家を購入するときには、多くの買主(購入検討者)がホームインスペクション(住宅診断)を利用しています。インスペクションを実施することで、建物の施工不具合(新築の場合)や著しい劣化事象(中古の場合)の有無を確認することができるため、購入するかどうか判断する材料として役立っています。
また、購入後に建物の状態を把握することで、メンテナンスやリフォームなどを検討する際に活用することもできます。
一般的には、ホームインスペクションは、売買等の取引に直接関係のない第三者の立場で実施されるので、その客観的で、且つ専門的な立場から出された調査結果やアドバイスは利用者にとって有益な資料となっています。
このインスペクションにおいて、様々な建物の不具合が見つかることがあります。調査結果次第では、インスペクションの利用者は、売主や建築会社に対して、補修工事等の対応を請求することや、購入前であれば価格交渉することを検討するケースもあります。
今回は、ホームインスペクションで建物に何らかの不具合が見つかったとき、売主などに対して補修請求や価格交渉をできるか?について解説します。なお、不具合が見つかったときに、売主にインスペクション費用を請求できるかどうかについては、「ホームインスペクションで不具合が見つかったとき、売主に検査費用を請求できるか?」をご覧ください。
新築住宅で不具合が見つかったとき
新築住宅のホームインスペクションを行うと、物件によっては多くの指摘事項が見つかることがあります。もちろん、非常に施工品質が高くて指摘があっても非常に軽微なものに限られる物件もあります。
見つかった指摘事項に対する売主や建築会社の対応について説明します。
建物の構造耐力・性能・機能に影響を及ぼす不具合
建物の基本構造部分に関する施工不具合(瑕疵)が見つかった場合、これは売主や建設会社が法的に負っている責任の対象となるため、引渡し日から10年間は補修等の対応をしなければなりません。
基本構造部分とは、構造耐力上に関する部位と雨漏りを防止する部位です。
この基本構造部分以外でも建物性能・機能に影響を及ぼす不具合については、各社が保証やアフターサービスの基準を設けて対応していることが多いですが、小規模の売主等であれば、基準を設けていないこともあります。ただし、いずれにしましても、見つかった不具合については、都度、売主側と交渉していくことになります。
また、対象物件を購入する前に見つけた不具合であれば、契約を締結する前に、補修するよう交渉してから購入することができます。もし、補修対応しないと言うのであれば、購入すべきかどうか慎重に検討するとよいでしょう。
このとき、不具合を理由として価格交渉(値下げ交渉)をする人もいます。その対応を否定するつもりはないですが、新築ですから、まずはきちんと補修してもらうことを優先するようお勧めします。
美観上の問題(傷や汚れなど)
一般的に、ホームインスペクションでは、傷や汚れ、機能的に問題の無い何らかの隙間などについては、調査対象とならず、指摘もしないものです。前述の「構造耐力・性能・機能に影響を及ぼす不具合については、調査時に目視できる範囲で確認してもらえます(一部を除く)。
多くの場合、美観上の問題については、引渡し前に売主側へ指摘しておかないと補修対応してもらえないことが多いです。特に、入居後ともなれば、傷などを誰が付けたかわからないですからやむを得ないでしょう。よって、引渡し前のタイミングで購入者自身の目でチェックして、補修を求めておきましょう。
ただし、美観上の問題で価格交渉するのは無理があるでしょう。
中古住宅で不具合が見つかったとき
中古住宅のホームインスペクションを行って、建物の不具合が見つかったときに、売主などへ補修対応を請求したり、価格交渉したりできるか説明します。
請求する相手
中古住宅の売買では、買主と売主の他に不動産会社が仲介業者として取引に関与することが一般的です。この仲介業者は、売主が依頼する業者と買主が依頼する業者の2社となることも多いですし、売主と買主の双方の仲介を1社で行うこともよくあることです。
インスペクションで不具合が見つかったときに、買主から補修等を請求する相手は、この仲介業者ではなく売主です。
ただし、買主から売主に直接話すというわけではなく、仲介業者を介して話してもらう形となります。
売主による補修または価格交渉(値下げ)
買主から売主へ補修対応を求めたとき、売主が必ずしも補修するとは限りません。拒否されることもあるのです。
たとえば、自宅を売却しようとしている売主が、ある購入検討者がインスペクションを利用後に「外壁のひび割れを売主側で補修してくれるなら購入する」と交渉をもちかけたとしましょう。ここで売主が対応を検討しているときに、別の購入検討者が「そのままの状態で購入します」と言えば、売主はそちらに売りますよね。
購入検討者から「不具合があったので、値下げして欲しい」と交渉しても、同じことが言えます。
売主が不動産会社である場合
中古住宅でも売主が不動産会社という物件も少なくありません。元の所有者から買取した物件をリフォームして販売するようなケースです。これをメイン事業としている不動産会社もあります。
売主が不動産会社である中古住宅では、売買契約において、売主が引渡しから2年間の契約不適合責任を負う特約を付けることが一般的です。その対象となる不具合であれば、売買契約の締結前であっても売主が補修するという約束をすることは容易ですし、購入後であっても引渡しから2年以内であれば補修などを請求することができます。
購入後に請求できるのは、補修だけではありません。状況次第では損害賠償請求などを求められることもあります。
まとめ
以上のとおり、新築と中古住宅に分けて、ホームインスペクションで不具合が見つかったとき、補修請求や価格交渉をできるかどうかについて解説しました。調査結果次第で、売主側へ補修請求や価格交渉をできることがあることを理解できたと思います。
購入前の場合は、その物件を他の人がすぐに買いそうかどうかといった需給関係も考慮して、対応を検討しましょう。
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