住宅を購入しようか、もしくは売却しようか検討している人にとって、今の住宅売買の市場動向は気になる情報の1つです。「今、購入するのは得だろうか?損だろうか?」「今、売却すべきか?もう少し待つべきか?」このような悩みを持つ人は大変多いでしょう。

マイホームの購入にしても売却にしても、市場動向だけで判断するものではなく、その他の様々な事情・条件も考慮すべきなのは言うまでもありませんが、ここでは住宅売買に関する動向や傾向を確認した結果を紹介しますので、1つの参考としてください。

ちなみに、市場分析などの専門家ではないことを述べておきます。また、本記事は、レインズで一般公開されているデータを基にしていますが、文中でその元データへリンクしているので、そちらもご覧頂くとよいでしょう。

首都圏の住宅売買市場の動向と傾向

最初に首都圏のレインズデータを閲覧し、市場動向をまとめてみました。具体的な数値などは、東日本不動産流通機構のレインズデータライブラリーよりご覧ください。一般公開されているものですので、不動産業界の人でなくても誰でも閲覧できます。

首都圏の中古マンションの動向と傾向

まずは、首都圏の中古マンションの市場動向を見てみました。

成約件数

成約件数、つまり何件の売買契約が成立したか?については、今年に入ってから前年同月比で概ね横ばいが続いている状況です。ただし、昨年は前年同月比でマイナスが続いていていた時期ですから、今年は去年と同程度で成約が少ないと解釈することもできそうです。

新規登録件数

新規登録件数、つまり、その時期に売り出した物件の件数ですが、こちらは前年同月比でプラスが続いており、売り物件が増えていることを確認できます。2022年7月に14,982件だったものが2023年7月には17,131件にまで増えています。

成約㎡単価:

2023年も前年同月比でプラスが続いており、価格上昇が続いています。ただし、上昇率は今年に入ってから鈍化しています。2022年7月の前年同月比(つまり2021年7月との比較)は12.9%でしたが、2023年7月の前年同月比は5.0%です。上昇しているものの伸びは鈍化している印象ですね。

首都圏の中古マンションのまとめ

売り物件が増えて、昨年(2022年)より在庫が増え続けていることもあり、価格は依然として高いものの、上昇率が鈍化しており、価格の踊り場が近いのかもしれません。

首都圏の中古一戸建て住宅の動向と傾向

次に、首都圏の中古一戸建て住宅の動向・傾向を見てみましょう。

成約件数

首都圏の中古一戸建て住宅の成約件数は、2022年も2023年も前年同月比でマイナス傾向が続いていますが、今年5月以降はマイナスが小さくなっていて、一見、回復傾向にも見えます。ただし、今年の前年比ということは、マイナス傾向だった2022年と同じかややマイナスということなので、まだ成約件数は少ないと言えるでしょう。

新規登録件数

新規登録件数、つまり売り出し物件は増えています。成約件数が伸びず売り物件が増えている状態ですから、当然に在庫数が非常に増えている状況です。

成約価格

中古一戸建ての成約価格は、しばらく高い価格が続いていたものの、今年に入って前年同月比が落ち着き、5月以降は概ね横ばいで推移しています。

首都圏の中古一戸建てのまとめ

中古マンションと同じく、在庫が非常に増えています。そして価格は中古マンションより落ち着いている状況で、踊り場に入っている可能性も考えられそうです。ただし、7月の成約価格だけを見るとやや前年同月比で少しだけプラスになっており、8月以降の動向を注視したいところです。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

近畿圏の住宅売買市場の動向と傾向

次に、近畿圏の住宅売買市場の動向と傾向を見ていきます。参考としてデータは、近畿レインズの不動産市場動向に掲載されていますので、そちらもご覧ください。

近畿圏の中古マンションの動向と傾向

近畿圏の中古マンションの市場動向と傾向を紹介します。

成約件数

近畿圏の中古マンションにおける成約件数、つまり契約した件数ですが、2023年7月は前年同月比を上回ったものの、今年は前年同月比でマイナスの月が多く、昨年からやや減っている状況が続いている状況です。

新規登録件数

新規登録件数、つまり売り出し件数は前年同月比で20%前後のプラスが続いている状況で、売り物件の件数は多くなってきています。

成約㎡単価

中古マンションの成約㎡単価は、今年も概ね前年同月比でプラスが続いていて高い状況です。ただし、前年に比較して上昇率が低い月が増えていて、価格上昇の鈍化の可能性もありそうです。

近畿圏の中古マンションのまとめ

近畿圏の中古マンションは、売り物件が増えてきており、買主にとっては選択肢が増えてきました。一方で価格はそろそろ踊り場に差し掛かりつつあるかもしれませんが、直近の7月の成約㎡単価は9%以上も上昇しており、これが一時的なものかどうか注視したいものです。

近畿圏の中古一戸建ての動向と傾向

近畿圏の中古一戸建ての売買に関する動向と傾向を見ていきます。

成約件数

中古一戸建ての成約件数は、2023年の序盤の前年同月比は横ばいでしたが、5月以降は上昇傾向にあり、7月は13.9%も上昇しています。

新規登録件数

新規登録件数は、今年に入って上昇傾向が顕著で7月は26.9%と大幅に増加しており、売り物件が増えています。

成約価格

中古一戸建ての成約価格は、今年の序盤は高めで推移したものの、4月以降の前年同月比は横ばいです。

近畿圏の中古一戸建てのまとめ

今年春以降、中古一戸建ての成約件数が増えているものの、売り物件はそれ以上のペースで増えていることも影響したのか、成約価格は横ばいという状況です。買主にとっては、選択肢が豊富になっていますが、価格相場の今後の動向が気になるところですね。

近畿圏の土地の動向と傾向

最後に近畿圏の土地売買の動向と傾向を見てみましょう。

成約件数

近畿圏の土地の成約件数は、2023年に入ってやや前年同月比でプラスが続いています。ただし、2022年は前年同月比がマイナスになっていて件数が少なかったので、今年は成約件数が戻りつつある状況と言えそうです。

新規登録件数

新規登録件数、つまり売り出し物件は、2023年に入って増加傾向が続いています。ただし、新規登録件数も2022年は前年同月比がマイナスになっていて件数が少なかったので、今年は戻りつつある状況と言えそうです。

成約㎡単価

土地の成約㎡単価は、2023年に入ってから横ばい傾向が続いています。ただし、2022年は前年同月比がプラスであったため、今年も高めの水準が続いていると言えます。

近畿圏の土地のまとめ

2023年の土地の市場動向は、2022年に比べて成約件数・売り出し物件ともに増えており、成約価格は概ね同水準です。これは、売り物件がやや増えたことで価格は落ち着いており、既に踊り場に入っている可能性がありそうです。

2023年前半の住宅売買の価格の動向のまとめ

2023年の住宅売買市場の動向・傾向をチェック

首都圏と近畿圏の地域差や中古マンション、一戸建てなどの物件種別による違いがある程度はあるものの、全体的に売り物件が増えてきたことと、成約件数が売り物件ほど増えていないことから、成約価格は落ち着いてきている様子です。

住宅ローンの金利が、住宅売買市場への影響が大きいと言われていますが、固定金利は昨年より上昇してきており、今後も引き上げられる可能性が取りざたされている状況です。ただし、変動金利は依然として低い状況のままでまだ上昇しておりません。

ここでは、今後の市場動向を予測できるわけではないので、その点に言及はしませんが、今年の春以降は価格が昨年までのようには上がっていないか横ばいであること、固定金利の上昇傾向であることを見れば、価格トレンドに変化があるのかもしれませんね。

文中で紹介したサイトで様々なデータを閲覧できますので、それらを参考にしてご自身でご判断ください。

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アネストの住宅インスペクション

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。