事例(8)築5年の中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)

ホームインスペクション(住宅診断)の対象物件は、築5年の木造軸組工法(在来工法)2階建ての中古一戸建て住宅です。築年数が浅い物件ですので、それほどの劣化や不具合の問題が無いと考えがちですが、現実がどうなのかこの事例から学びましょう。

バルコニーの防水状況

バルコニーのインスペクション(住宅診断)をするうえで、重要なチェックポイントは防水状況に関するものです。バルコニーには雨漏りに関するチェックポイントがいくつもあるのです。

チェックポイントの1つにサッシの下側の状況確認があります。室内からバルコニーへ出るサッシのまたぎの部部分をバルコニー側(外側)から覗き込んで確認します。通常は低い位置になりますから、しゃがみこんで覗くようにして確認することになります。

バルコニー

この写真がその個所を拡大したものです。写真ではわかりづらいですが、この部分から雨水が侵入してしまうことがよくあるため、シーリング材をしっかり充填しておかなければなりません。この対象物件では、シーリング材を充填しているものの施工が粗かったため、隙間があります。

サッシ枠の裏側になりますから、少しぐらいの隙間があっても大丈夫だろうと考える人もいますが、実はこのわずかな隙間から雨漏りすることは多いので注意が必要です。風の強い雨であれば、巻き上がった雨水が侵入することもあるのです。

また、このバルコニーの外壁面の仕上げ材と防水層の立上りの間にも隙間が見られました。この住宅を施工した工務店の防水への意識の低さが感じ取れます。

実際に雨漏りしていた

防水施工に不安を抱える住宅でしたが、実際に室内側から確認するとバルコニーの真下の部屋の天井には雨漏り痕がありました。実際に雨水が侵入して、天井裏へ雨水がまわっていたのです。

外壁にも防水施工の問題

外壁の仕上げ材はサイディングです。最近の住宅の多くがサイディング仕上げになっていますが、その目地のシーリング材の施工が大事なものです。しかし、目地を確認したところシーリングが施工されておりませんでした。

そうなりますと目地部分から雨水が外壁内部へと侵入してしまいます。壁内には防水シートがあるため、すぐに室内側へ漏るわけではありませんが、雨漏りのリスクが高まります。

シロアリの可能性

ホームインスペクション(住宅診断)では、依頼者のご希望に応じて床下内部へ進入して様々なチェックポイントを調査しますが、調査を進めていくと蟻道が見つかりました。

蟻道

蟻道とはシロアリが通る道です。基礎の立上り部分を下から上へと蟻道が伸びており、土台を超えて壁内部へと続いていることが確認されました。シロアリが壁内部をあがって天井裏まで侵入している可能性があります。

該当箇所付近の天井裏には点検口がなく、内部を確認できない状況でしたが、柱などの木部が蟻害に会っている可能性もあり、早期に点検口を開口してでも確認した方がよい状況です。

断熱材の施工が雑

浴室には点検口が付いていることが多いですが、その点検口から見た範囲で断熱材の施工が粗い箇所が確認されました。

断熱不良

断熱材は隙間なく施工することが基本となりますが、それが出来ておらず隙間が散見されます。ずり落ちるようになっている個所もありました。見える箇所の断熱材の施工が粗いということは見えない部分も心配されますね。

今回のホームインスペクション(住宅診断)のまとめ

今回のホームインスペクション(住宅診断)では、防水施工の問題と雨漏り、そして蟻道、断熱材の施工の粗さと問題がいくつも見つかりました。まだ、新築からわずか5年の住宅ですが、これだけの問題が見つかることもあるのです。

中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)では、建物の劣化・老朽化を見るものだと考えている人も多いですが、劣化具合だけではなく、新築時の施工ミスについても診断するものです。築年数にかかわらず、ホームインスペクション(住宅診断)の有効性がわかる事例でした。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。