住宅を購入するとき、または所有する家のリフォームやメンテナンスを検討するとき、多くの人がホームインスペクションを利用しています。
ホームインスペクションとは、調査時点における建物の状態(施工不具合や劣化状況の有無)を確認する専門的サービスで、主に建築士や既存住宅状況調査技術者といった資格を持つ専門家が調査を担当しており、住宅診断とも呼ばれています。
このホームインスペクションを行うタイミングと、季節や天候について考えたことはありますか?多くの人が、季節や天候のことまで考える余裕がなく、利用しているのではないでしょうか。
そこで、あまり普段は注目されることがない「ホームインスペクションと季節・天気」の関係性について解説します。ただし、先に言っておきますが、依頼者が天気・季節を選んで依頼できることはあまりないので、何か良い解決策を見つけられるというものではなく、あくまでも予備知識の紹介です。
雨や風とホームインスペクションの関係
ホームインスペクション(住宅診断)を依頼しようとする人が、天候について最も気にすることがあるのは、雨です。実際に「調査予定日が雨の予報ですが、インスペクションはできますか?」と聞かれることは少なくありません。
これについては、雨だけではなく、風のことも合わせて考えておく必要がありますので、説明します。
台風や豪雨のとき
ちょっと雨が降るくらいであれば、ホームインスペクションをする上で何も問題はありません。
しかい、台風のときや、豪雨、強風を伴う雨のときには、注意が必要です。このような天気のときは、屋外での視界が悪く、外壁や屋根の症状が見づらくなりがちです。そして、そもそも危ないという問題もありますね。
よって、台風などによって、豪雨または強風と伴う雨のときは、インスペクション業者から日程延期の相談が入ることになるでしょう。インスペクションの利用を急ぐ場合であっても、基本的には依頼者としても延期対応する方向で考えましょう。
強風ではない雨天や降雨の直後のとき
小雨ではなく、しっかり雨が降っている状況ですが、強い風がないときはどうでしょうか。
実は、このタイミングで行うホームインスペクションには、メリットがあります。それは、以下の2点です。
- 雨漏りを確認しやすい
- 敷地内の排水状況を確認しやすい
雨漏りを確認しやすい
一般的に雨漏りしているかどうか確認する方法は、雨漏りらしき跡(染みなど)があるかどうか目視していきます。ただし、仮に染みが見つかったとしても、それが雨漏りかどうか判断できないことは多いです。降雨の際にインスペクションをすることで、その場で雨漏りを確認できることがあるため、メリットの1つになりえるのです。
ただし、強雨を伴わない降雨のときには漏らず、強風の時だけ漏ることも多いです。また、風向きによって漏ったり、漏らなかったりということもありますので、雨天時なら必ず雨漏りを確認できるわけではないことを理解しておいてください。
敷地内の排水状況を確認しやすい
また、雨が降ったときに、敷地内に雨水が大量に滞留していないか、敷地外から敷地内へ雨水が流れこんでいないか確認できることがあり、これもメリットだと言えます。排水の悪い敷地である場合、常にじめじめしていて、基礎や外壁などにいつもコケやカビが付いているということもあります。
雨漏りや敷地の排水状況は、雨天のときだけに限らず、雨天の直後(雨上がり)のタイミングでも確認できることがあります。むしろ、雨が降ってから少し時間が経過してからの方が、症状を確認しやすいこともあります。
雨の無い強風のとき
雨が降っておらず、強風だけがある日もありますね。雨が降っていないのであれば、視界は悪くないので、屋外の調査でも外壁や屋根を診断する上で障害にはなりません。
そして、強風時に行うホームインスペクションで、ごくたまにメリットなることは、異音です。
ホームインスペクションを利用された人から、稀に「屋根裏あたりで何かの音がする」と相談されることがあります。新築住宅であれば、建築会社に見てもらうことになりますが、強風のときしか鳴らない音であれば、行った時には鳴らないことが多く、状況を把握することすら難しくなります。
過去に何度か(僅かですが)、ホームインスペクションのために現地へ行った際に異音が聞こえたことがあり、偶然にも原因までわかったことがあります。ただし、音が鳴ったときに居合わせてもわからない可能性は十分にあります。
屋上や足場は危ない
台風や豪風、またはそれほどまでに強風ではない雨のときに調査を行う上で共通のデメリットがあります。それは、屋上や足場での調査が危ないために、調査の一部が中止になることがあるという点です。
たとえば、手すりがない屋上では、滑って落下するリスクがあるため、強い風がなくても雨量次第で中止にせざるを得ないことがあります。また、建築途中に行うインスペクションでは、足場に登って作業することがありますが、雨量や強風により実施できないと判断することがあります。
積雪があるときのホームインスペクション
積雪が多い地域では、積雪により調査できる建物の範囲が限定されることを理解しておく必要があります。
想像できることだと思いますが、基礎や外壁周りに積雪があると、それにより隠れた部分は調査できません。あ屋根に雪が積もっていると屋根も調査できません。
よって、積雪が多い地域では、よほど急ぐ理由がない限りは、雪解けを待ってからホームインスペクションを利用することになります。ただし、売買時に行うインスペクションでは、春まで売主が待ってくれないので、見られる範囲だけでも調査して欲しいとの要望もあります。
夏の屋根裏の調査は本当に厳しい

夏は、暑くてホームインスペクションに立ち会う人も大変ですので、調査を終える時間くらいに合流してもらって、最後に調査結果を説明するケースもあります。しかし、ホームインスペクター(診断を行う住宅検査員)は、暑い中でも粛々と業務を進めることになります。
地域にもよりますが、7月~9月上旬までは、厳しい環境下での調査業務となりがちです。
そして、最も厳しいのは、屋根裏の調査です。屋外や室内と比べて、屋根裏の気温は著しく高くなっているため(一部の物件を除く)、ホームインスペクターも屋根裏へ入る前に気合を入れ直して臨むことになります。検査員が屋根裏へ入った後に、点検口からその様子を依頼者が覗いていることも多いですが、覗くだけでも暑さに耐えられない人も多いです。
実は、屋根裏は、4月後半くらいから、しっかりと暑くて、6月に入ると非常に暑いです。夏になる前から大変な作業なのです。
依頼者としては、一緒に屋根裏は入ってもらうことはないので、季節によるメリット・デメリットはないでしょう。
現実には、ホームインスペクション時の天気を選べない
ここまで読んでみると、雨漏りが心配だから雨の日か雨上がりに診断してもらいたいなどと考える人も多いでしょう。しかし、現実的には、依頼する際に天気を選ぶことは難しく、希望通りにならいことが多いです。
天気予報はよくはずれますし、1週間前や2週間前の時点なら、よりあてにならないですよね。当日か前日になるまで天気のことは判断しづらいです。当日の天気予報だってはずれることがあります。
また一方で、直前になってからホームインスペクションを依頼しようとしても空き枠がなくて、依頼を受けてもらえないことも多いですし、天気をみて当時や直前にキャンセル・日程延期をするとキャンセル料がかかることになります。
以上の状況から、インスペクション時の天気は選びづらいということです。急がなくてよいなら、季節はある程度、選べますが、天気は難しいですね。
執筆者

- 編集担当
- 2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。