住宅を購入しよう、または売却しようと考えている人にとって気になるテーマは、立地や新しさ、大きさ、間取りなどもそうですが、やはり価格が気にならない人はいないでしょう。
ずっと昔から、「今が買い時か?売り時か?」「今後、価格は上がるのか?下がるのか?」と多くの人が問い続けていることです。
はじめに:熱狂の終わりと新たなフェーズの幕開け
新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした2020年以降、首都圏の不動産市場は多くの人が驚くような活況が続きました。当初は、在宅ワークや外出の抑制による在宅時間の長さを理由に、マイホームを購入する、いわゆる実需の増加が中心とされていましたが、海外からの投資マネーも影響し、さらには国内の不動産会社による投資も大きく影響しました。
物件上昇などによる建築費の高騰により、新築住宅の価格が高騰していったことで、中古住宅への需要増となったことも重なっています。
あらゆることが、中古住宅の価格上昇に寄与したと言えるでしょう。特に首都圏の中古マンション市場は活況で、価格が高騰することになりました。
関東地方の中古マンションの価格動向の指標の1つとなる国交省の不動産価格指数をみると、2016年は「126」で、新型コロナが感染拡大した2020年は「150」であるのに対して、2025年は「219」になっています(東京都内に限定すれば上昇幅はもっと大きいでしょう)。10年もの間、顕著に上昇してきたことがわかります。
しかし、昨年から今年の不動産市場の動向を示すデータを見ていくと、昨年までとは明らかに様子が変わってきたことがわかります。
今回は、このことを東日本不動産流通機構(レインズ)が公開するデータを見て、要点を解説します。
首都圏の中古マンション市場の直近5年間と「踊り場」
まずは、市場を牽引してきた中古マンションの直近5年間の動きを振り返ってみましょう。
2021~2024年:ミニバブル?「買えば上がる」時代
この時期の首都圏中古マンション市場は、圧倒的な「売り手市場」でした。2021年のデータを見ると、新規登録件数(新たに売り出される物件)や在庫件数は減少していました。
共働きで高収入を得る「パワーカップル」によるマンション購入の影響があります。また、新築マンションの平均価格が上がり、「億ション」が当たり前のようになってきました。彼らの購買力は都心や利便性の高い郊外の優良な中古マンションへと向かい、相場を力強く牽引しました。
2025年~2026年序盤:実需の限界と価格の高止まり、踊り場
成約物件の㎡単価や成約価格は過去最高値を更新し続けました。2025年の年間集計では、成約㎡単価が「13年連続の上昇」を記録するなど、価格は高い状況でした。
しかし、水面下では徐々に変化が起きていたようです。物件価格があまりにも高騰したため、住宅ローンを組んで購入できる限界を超え始めていたのです。金利が上昇局面に入ったこともあり、住宅ローンの融資審査を通りづらくもなってきました。
そして昨年(2025年)後半から今年2026年の3月頃にかけて、市場は完全に「踊り場」を迎えました。成約㎡単価は依然として高水準を維持し、2020年5月以降70カ月以上にわたって連続上昇を記録していましたが、成約件数の伸び悩みと在庫の緩やかな増加が始まり、売り手と買い手の希望価格のギャップが埋まらない状態が続きました。
2026年春、ついにマンション市場の下落が見られた
踊り場で持ち堪えていた中古マンション市場ですが、2026年4月を境に、価格の下落が見られるようになりました。
2026年5月のレインズデータを見ると、首都圏中古マンションの「成約㎡単価」が前年同月比でマイナスに転じました。不動産業界でも注目を集めた約6年ぶりの下落です。
その後も8月までのデータを見ていくと、踊り場から、下落局面に入っていることがわかります。
2026年8月最新データで見る下落傾向、潮目の変化
直近の2026年8月度速報データをもう少し詳しく見てみましょう。この下落トレンドがより一層鮮明になっています。
- 成約件数(3,180件):前年同月比マイナス10.5%(5か月連続減)
- 成約価格(5,129万円):前年同月比マイナス2.8%(4か月連続減)
- 成約㎡単価(81.60万円):前年同月比マイナス3.8%(4か月連続減)
- 在庫件数(48,235件):前年同月比マイナス8.2%(6か月連続増)
価格・件数ともに見事なまでの「右肩下がり」です。
高騰してきた中古マンション市場ですが、今年、はっきりと潮目が変わったことが確認できます。
注目すべきは「在庫のダブつき」
成約が落ち込む一方で、売り出し中の物件(在庫)は急増しています。2026年8月の在庫件数は48,235件(前年同月比+8.2%)に達し、6か月連続の増加となりました。
新規で売り出し始める物件が増えるとともに、成約件数が鈍っていることで、在庫が増えている状況です。
徐々に市場(売主と買主)が、下落傾向に気づくことで、売主が「早く価格を下げて売らないとまずいかも」と思うようになることで、下落がもっと鮮明になる可能性もあります。
金利上昇が価格下落の要因に
金利がさらに上昇することで、実需の購入がより困難になります(住宅ローンの借り入れ金利があがれば、返済能力の見極めの問題で、借入可能額が下がるので買いづらくなる)。
特に都心のタワーマンションは、不動産会社が再販目的でたくさん購入しているのですが、事業資金(仕入れ資金)を借り入れで賄っている場合、事業そのものが厳しくなりそうです。
中国からの投資減も影響あり
海外の人もタワーマンションなどのマンションを多く買っていましたが、そのなかでも中国マネーは価格高騰に強く影響していました。しかし、日中間の摩擦の影響でその資金は以前ほど入っていません。
欧米の人も日本の不動産を多く購入していますが、こちらは都心のタワーマンションというよりも、地方の古い戸建て住宅を好む人が多く、マンション価格の下支えにはなっていません。
いつ売買するべきか悩みどころ
中古マンションの価格が下落傾向に入っていることは確認できました。では、いつ買うべきか、いつ売るべきかも知りたいですね。ただ、ここは、今後の市場予測のプロではありませんので、それぞれで考えてください。
業界の人がユーチューブなどでも情報発信していますが、いろいろな人の意見を見る方がよいでしょう。
レインズで、毎月のデータを公表しているので、それをチェックしながらタイミングを考えるとよいでしょう。その月の成約㎡単価と成約価格に目が行きがちですが、個人的には在庫件数の動向を注視すべきと考えます。
在庫が増えているときは、売り出し価格と購入希望価格に乖離が大きい可能性があります。売主は高く売りたいし、買主は安く買いたいという当然の前提がありますが、その妥当なラインが売主と買主の認識差が大きいということです。
こういうときは、下がる可能性の方が高いとみるべきでしょう。
問題は、いつまでこの傾向が続くかです。一時的な調整とみるのか、長く下落傾向が続くとみるかです。
また、金利上昇によって購入しづらくなるわけですので、今後、さらに金利が上がると読むかどうかも大きなポイントです。金利が上昇するならより一層の下落となりやすいため、自己資金が多いほど、まだ買わないという選択肢が考えられますね。
執筆者

- 編集担当
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。









