リノベーション済中古住宅の注意点

中古住宅を購入しようと物件を探していると「リノベーション済み物件」「リフォーム済み物件」などと書かれている広告を見ることも多いものです。こういった物件のうち、不動産会社が売主となっている割合は高いですが、このような買取再販事業は不動産会社にとって収益性が高くて魅力な事業となっています。

今後も、この事業に参入する会社が増えると予想され、リフォーム・リノベーション済み中古住宅も増える可能性が高いです。

今回の記事では、購入する機会がますます増えていくリフォーム・リノベーション済み中古住宅について、購入する際に買主が注意すべき点を解説します。

昔と最近のリノベーション済み中古住宅

中古住宅の売主は一般個人の方であることが多いですが、リフォーム・リノベーション済みの中古住宅の売主は不動産会社であることが多いです。

一般個人は売却前にリフォーム投資はしづらい

一般個人の方では、自宅をリノベーションしてから売却するだけの工事費用を捻出するのが難しいことも多いですし、リノベーションしたとしてもその工事費用を上乗せした価格で売れる保証がないため、個人でそれだけのリスクを負うことはなかなかできないです。

しかし、一般個人の売主であってもリフォーム済み物件として売り出されている物件がないわけではありません。

売却からそう遠くない時期にリフォームしていた場合は、リフォーム済みとまでは表記していなくても、「●●年にリフォーム済み」と広告等に記載されている物件は少なくありません。リフォームから5年程経過している物件をリフォーム済み物件と言えるかどうかは別として、こういった物件はよく見られます。

稀ではありますが、個人の売主でも部分的にリフォームしてから売り出しているケースがあります。あまりに痛んでいる箇所を修繕してから売るようなケースです。また、売り出し中にはリフォームしていないものの、引渡し前に売主負担で修繕してもらえるという条件のものもあります。

ただし、こういった物件でもあまり大きなリフォーム費用までは投資できないことが一般的です。

不動産会社がリフォーム・リノベーションに投資

不動産会社が一般個人から中古住宅を買い取って、リフォームしてから再販することはずっと以前からよくありました。綺麗に見える方が売りやすいですから、不動産会社なりに工夫しているわけです。

しかし、昔はクロスなどの内装を貼りかえる程度の小規模なリフォームをするだけでしたが、最近ではデザイン性に優れた、かつ間取りの変更や設備の交換まで行うようなリノベーションを行った物件が増えてきています。

たとえば、30年前ならよく見られた間取りでも今の購入者層には受け入れられづらいものも多いので、思い切って間取り変更までしていることがあるのです。都市部の中古マンションでは、室内のほぼ全ての範囲をリノベーションしている事例まで見られるようになりました。

不動産会社によっては、中古住宅の買取だけでも大きな投資ですが、さらにリノベーション工事にまで大きな投資をするケースも増えているのです。

中古住宅を購入してから、買主が自分でリノベーションをするには、その工事費用を準備することが難しいこともあって、リノベーション済みの中古住宅を有力な選択肢となっています。これからも増えていくのではないでしょうか。

リフォーム・リノベーション済み中古住宅で買主が注意すべき点

リフォーム・リノベーション済み物件は、綺麗でモダンなデザインなものも多く、買主にとっては魅力的です。リノベーション費用を購入費とは別に捻出しなくてよいというメリットもあります。それでは、逆にリスクやデメリット、注意点についても考えておきましょう。

リノベーション費用が上乗せされて高い

不動産会社が大きな投資をしているわけですから、それだけ販売価格が高くなるのは当然です。リノベーションされていない中古住宅に比べると売買金額が高くなります。しかし、購入後に自分でリノベーションする必要がないわけですから、総額でどちらが得かを考えましょう。

自分でデザイン・仕様を選べない

既にリノベーションされている物件である場合、買主が購入後に新たにリノベすることはほぼありません。リノベーション工事費用が二重になりますから、当然のことですね。自分で好みのデザインにしたい人にとっては、リノベーション済みではない方がよいという考え方もあるわけです。

注意すべきは建物の状態

リノベーション済み中古住宅には、買主にとって大きな問題があるため、十分に注意して購入判断しなければなりません。その代表格が建物の状態の確認です。

リノベーションをすることによって、建物の見た目はたいへん綺麗なものになっているでしょう。しかし、見えない部分がどのようになっているのかについて考えていない方が多いようです。

工事中に見つかった不具合を解決したか不明

たとえば、リノベーションをしていない中古住宅を購入したとして、自分でリノベーションするときをイメージしてください。工事前や工事の途中で「隠れていた箇所に雨漏り被害があって柱の一部が腐っている」と工務店から報告を受けたあなたは、「一緒にそれも補修してもらおう」と考えるでしょう。

しかし、不動産会社がリノベーションして再販する場合には、「壁を張ってしまえば見えないので、コストもかかるしそのままでもよいか」と考えることも実際にあるのです。これは、知らずに買う方にとっては怖ろしい話ですが現実に起こっていることです。

工事中の写真では判断が難しい

リノベーション工事中の写真を見せて頂いて確認する方法もありますが、売主が写真を提供してくれるとは限りません。また、提供してくれたとしても、問題のある写真をわざわざ提示してくることはないでしょう。

そうなりますと、リノベーション済みの中古物件ではリスクがあるまま購入することになることを理解しておく必要があります。

床下や屋根裏の確認は大事

ただ、床下や屋根裏などに点検口が設置されていて、そのなかを十分に確認できるのであれば、そういった確認をして購入判断の参考にする方法も有効です。床下も屋根裏も建物の構造耐力上主要な部分(=構造的に大事な部位)を確認できるスペースですから、ぜひ確認したいものです。

また、目につきやすいところは、不動産会社が補修して綺麗になっていても、普段は見ることのない床下・屋根裏は何も対処せず、そのままになっていることも多いので、見ておくとよいでしょう。

誤解してほしくないのは、リノベーション済み物件の全てが危ないということではなく、そのような物件も含まれているということです。

不動産業者に悪意がなくてもトラブルは起こる

ちなみに、売主となっている不動産会社に悪意がなくとも、リノベーション工事をした下請け業者が不動産会社にきちんと報告せずに、補修すべき点を補修せずに工事を完成させてしまっていることも多いです。

つまり、本当に不動産会社が問題を抱えた物件だと知らずに販売していることがあるのです。

不動産会社が下請け業者に工事を任せてしまって現場の監督を怠った結果ですが、多くの不動産会社には監督するだけの技術的な知識や経験がないため、このリスクは多くのリノベーション住宅にありうると言えるでしょう。

リノベーション済み物件を購入するのであれば、第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を利用することも考えましょう。また、リノベーション前に物件を知って見学できるのであれば、工事前や工事中(特に解体後)に診断してもらうのも有効です。

中古一戸建て住宅診断(ホームインスペクション)
中古住宅のホームインスペクション

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。