再建築不可の中古住宅と住宅診断(ホームインスペクション)

住宅診断(ホームインスペクション)をご依頼いただいたときの対象物件が、再建築不可の中古住宅であったことが何度かあります。再建築不可の物件自体はそう多くはないのですが、それでも住宅診断(ホームインスペクション)を利用する人がいるわけですから、一定数の取引があるのですね。

今回は、この再建築不可物件と住宅診断(ホームインスペクション)についてお話しします。

再建築不可を理解する

再建築不可という言葉からも建替えできないという意味が分かるかと思いますが、正しく理解して頂くために要点を説明しておきます。

再建築不可の中古住宅とは?

再建築不可の中古住宅と聞いても、どのような物件のことがはっきりわからないという人もいますから、説明しておきます。

その名の通り、今後、その住宅を建て替えすることができない物件のことを再建築不可の物件と言います。

自分が所有する住宅であるにも関わらず、建て替えが出来ないというのも不思議に思うかもしれません。建物を新たに建築するときには法規を守って建てなければなりませんが、建築しても良い条件を満たしていない物件あり、そのような住宅を購入しても、解体・撤去して新たに新築することができないのです。

再建築不可の住宅を購入するメリット・デメリット

売買される金額が安いことがメリットだと言えます。しかし、将来、これを売却しようと思っても同じく安く売らざるを得ません。建て替えできないということは、古くなれば居住していくことが難しくなることから、資産価値も低いです。

安いことはメリットですが、住宅ローンの借り入れが困難であるため、全額を現金で支払うか高い金利で住宅ローンを組まなければならず、購入条件もよくありません。

建て替えできないがリフォームは可能

再建築不可の住宅は、建て替えできないもののリフォームすることはできるため、このような物件を購入する多くの人がリフォームしてから居住しています。基礎、柱、屋根などの主要構造は原則として変更できないため、補修しながら居住していくことになります。

再建築不可の中古住宅を購入するときの注意点

最大のデメリットは建て替えできないことですが、それでも購入しようとする人のために注意点をまとめておきます。

基本構造部に大きな問題があると補修対応が難しいこともある

基礎や柱などの基本構造部分については、新しいものに変更することができないことが難点となっていますが、実際に何か問題があっても補修で対応しなければなりません。その損傷具合や劣化具合、腐食などがどんなにひどくても原則は補修対応です。

そうなれば、十分な処置をできないこともあり、長く居住していくには適さないこともありうるのです。

再建築不可物件を購入してリフォームのために壁を解体したところ、土台が広範囲に腐っていて、基礎の床下側に大きな亀裂があったとすれば、できれば建替えた方がよいと考えることもあるのですが、それでも補修で対応しなければなりません。

十分に補修できるものであればよいのですが、それが難しい場合もあるのです。

再建築不可物件は傷んでいる建物が多い

再建築不可の建物を住宅診断(ホームインスペクション)していて気づくことは、傷んだ建物に出会う確率が高いということです。それまでの所有者としても、資産価値が低く、高く売ることができないことから、あまりメンテナンスに大きなコストを投資したくないという人が多いのです。

建替えできない住宅であれば、早めのメンテナンスで大事に使っていった方がよいのですが、資産価値は投資額へ大きな影響を及ぼすようです。しっかり住宅診断(ホームインスペクション)して現況を把握しておいた方がよいですね。

リフォーム時の建築コストが割高になることがある

ほとんどの再建築不可物件は路地の奥にある物件です。道路または通路を奥まで歩いて入る必要があり、リフォーム工事をするときの業者は重い建築資材などを奥まで運ばなければなりません。このことは、建築コストが高くなることを意味しています。

割高になることも含めてリフォーム予算を検討していないと、購入後に後悔することもあるでしょう。

リフォーム済みの再建築不可物件に要注意

最後に、リフォーム済みの再建築不可物件についてです。

不動産会社が元の所有者から買い取った物件をリフォームして再販することがあり、そういった物件のなかには、再建築不可の物件が含まれることがあります。建て替えできないことは重要な事実ですから、買主に対して説明する義務がありますから、黙って売られることはありません。

但し、リフォーム済みの中古住宅は、そのた建物が抱える問題点をきちんと解決せずに蓋をしてしまっていることがよくあります。問題点を補修するにはコストや手間がかかり、不動産会社の利益を圧縮するため、見て見ぬふりしてしまう現場があるのです。

基本的に中古住宅を購入するならば、リフォームする前の物件の方がオススメなのですが、これは再建築不可物件でも同じことが言えます。

再建築不可でリフォーム済みの物件であるならば、必ず床下や屋根裏の内部まで専門家に診断してもらうとよいでしょう。

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執筆者

アネスト
アネスト編集担当
2003年より、第三者の立場で一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)、内覧会立会い・同行サービスを行っており、住宅・建築・不動産業界で培った実績・経験を活かして、主に住宅購入者や所有者に役立つノウハウ記事を執筆。