新築収益用アパート物件の施工ミスの多さと第三者検査の必要性

アパート建設の大手企業による施工ミス問題がニュースになりました。誰も聞いたことのある企業による建築基準法違反の疑いということで、今、建設・不動産業界では注目があつまっていますが、不動産投資をしてきた人にとっても興味深い話題です。

アネストでは、一戸建て住宅だけではなく、木造や鉄骨造のアパートに対しても建物調査(インスペクション)をしてきた実績があるので、実績や経験も織り交ぜながらアパート建設の施工上の問題点を解説します。

アパート建設における小屋裏の界壁問題と屋外階段の崩落事故

ニュースになっている法令違反の疑いの内容を簡単にいえば、アパート内の住戸間を仕切る壁である界壁(かいへき)が小屋裏の上まで達していない箇所があったり、不十分な状況であったりしたというものです。

界壁は、延焼を防ぐ(もしくは遅らせる)効果が期待されているものであり、また遮音性能も期待されている大事な壁なのですが、この施工が不適切であったというわけです。

界壁のないアパートは他社でも同様にある

アネストでは、これまでに様々なアパートを調査してきましたが、実は今回報道されている建設会社以外でも同様な事例を確認しています。つまり、報道されているのは氷山の一角だということです。

社名の出ていない会社でも同様の事例があることは、アパートオーナーは知っておくべきでしょう。

界壁以外の施工ミスも多い

アパート建築における施工ミス等の問題は、何も界壁だけではありません。建築中の検査や完成物件の検査をしていると実に様々な指摘事項が上がることが少なくないのです。

これまでにも、あるはずの筋交いがなかったり、小屋裏の断熱材が全くなかったり、必要なボードがなかったりするなど、指摘対象となる項目はあまりに多いです。これから、アパートを建築する人も、中古アパートを購入する人も、建築中や購入前にきちんと検査(インスペクション)しておかないと大きな被害にあう可能性があることを知っておくべきです。

アパートで階段が崩落

2021年4月に東京都八王子市のアパートで、屋外階段が崩落する事故が発生し世間を驚かせました。神奈川県や東京都でアパート建築をしていた施工会社による建築で、施工済みの物件は多いようです。

国交省による2021年6月1日付の公表資料では、同社が施工した共同住宅の調査結果が表示されており、調査対象は241棟あったことが確認できます(直ちに改善指導を要しないものを多く含んでいる)。

界壁がなかった問題のときも階段崩落のときも多くのアパートのオーナーからアネストへ調査の問合せが入りますが、事故が起こった時だけではなく、売買するタイミングや建築するタイミングで建物の調査を考えておく必要があると言えるでしょう。

アパートで施工ミスが多い原因はオーナーの無関心さ

投資用アパートにおける施工ミスが多い原因の1つは、施工品質に対する意識の低さや現場への無関心さではないと考えています。オーナー(投資家)によって個人差が大きいですが、収益や利回りにばかり注目して、建物の品質に意識が向いていない人は少なくありません。

自分が住まないので自宅より施工品質への意識が低い

マイホームを購入する人は、非常に多くの人がホームインスペクション(住宅診断)を利用するようになりました。家を買うときには、インスペクションというのは常識になりつつあります。自分たちの家に関して安心したいのは当然の気持ちです。

一方で、収益用アパートのオーナーは、そこに住むわけではないため、細かな品質にこだわりを持たない人も多いのです。そして、品質の細部をないがしろにしていると、アパート建設を請け負った建築業者はオーナーの無関心を理解してか、気持ちの緩み、手抜きへと発展するケースが続発するわけです。

自宅兼賃貸住宅でも自宅部分のみ検査を希望する人が少なくない

新築の収益用(投資用)アパートを建築したり購入したりする人から、建物検査(インスペクション)の相談を受けるなかで、賃貸併用の自宅に対する検査依頼を頂くこともあります。建物の一部を独立した住戸としてプランニングし、それを賃貸するものです。

賃貸住宅併用の建物のオーナーから、賃貸部分以外の検査依頼を希望されることがあります。これも、貸すスペースは少々のことなら構わないという考えの現われかもしれません。考え方は個々によっていろいろあるのはわかりますが、自己居住用と賃貸用では意識の違いがあることがよくわかる話です。

最大の対策はオーナーが強い関心を持つこと

アパートの建築で手抜きや欠陥工事に合わないようにするための最大の対策は、オーナーが現場に対して強い関心を持つことです。問題ないかどうか、チェックするという姿勢を見せるだけで現場の意識がかわることもあります。

建築中に現場を見に行くこともなく、完全に丸投げ状態であれば、好きなようにされてしまうリスクは高まります。

そもそも、元請けの建設会社も下請けに工事の大部分を任せてしまう(完全な丸投げも多い)ことが多く、そういう現場では監理はほとんどされていないので、問題が起こるのも当然です。

打合せ段階から、現場の管理体制について積極的に質問するなど、関心の強さを感じてもらうことです。営業から現場へ「今回のお客様はちょっと細かいから気をつけて」と伝わるくらいの方がよいですから、そういう意識を持ちましょう。

もちろん、建築中や完成時の第三者検査の利用も有効な手段ですから、考えてみるとよいでしょう。第三者検査を入れることで、現場によい緊張感が生まれて施工ミスの抑止力が生まれます。もちろん、実際に問題が見つかれば指摘して是正してもらうことができます。

オーナーが現場に関心を持ち、第三者検査を利用すれば、賃借人が居住してからのクレーム問題も減らすことができ、メリットは大きいでしょう。第三者のインスペクション(検査)を検討するなら、「収益用アパートの建物調査(インスペクション)の注意点」も参考にしてください。

アネストの住宅インスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。