調査をした時の記録で、土地の形状・地質の種類・地盤の固さ・地盤改良工事の必要性(地盤調査会社の見解)などが記載されているものです。地盤調査は、一般的には新築工事をする前に行います。

そして、もう1つ一緒に確認しておきたい書類は、地盤改良工事の施工報告書です。地盤が弱いなどの理由で地盤改良工事や補強工事をしている場合、その工事内容を記録した書類があり、それが施工報告書です。

ただし、建築される前の新築住宅を購入する場合、まだ地盤改良工事をしていないということもあります。そういうときは、地盤改良工事の施工計画書を確認しましょう。地盤調査の結果に対して、適切な改良工事を計画しているのか書類で確認するわけです。

地盤改良工事の施工

地盤の確認は契約前にしておこう

地盤の確認をするタイミングについて質問を受けることがありますが、それはズバリ契約する前です。地盤を確認する理想のタイミングは契約前だと覚えておきましょう。

しかし、個々の取引の状況・条件によっては、理想通りに事を進められないこともあるため、ここで説明しておきます。

建売住宅なら契約前に地盤調査報告書を確認できる

最も地盤調査報告書を契約前の段階で確認しやすいのは、新築の建売住宅です。完成物件ならば、確実に地盤調査は済んでいますし、地盤改良が必要ならばその工事も完了しているため、地盤調査報告書も地盤改良工事の施工報告書も見せてもらいやすいです。

しかし、売主によっては、売買契約をした後でないとこれらを買主へ見せないという事例も頻発しています。こういったケースでは、地盤に問題があって買主に契約前に知らせたくないと考えていることもあれば、単純に会社でそのように規定してしまっていることもあります。

前者なら怖いことですし、後者でも安心できません。よって、契約前に地盤調査報告書などを見せてもらえるかどうかも、購入判断の1つの材料とするとよいでしょう。

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土地購入なら契約前の確認が困難

土地を購入して、自分の好みの住宅を注文建築で建てるという人もいますね。土地のみを購入する場合、売主が契約前に地盤調査をしてくれていることはほとんどありません。買主が土地購入時のリスクの1つとして理解しつつ、そのまま購入していることが多いです。

なかには、そういったリスクがあると気付かずに購入している人もいますが、リスクがあること把握しておきましょう。土地の売買契約書をよく読んでみると、「地盤改良工事が必要な場合は買主の負担となる」と記載されていることはよくあることです。

契約前に売主が地盤調査をしてくれているか確認し、していない場合は、買主自らが地盤調査をするかどうか検討しましょう。この調査を売主の承諾が必要ですから、地盤調査会社とも相談してみましょう。ただし、現実的には土地の購入に際して買主が契約前に地盤調査しているケースは稀でしょう。

中古住宅なら地盤調査報告書があるかも

中古住宅を購入する場合、地盤調査報告書を確認できないことが多いです。

地盤調査は、一般的には建物を建築する前に行いますので、売主が新築当時の地盤調査報告書を保存しているかどうかによります。売主がきちんと保存しているのであれば、それを閲覧させてもらうようお願いすればよいのですが、保存していないことの方が非常に多いです。

この書類だけではなく、建物の設計図を何も残していない人も多いくらいですから、閲覧できれば幸運だと言っても過言ではありません。

この場合、近隣の地盤調査データを役所で閲覧できることもありますが、それは軽い参考程度にしかなりません。地盤は隣の土地でも全然違った調査結果になることもあるからです。

そこで、地盤調査はできないものの参考になる情報として、その土地上の建物や外構(塀など)の状況をよく観察して、軟弱地盤の影響が出ていないか確認する方法が次善の策だと言えます。

軟弱地盤で地盤改良工事が適切にされていないようであれば、現存の建物や外構にひび割れや傾きなどの症状が出てきている可能性があるからです。1つの症状だけで判断することはできませんが、いくつかの症状があるなら参考になりえるでしょう。

この確認に際しては、で切れば建物の床下へ潜って床下の症状も確認しておきたいものです。床下側の基礎に大事な症状が確認されることが少なくないからです。

この確認は知識と経験がないと無理がありますから、専門家に任せるべきでしょう。住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するときに、建物の傾きや基礎、塀などの症状がないか確認してもらい、アドバイスをもらいましょう。

但し、地盤調査がではありませんから、あくまでも参考情報だととらえておくべきなので注意してください。

地盤調査

地盤調査報告書の確認はプロにお任せが安心

入手した地盤調査報告書や地盤改良工事の施工報告書は、見慣れない人が見ても理解するのは難しいです。また、不動産会社の営業担当の人も正確な知識がなくてきちんと説明できない人も多いです。

できれば、その住宅の設計者など詳しい人から、書面を閲覧しながら解説してもらいましょう。それが無理な場合や、説明する人の信頼性に問題を感じるならば、第三者に住宅地盤の相談をするとよいでしょう。

または、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するときに、一緒に相談すると効率的です。大事な地盤に関することですから、多少の手間やコストはかけるべきところではないでしょうか。

地盤に関しては「建売住宅や中古住宅の購入時に地盤が心配・不安なときのチェックポイント」も参考にしてください。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。