中古住宅の売買件数が増加傾向にあるとおり、多くの人がマイホームの購入に際して中古物件に注目するようになりました。新築住宅の価格が高すぎて購入しづらいことや、中古住宅を自分好みにリフォームする良さが理解されつつあることなどが、影響しているようです。
中古住宅の売買契約を済ませた人にとって、その引き渡し前や引渡し後にすべきことがいろいろあるのですが、ここでは、購入した中古住宅の引き渡し後、入居するまでの間に買主がすべきことを紹介します。なお、売買契約後で、引き渡しを受ける前のことについては、「中古住宅の売買契約後・引渡し前の注意点」で紹介しています。
引渡し後は、新居での新生活への期待感でいっぱいだという人が多いですが、冷静に対処しておくべきことも少なくないので、ここでやるべきことを確認しておきましょう。
中古住宅の引き渡しとは?
中古住宅の引き渡しについて基本的なことをおさらいしておきましょう。
引き渡しとは?
引き渡しとは、ある物を誰かから他の誰かへ受け渡すことです。普段は意識せずに皆さんがしていることですが、スーパーマーケットやコンビニで購入した商品もレジで精算して引渡しを受けている形です。
中古住宅の売買における引き渡し
中古住宅の売買においては、住宅を売主から買主へ受け渡すことを意味しています。引き渡しは売買に際してのみ生じることではないので、実は賃貸契約でも、貸主から借主へ引き渡しをしています。
住宅の売買における一般的に引き渡しの仕方は、鍵の引き渡しです。売主から買主へ鍵を受け渡して、それ以降は買主が自由に使えるようになるタイミングが引き渡しです。
入居前に建物の状態をチェック
中古住宅を購入した人が、引き渡しを受けてから入居するまでの間に行うべきことで、建物に関してとても大事なことが、建物の状態をチェックすることです。
入居前の建物チェックで確認すべき点
建物チェックをする際の基本的な考え方は、目視できる範囲は全て診るということです。
屋外であれば、基礎・外壁・屋根のひび割れ・欠損(ただし、屋根は確認範囲が限られる)、境界線にある塀・フェンスやカーポートの支柱などのぐらつき・著しい割れを確認しましょう。
屋内なら、床・壁・天井の著しい割れ・欠損・不審な染み(漏水の可能性)、床と壁の大きな傾き、建具・窓・水回り設備の動作状況を確認しましょう。
また、できれば、床下と屋根裏・天井裏については、点検口から覗いて目視して、基礎や構造材の著しい割れ、断熱不良、漏水などを確認してください。
なお、このチェックの際は、売買契約の際に交付された物件状況報告書とも照合するとよいでしょう。この物件状況報告書は、売主が建物の状態について知っていることを買主へ告知したもので、シロアリや雨漏り、腐食、故障などについて記載されているはずです。
売主の告知内容と現実に相違がある場合、売主に補修等を請求できることがありますので、この照合は大事です。
入居前の建物チェックのメリット
購入する前の現地見学の際に、間取りや広さ、立地環境、建物の状態をチェック済みだと思いますが、引渡し後・入居前のタイミングで、建物の状態は再チェックしておきましょう。補修すべき箇所を確認して、内装などのリフォームと一緒に補修してもらうことで、費用対効果が高いことが多いため、割安で補修工事をすることができるメリットがあります。
これらのメリットのことを考えれば、購入する前に専門家によるホームインスペクション(住宅診断)を入れていない人は、このタイミングで入れることを前向きに検討してください。自分たちだけでは見つけられない、または判断できない建物の不具合を見つけてもらえることが多いです。
売買契約書で売主の契約不適合責任の期間を確認し、再チェック
建物チェックの機会は、入居前だけとは限りません。売買契約の条件で、売主の契約不適合責任の期間を定めていることが多いですが、その期間内(期限が切れる直前)にも再チェックして、売主に不具合の補修などを請求すべき事象がないか点検することを推奨します。
購入前や引き渡し後に建物チェックをしていても、しばらく生活してから症状が現れることがあるため、このタイミングでの再チェックも重要なことだと言えます。
売主の契約不適合責任とは、売主が買主に対して負っている責任で、契約書で規定した不具合がある場合に、買主から売主へ補修や損害賠償などを請求することができるものです。以前は、これを「瑕疵担保責任」と称していましたが、民法の改正により「契約不適合責任」と呼ぶようになりました。
ただし、全ての契約において売主の契約不適合責任が認められているわけではなく、責任がある場合でも期間が異なるため(一般的には3ヶ月が多い)、その内容は売買契約書で確認してください。
設備付帯表と設備のチェック
引き渡し後、買主が住宅設備について動作不良などの不具合に気づくことがあります。契約時点で売主から不具合を聞いていたことを除いて、聞いていたことと異なる不具合が確認された場合、売主へ補修などを請求できることがあるため、設備のチェックも行ってください。
売主からの申告内容は、売買契約時に交付された設備付帯表で確認してください。
ただし、一般的に設備類は契約不適合責任の対象外となっており、引き渡しから3ヶ月もの期間がなく、7日となっていることが多いです。その内容は、売買契約書や設備付帯表で確認しましょう。7日はすぐに経過するので、引き渡し後すぐに確認する必要がありますね。
点検口の設置と床下・屋根裏の点検
多くの住宅には、床下や屋根裏の点検をできるように、点検口が設置されています。床下については、床下収納庫と点検口が兼用になっていることも多いです。
床下も屋根裏も建物の構造耐力上の大事な部位や断熱材、配管などを確認できる大事なスペースですから、点検することは重要です。
しかし、一部の住宅では点検口が無く、購入前などに点検できていない人もいます。そういう物件を購入したときは、引き渡し後すぐにリフォーム業者に依頼するなどして、点検口を設置し、実際に点検してください。そして、もし、不具合が見つかれば、他のリフォームと一緒に補修工事をしてもらうことも考えましょう。
リフォーム・修繕工事と清掃(ハウスクリーニング)
中古住宅の引き渡し後のリフォームやハウスクリーニングについて注意点も含めて説明します。
リフォーム・修繕工事
中古住宅を購入した人のうち、多くの割合の人が、何らかのリフォームをしています。壁と天井のクロス(壁紙)の張り替えだけを行うケースもあれば、キッチン・トイレ・風呂などの水回り設備を交換する人、外装(外壁など)の塗装・修繕をする人もいます。
引き渡し後、早い段階でリフォーム業者に相談して、リフォーム案と工事の見積りを提案してもらうとよいでしょう。
リフォーム時の最も大きな注意点は、相見積もりをとることです。同じ項目のリフォームで複数業者に見積り依頼すると、驚くような金額差が出ることが少なくありません。決して、安い方がよいわけではないですが、一部で酷いボッタクリ業者が存在することも確かですので、相見積もりを取ることは有効です。
清掃(ハウスクリーニング)
購入した住宅の引き渡しを受けた後、入居する前に、主に屋内について清掃する必要があります。前の所有者(売主)が綺麗にして退去していることもあれば、埃だらけのときもありますので、自分たちで清掃するか、ハウスクリーニング業者に依頼するかどうかは、現場の状況に応じて判断してください。
内装などのリフォームを依頼した場合、リフォーム業者が清掃するものですが、不十分なケースも多いですから、現地確認後、必要に応じた対応を考えましょう。
売買契約書・図面・登記関係書類などの整理・保管
中古住宅を購入した時、いろいろな書類やデータを不動産会社などから渡されることになりますが、そのなかには大事な物が多いので、大切に整理して保管してください。その一例を紹介します。
重要事項説明書・売買契約書・物件状況報告書・付帯設備表
売買契約前の重要事項説明の際に受領した重要事項説明書、契約時に受領した売買契約書や物件状況報告書・付帯設備表は、一緒にまとめて保管しておきましょう。後で何か売主や不動産会社とトラブルが発生した際に、これらを確認すべきことがあります。
設計図
売主から、その建物の設計図を引き継ぎ、保管しておきましょう。ただし、売主が紛失していることも多いため、引き継げないこともあります。その際は、新築工事を請け負った工務店や設計した設計事務所に問合せすることで受け取れることもありますが、売主を介してお願いしないといけないこともあります。
この設計図は、リフォームやメンテナンスの際に役立つことがあるため、存在するなら引き継ぐことをお勧めしますが、どうしても入手できない場合は、売買する際に不動産会社が作成した簡易な間取図だけでも保管しておきましょう。
登記関係の資料
売買の取引を全て完了すると、購入した住宅の登記簿に買主が所有者として登記されます。他にも住宅ローンを利用すれば抵当権なども登記されます。それを確認するためにも、全部事項証明書(登記された内容を確認できる書面)を保管しておきましょう。
一般的には、登記完了後、司法書士から送付してくるはずです。その際、登記識別情報(以前の登記済権利証に代わるもの)も一緒に受け取れるはずですので、一緒に保管しておいてください。
また、登記された建物図面や地積測量図は重要事項説明のときに受け取っているはずです。これらも一緒に保管しておきましょう。
住宅ローン関係の資料
住宅ローンを利用して中古住宅を購入する人が多いです。その場合、金融機関と締結した金銭消費貸借契約書(ローンの契約書)へ返済予定表を保管しておきましょう。購入に際して、FP(ファイナンシャル・プランナー)にライフプランや返済計画の相談をしているなら、その時の資料も一緒に確認できるよう保管するとよいでしょう。計画と異なる住宅購入となった場合は、改めて相談することも検討しましょう。
ライフラインの手続き・住所変更・引っ越し・近隣挨拶
引越し前にすべきことの1つは、ライフラインの利用・開栓などの手続きと住所変更の申請です。ライフラインとは、電気・ガス・水道・インターネットのことで、その移転や新設の手続きが必要です。
役所での住所変更の手続きも必要ですが、これに伴って金融機関など、個人情報が登録されている先でも住所変更手続きが必要です。どこに登録されている把握しきれていないこともあり、全ての手続きを終えるのは意外と大変です。
また、引越し業者の手配(リフォームと一緒にで相見積もりを推奨)と引越し、そして引越し時に行う近隣挨拶も忘れないでおきましょう。
まとめ:引き渡し後もやるべきことが多い
中古住宅を購入して引き渡し後になっても、意外とやることが多いですよね。ライフラインや住所変更、資料の整理などのような細かで複雑なこともありますし、建物や設備チェックのように知識と経験が必要なこともあるので、時間と労力を要しますが、しっかり対応しておきましょう。その後は、よい新居での生活となることを願っています。
執筆者

- 編集担当
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。