年末の新築住宅の引き渡しに要注意

今年ももう年末になりました。1年の経過は早いものですね。この時期になると毎年ある相談が、新築住宅の強引な引渡しとそれへの対応についてです。

建売住宅の売主(不動産会社)や注文建築の家の建築会社(ハウスメーカー)が、買主や施主に対して、年末ぎりぎりの引渡しをしようとして、消費者とトラブルになっている事例は本当に多いです。

年末に行う新築住宅の引き渡しについては、リスクがあることも少なくないですし、実際に引渡し後に後悔している人から、年明けになってホームインスペクション(住宅診断)の依頼を受けることも多いため、引渡しを受ける前によく考えておきたいものです。

契約した新築住宅について年末ぎりぎりに引渡しを受けるリスクや、年明けの引渡しをお勧めすること、不動産会社やハウスメーカーが年内の引渡しを実行しようとする理由について解説しますので、引渡しが近い人は参考にしてください。

新築住宅の年末の引き渡しリスク

新築住宅の年末の引き渡しリスク

新築住宅について年末に引渡しを受ける場合のリスクを紹介します。ただし、最初に言っておきたいことがあります。それは、ここに挙げるリスクが、年末に引き渡しを受ける全ての人に該当するわけではないということです。人によって、または住宅によっては、リスクがあるということです。

突貫工事で施工が雑になる

年末の引渡しの前にゆとりをもった工期で建物などを完成させてから、その住宅の引渡しをするのであれば、問題はありません。しかし、何らかの理由のために、引渡しを年内に実施する必要があり、そのために工事を急いでいるときには、注意が必要です。

工事を急ぐにしても程度の問題があります。工務店やハウスメーカーが品質管理を十分にできる範囲で急いでいるならよいのですが、管理できない状況下で急ぎすぎているケース、つまり突貫工事になっているときには、施工が雑になり、ときには構造耐力に影響があるような施工不具合を生んでいることもあります。

また、構造耐力にまでは影響がなくても、見た目が雑なだけであっても、せっかくの新築住宅だけに残念な想いをする人も少なくないでしょう。無理な突貫工事をしてまで年末ぎりぎりに引き渡す新築の家には要注意です。

未完成で引き渡す(酷いと支払いだけ先になっている)

本当に酷いと感じるケースが毎年のように見られます。それは、まだ完成していない住宅なのに、それを強引に引渡してしまおうとするものです。

しかも、建物を引き渡すだけではなく、同時に購入代金(または建築代金)の決済、つまり支払いを迫っているときがあり、驚きます。完成もしていない住宅の代金を全て支払えと言うのはおかしいですね。買主(または施主)が一方的にリスクを負う形になるので、拒否しましょう。

引渡し後の補修対応が悪くなる

突貫工事などによって施工が雑になるリスクがあるのに、引渡しを受けて残代金を支払ってしまった場合、後から見つかった施工不具合や欠陥工事への補修対応に関して、建築会社等の対応が遅かったり、対応してもらえなかったりするケースがあります。

無茶な工事や強引な引渡しをする業者ですから、後の対応が悪くなることもあるのです。こういったリスクを消費者が負うべきではないでしょう。

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焦らず年明けの引渡し・引越しがおすすめ

年明けの引渡し・引越しがおすすめ

ここまで述べてきたように、ゆとりのない年末の引渡しというものは、買主(注文建築なら施主)にとってリスクがあり、そのリスクは決して小さくないものです。

その対策として、買主や施主は、年内の引渡しや引越しを前提としたスケジュールはあまり組まないようにして、年明けに引渡し、引っ越しとすることをお勧めします。もちろん、全体のスケジュールに十分なゆとりを見た上で12月に引渡し・引越しというスケジュールにすることはよいですが、工事は遅延することも多いので、「十分なゆとりを見ておく」ことを考えておきましょう。

ただし、建物の安全性、施工品質のことだけで、スケジュールを組むわけにもいかない事情もありますね。金銭面の影響も考えなければなりません。住宅ローンを利用して買う人にとっては、住宅ローン控除が大きな関心事だと思いますが、ローンの年末残高に応じて控除されるわけですので、年末にローンを組んでおきたいですね。つまり、年内に引渡しを受ける必要があるわけです。

そこで、前述したように、十分なゆとりを見てスケジュールを組んでおく必要があるのです。

不動産会社・ハウスメーカーが年内の引渡しを急ぐ理由

ハウスメーカーが年内の引渡しを急ぐ理由

年内に引渡しをしようとする不動産会社やハウスメーカーが多いわけですが、それにははっきりした理由があります。その理由についても解説しておきます。

買主・施主の要望に応えるため

不動産会社やハウスメーカーが年内に引渡しをしようと急ぐ理由の1つ目は、買主や施主の要望に応えるためです。

年末、または年明けすぐの冬休み中に引越ししたいという考えの買主や施主は多いです。そういった要望を早くから聞いていたこともあり、その要望に応えるために、引渡しを急ごうとすることはよくあることです。

一般的には、新築工事の着工前から買主などから要望を受けておれば、冬休み中の引越しに間に合うように事前に工程などのスケジュールを組んでいるはずですが、工事遅延などの理由でスケジュールが厳しくなることもあります。そういうときに、工事を急いで間に合わせようとするのですが、そうすることで「新築住宅の年末の引き渡しリスク」に挙げたリスクがあるわけです。

会社・営業所・営業担当の業績・売上目標の達成のため

不動産会社やハウスメーカーが年内に引渡しをしようと急ぐもう1つの理由が、会社側の都合です。

12月までに計画している売上などの目標を達成するために、年末ぎりぎりの時期であっても何とかして引き渡そうとすることがよくあります。会社や各営業所の目標、または担当する営業の目標達成のために、工事が遅れていても、酷いときには未完成であっても引渡しを強行しようとすることがあります。

年内の引渡しについて、買主側とハウスメーカー側の思惑が一致しているときもあれば、ハウスメーカー側の一方的な都合によるときもあります。

まとめ

新築住宅について年末に強引に引き渡しをすることのリスクと早めにゆとりあるスケジュールを組んでおくことの重要性が分かったと思います。

年末の引渡し、引っ越しは、不動産会社やハウスメーカーといった業者側の都合だけではなく、買主(注文住宅なら施主)側の都合でも起こりうることですが、年明けになってから後悔することのないように、新築住宅の完成・引渡し・入居のスケジュールにはゆとりをもたせておきましょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。