パワービルダーの建売とホームインスペクション

建売住宅を購入する方は、パワービルダーが分譲する物件を購入するケースが多いです。パワービルダーは、悪い評判が少なくないため、不安になる人も少なくないですが、その実態(パワービルダーの住宅が良くないかどうか)とその対策としてのホームインスペクション(住宅診断)について解説します。

パワービルダーに関する基礎知識

全国的にパワービルダーと呼ばれる建売住宅の開発・販売を行う分譲業者が、たいへん多くの建売住宅を供給しています。そのパワービルダーについて、基礎知識をおさらいしておきましょう。

パワービルダーとは?

不動産業界おいて、一般的にパワービルダーと呼ばれている業者は、購入層が大変多い価格帯(地域によるが、2,000万~4,000万円台)で非常に多くの建売住宅を供給する分譲業者です。同エリアで同じ大きさの建売住宅で比較すると、パワービルダーの物件は他の業者(地場の不動産会社や大手ハウスメーカー)が供給するものより、安いことが多いです。

この安さを最大の武器として、大量供給・大量販売を可能にしています。

新築住宅購入者にとっては、買いやすい価格帯で供給されるのですから、メリットになっています。

パワービルダーの代表格が、飯田グループです。飯田産業や一建設、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームなどがそのグループ企業です。他にはオープンハウスのグループ(オープンハウス・ディベロップメント、オープンハウス・アーキテクト、ホーク・ワン)も代表格と言えるでしょう。これらの企業は、建売住宅の開発・販売だけをしているわけではなく、不動産仲介などの別事業も行っています。

パワービルダーの建売住宅の特徴

パワービルダーが供給する建売住宅の特徴を挙げてみます。

  • 物件数・供給棟数が非常に多い
  • 価格が安い
  • 標準仕様になっていないものが多い
  • 現場監督の人数不足
  • 適切な工事監理を期待できない

やはり、供給棟数が多いことと、価格が安い(購入しやすい)ということが2大特徴と言えるでしょう。

地域によっては、建売住宅を購入検討するなら、パワービルダー以外の選択肢がほとんどないこともあります。

標準仕様になっていないものの例としては、カーテンレールや網戸などのように必要とする人が多い設備もあるため、建物本体の購入価格以外の費用についてはよく検討する必要があります。

現場監督の不足で現場管理・品質管理が疎かに

マイナス面の特徴となっているのが、現場監督の人数不足です。これは、現場監督が1人あたりで担当する棟数が多くなっているということでもあり、このことが現場管理・品質管理の面でデメリットになっている現場が散見されます。

ただし、現場監督は多くの企業で人手不足です。パワービルダーだけの問題ではなくなってきました。

工事監理が適切にされていない

適切な工事監理がされていないことも、施工不具合などの問題を引き起こしがちです。

工事監理とは、設計図どおりの施工をしているか確認するなどの業務のことですが、この業務を監理者がしていないことが本当に多いです。このことも施工品質の面でマイナスに作用しています。

しかし、工事監理をきちんとしていないのは、実はパワービルダーだけではなく、大手ハウスメーカーでも同様の状況が長年続いています。

一級建築士の建売住宅の住宅診断で安心できる

物件によって差があるパワービルダーの建て売り

パワービルダーの建て売り住宅の多くは、低価格(ローコストで建築・販売)であることが強みになっており、これまでの分譲実績も非常に大きなものです。

建売住宅のホームインスペクション(住宅診断)の経験より

価格が安いことは住宅を買う人にとって嬉しいことですが、パワービルダーが供給する建売住宅の低品質さが問題視されて、口コミサイトなどで投稿されることも多く、実際にアネストには多くの方からパワービルダーによる建売住宅のホームインスペクション(住宅診断)のご依頼があります。

相当な棟数の物件に対してホームインスペクション(住宅診断)をしてきた経験から、パワービルダーの建売住宅でも、施工品質の良し悪しは物件によって大きな差異があることがわかっています。

下請け業者・孫請け業者の対応次第

これはパワービルダーに限った話ではありませんが、大手が分譲する住宅では、物件によって施工する業者(下請け・孫請け)は異なるものです。多くの下請け業者と契約して、施工を任せているのですが、その下請け業者によって施工の品質には開きがあります。

低価格とするために、当然ながらいろいろなコストを削る努力をしていることは本来ならよいことでもあるのですが、施工管理や工事監理(検査のようなもの)の人員が十分でないことは品質面でマイナスに作用しています。また、下請け業者への教育や管理という点でも疑問が多いです。

結局、下請け業者次第で個々の住宅の施工品質がどうにでもなってしまうところがあるのです。

短期間で建築されるようになった住宅ですが、工業化によって期間が短縮された面だけではなく、現場での監理が適切になされていない現実もあることを買主は理解しておかなければなりません。

参考:新築一戸建て完成物件のホームインスペクション(住宅診断)の指摘事例TOP5

口コミが正しいとは限らない

しっかりお伝えしておきたいことがあります。口コミは信用できない情報も多いということです。

インターネット上で、いろいろな口コミを見て心配になったという方も多いです。そういった口コミは事実よりも大袈裟に書かれていることも多く、投稿された口コミの全てをそのまま受け取るべきではないと考えます。

ただし、問題視される物件があることも事実です。パワービルダーだからという理由だけで判断すべきことでもないですが、第三者の新築一戸建て住宅診断(建売住宅のホームインスペクション)の利用も検討してよいのではないでしょうか。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。