住宅・不動産業界の知人のアドバイス

住宅購入者の方のなかには、住宅・不動産業界に勤める友人や知人がいて、その方にアドバイスをもらうこともあります。なかには、運良く身内が業界関係者ということもあります。大きな買い物をする上で、たいへん心強い存在となりますね。

しかし、この知人や身内である業界関係者のアドバイスが、逆効果となるケースも少なくありません。

住宅・不動産・建築を一人でサポートは困難

住宅や不動産、または建築と一言で言っても業界は広く、それぞれの専門分野だけではわからないことが多いものです。

様々な住宅検査(ホームインスペクション)やアドバイスなどのサービスを行うアネストでも、一人で全てのアドバイスやサポートができるものではありません。

良かれと思ってアドバイスしてくれた内容であっても、それが事実と異なることもあれば、間違った方向へと導くこともあるものです。

友人のアドバイスを信じて失敗した事例

たとえば、新築住宅を計画していたある人に、

「友人がハウスメーカーに勤めていて、その友人より『ハウスメーカーが委託している○○検査は、うちの現場の職人も嫌がるぐらい厳しい検査をする』って言っていたから大丈夫です」

と言う人がいました。

ハウスメーカーは、外部検査を利用していることが一般的ですが、その検査が厳しいものだから大丈夫だという趣旨のお話です。

これと同じお話を何度も伺ったことがあります。しかし、そのうちの一人の方は、実際に工事が始まると不具合が発生したため、途中から弊社に依頼されたのですが、既に見えない箇所に不安が残ってしまったのです。

これと似た事例は多いのですが、お客様のご友人が話すことを間違いとは言いにくく、こちらとしても辛いところです。もちろん、その友人に悪意はなく、単なる無知だったわけなのですが、それを信用した人にとっては大変ですね。

本当に信用できる人というのは、自分自身の専門分野以外は、「わからない」「専門外だ」とはっきり言える人です。営業担当者で建築現場に詳しい人は大変少ないですし、現場の人でも担当の工事種別が違えば専門外です。

大工のお父様の正直な助言

「父が大工ですが、大工工事以外は自信がないと言っているので、検査して欲しい」

という方もいらっしゃいました。この父こそ信頼できる人だと感じます。

大工といえども住宅建築の全てに精通しているわけではありません。たとえば、基礎工事は専門外ですから、基礎の配筋検査やコンクリート打設時の立会い検査を依頼して、大工工事は父に診てもらうということも検討するとよいでしょう。

友人の不動産会社・建築会社に依頼して後悔する事例

もう1つ、知人・友人との間で問題となる事例をご紹介します。

住宅の新築やリフォーム工事を知人や友人に依頼される方もいらっしゃいます。もしくは、近所の知り合いに依頼されることもあります。

こういった場合、取引の進め方に問題があったり工事に不具合があったりしたときに、「知人・友人なのでクレームや補修要求を言いにくい」という方が非常に多いです。今までに何度、同じお話を伺ったかわかりません。

何度か、「友人には言えないので、内緒で見に来てほしい」と相談されたこともありました。お客様が所有する住宅ですから、友人の了解なく住宅検査をすることは可能です。しかし、そこまで遠慮しなければいけない状態であれば、大きな問題(施工不良など)が見つかったときにどうするのでしょうか。

この知人・友人が善意であるだけでなく、知識的にも技術的にも信頼できる人(または会社)でない限り、むしろ全く知らない会社に依頼した方が良い結果を生みやすいのではないかと感じています。

善意だけでは、良い家造りはできません。

たとえ知人・友人といえども、しっかり相手を見極める必要があります。悪意でなくともトラブルになれば、しこりが残り、人間関係まで悪化してしまうものです。

不動産・建築業界の人が不動産・建築のプロとは限らない

長年、住宅業界で働いていてよくわかったことは、不動産・建築業界にいる人たちの多くは、不動産・建築の専門家ではないということです。専門家と言える人の方が少ないのではないでしょうか。それは、何も勤続年数が不足するからというわけではなく、勉強不足だからです。

何度も何度も不動産を売ったり買ったり繰り返す人は稀です。資産家が投資用不動産の売買・建築を繰り返すうちに、非常に詳しくなる人はいますが、大部分の人はそうではありません。それだけに、不動産・建築業界の人にとっては、お客様の知識と経験が圧倒的に不足するため、多少の知識があれば何とか仕事ができてしまう面があります。

これが、勉強不足の人たちを生んでしまう要因になっていると思われます。

もちろん、本当によく勉強されていて、詳しい営業マンや建築技術者もいます。そういった人が担当になってくれればよいのですが、そこは運任せの部分もありますし、知識と経験のない人がそれを見極めることはあまりにも難しいでしょう。

友人だから、身内だからというだけでは、安心できないことを理解しておきましょう。

執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。